第十二話 忘却の洞穴
「ふんふーんふんふんふーん♪」
「…なんでそんな機嫌いいんだ…」
俺とティナは今、城下町へと向かっている。
前の街の北にあると、ティナが言っていたからだ。
まぁ嘘だったら…と思ってしまうのは根が腐ってるからだろうな。
「いい天気ですね…!」
「天気なんかどうでもいいだろうに…」
「そんなことないですよ!やっぱり晴れてるのが気持ちいいです!」
「…はぁ…」
ティナと一緒にいると疲れるな…
なにせ、九割くらいはティナが話してるしな…
まともに返すと面倒になってきたのもあり、今ではほとんど相づちとかで会話が終わる。
それを不快と思わず、マシンガントークし始めるティナはすげぇよ…
「メイさんは晴れは嫌いなんですか?」
「さぁな」
「私は大好きですよ?」
「はぁ…」
返しが雑だと思われるだろう。
ああ、雑だよ。
言い訳をするとまともに返し始めるとコイツとの会話が終わらん。
だから適当にするんだ。
「ふふ…」
たまに一人で笑い出すし、狂気を感じる…
いや、勝手に俺が怯えてるだけだけどさ。
話は変わるが、魔物との戦いは数回ほど経験した。
ここらへんは俺らでも少し時間を掛ければ倒せるほどの強さだった。
俺が相手の注意を惹き付けつつ、パラライズで行動不能に陥れ、さらにはダウンガードで守備を低くしそこをティナと一緒に叩く。
ま、若干作業になっていなくもないが、危険があるよりはいいだろう。
つかこの世界って案外一般の奴でもレベル上がりにくいのかもな。
ティナに全ての経験値を入れたとしてもここら辺じゃ一匹倒しても100前後だし。
「ほら!見てください!あの雲!小鳥みたい!」
「はーん」
「あっちは…ウルフみたい!」
「ほー」
「あれは、メイさん!」
「…あんなにゴツくはねぇ」
少し太ってるって自覚はあるけどな…
でもこの世界に来てからは痩せた。
うん、主に空腹で。
「私は…」
「じゃあ、あれだな」
指を指した方向にあったのは黒い雲。
あー…雨降るかもなぁ…
「えー…そんなに暗いですか…?」
「泣き虫だからな」
「なっ…泣き虫じゃ…その…ありま…せん…よ…」
「自信無さげに言っても説得力ねぇー」
そんなことを談笑しながら俺らは前へと歩いていった。
すると…
「ひゃっ!?」
「…雨か」
丁度、ティナの背に入ったんだな。
分かりやすい。
ポツポツと雨粒が落ちてきた。
「とりあえず、走るぞ」
「ど、どこに?」
「雨宿り出来る場所にな!」
俺らは…いや、ティナは全力で走る。
俺ははや歩きしていた。
すると、洞窟のようなものをみつけた。
「おい、彼処に行くぞ」
「あ…あそこは…!」
「…知ってるのか?」
「は、はい…似てるだけかもですけど」
「ま、着いてから話すか」
俺らはその洞窟へと向かって走っていった。
「よし、本降りになる前に来れたな」
「うっ…こうなると今日はやまないかもですね」
「…だなぁ…」
ここは…ダンジョンか?
なんかB1とかありそう。
不○議なダンジョン的な感じで。
「やっぱり…ここは…」
「確信が持てたのか?」
「は、はい。ここは忘却の洞穴です。」
忘却の洞穴…
何を忘れるんだ?
「この中に入った者は、記憶を失っていくと言います」
「へー」
「…信用0ですね」
「噂じゃな」
こういう類いは殆どデマなんだよな…
よくあるオカルト話とかがそうだ。
実際やった俺は何も起きなかった。
そこ、暇だなとかは言わないッ!
「奥までいってみましょうか!」
「…まぁ、暗くはないから大丈夫か…」
見れば松明が掛けられてる。
整備されてると見ていいのか?
「じゃ、行きましょう!」
「…テンションたけぇな……」
俺らは忘却の洞穴の奥へと向かうことにした。
「イイノ?イイノ?」
「…!だ、誰!?」
どこからともなく無邪気な子供の声が聞こえた。
それに怯えた様子のティナ。
声だけなんだからビビんなよ…
「ボクとアソんでくれるの?」
「……誰だ、お前」
即座に身構えた。
いきなり現れたのもあるが、見た目が人間でも魔人でもない。
精霊…のような、妖精…のような…
ま、魔物でいいだろう。
ブロンズククリを抜く用意をする。
「イイノ?イイノ?イイノ?」
「うっぜぇ!!」
クソッ!
餓鬼は嫌いだ!
うざってぇ!
「め、メイさん…そんなに怒らなくても…」
「ウザいんだよ…同じ言葉繰り返すし!」
聞こえてるのに同じ言葉のループは腹が立つ。
いや、こんなのに腹立てても仕方ないとは思うが。
「アソんでくれる?」
「あー…うん、私が…お姉さんが遊んであげる」
「勝手にやってろ。俺は却下────」
「ありがと!おニイちゃん!おネエちゃん!」
コイツ…
この餓鬼…
そもそも、何者だ?
場合によっては戦闘、逃走も視野に入れるべきか。
等と考えていると、子供が浮かんだ。
「キオク、ほしい。キオク、ほしい!」
「な、何……?」
「…っく!?あの…歌声みたいなものか…!?」
いきなり、頭の中が何かに侵食され、真っ白になっていく。
これは、眠るというよりむしろ…
「うっぐ…」
ティナは一足早く、倒れ、俺もついで倒れてしまった…
気がつくと、俺は見知らぬ所にいた…
苔が蒸してる…洞窟…か?
不思議だ…こんなところ日本にあったなんて…
それに、松明とか雰囲気ヤバイな。
「中間終わって寝て起きたらこれか?」
面倒くさいテストが終わって今日はずっと寝てようと思ってたんだが…
「なんか不思議な所…」
と、倒れている女性に気づいた。
美人…とそれに、悪魔のような尻尾が生えてるようにみえる。
銀髪のロング?というのかな?
明らかに日本の人じゃ…
いや、コスプレ?
…こんな田舎にそれはないか。
とりあえず、起こしてあげよう。
「あの、大丈夫?」
「…ん…ぅ…」
そんな声にドキッとした。
出来れば友達になりたいな…
そんな下心もあった。
「ここ…は…」
「気づいた?ここは、俺にも分からない」
正直に言った。
もしかしたらこの女性なら知ってるかも…
「じっくり見て、ここが何処か分からない?」
「…ぁ…!」
女性が俺を見ると何やら青ざめている。
…そんなに怖い顔してるか?
「にん…げん…!」
「君もだろ?」
不思議だ…
自分も人間なのに、なんでそんなことを言うのだろう。
「い…いや…!来ないで…!」
「…随分、嫌われてるんだな…俺」
「人間ッ!消えてッ!」
頭をかかえ、体育座りする女性…
なんなんだ?
美人なのにこれは酷い。
「…いや、消えてっていってもな」
「ッ~!」
なんでそんなに震えてるんだろう。
そんなに怖い?
「アソぼ!アソぼ!」
「な、なんだ!?あいつ!?」
俺は女の方から目を離し、上に…
浮かんでいる子供…か?
ソイツに目を向けた。
「キオク、カエしてほしいなら、ツカまえてよー!」
子供は、ふわふわと漂いながら、洞窟の奥へ…だろうか。
行ってしまった…
「…まず、ここは異世界だな…!燃えてきた…!」
よっしゃ!
これでチートなら問題ねぇ!
あと、女の子との縁もあれば完璧だな!
「けどなぁ…」
「ひっ…!」
そこの女の子が、こんな怯えるのは…
いやはや…
なんとも…
「それに、あの精霊みたいなのが言ってたのも気になるな」
キオク…記憶…
カエして…返して…
つまり…
「記憶がなくなってる…のか?」
思えば体が大きくなってるような…
視点が高くなったというか…
ううーん?
「…てことはあの子と一緒にいたのかな?」
あってそー…
「まっ…とりあえずは話をしないとな」
俺は女の子が落ち着くまで、待っていた…




