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第十一話 仲間

アイツのHPがこんなに少ないハズがない!

そんだけHPが減ってたら少しは知らせるだろう。

それとも何か?

俺が気づいてなかっただけか!?

くそっ!


セレスティナ・エルローゼ

HP38/79

MP32/32


HPが1減ってる…

なら、今攻撃を受けてるってか!?


『私が、危ないときは…守ってくれますか?』


そんな言葉が思い返される。

クソッ!

良心は棄てたっつってんのに!

なんでアイツを助けたがる!

いや、そうじゃねぇだろ俺ッ!

こんな考えしか持てねぇとか屑じゃねぇか!

良心はとか関係ねぇだろ!!


「あんなんでも仲間だ…!俺の…初めての…!」


急いで先程の街へと向かう。


全力疾走していたので約1分未満で着いた。

…のだが、何故か外壁を越える唯一の門が警備されている。

これじゃあ、詰み…

正攻法なら。

俺は門兵に気づかれないように外壁の側へと寄る。

…届いてくれよ…!


俺は跳躍…

外壁を乗り越えた。


「…よし、ここまで来れば後は…見つけるだけだ…」


セレスティナ・エルローゼ

HP35/79

MP32/32


時間はねぇ…急いで捜さねぇと。

そういえばあのクソ野郎…

俺を馬鹿にしたような目で見てきやがった野郎はなんなんだ?

ソイツが分かれば…

兵士…か?

つってもどのみち何処に何があるか分からねぇ…

地道に急いで捜すしかねぇ!

俺は手当たり次第に建物の窓を見始める。


一軒、また一軒と見ていくが、ティナの姿はない。

もしかして外なのか…?

いや、保護されたからその可能性は低い…

保護となれば…どこか…

デカイ家か…?

いや…でもその発想はおかしいか…

宿屋かも…

宿屋ッ!


俺は依然、見たことのある文字がぶら下がっている建物の窓を見た。

全て見たがティナらしき人物はいない。

さらにティナのHPが30を切った。

流石に焦ってきた。

どうすれば…

クソッ!


デカイ家…デカイ家に行ってみよう!!

俺は宿屋の屋根の上に降り立ち、辺りを見渡す。

…ここから結構離れた辺りにある一軒の家…

あれが一番でけぇな…

そしてティナのHPが25になっている。


「間に合えッ!クソッ!」


柄にも無く、他人の心配を…

ティナの心配をする。

自分の中で何かが変わっていたのだろうか…

ただ、今はそんな疑問に目を向けず、目の前の事に集中していた…


「……見張りいんのかよ…」


大きな家の屋根の上に今はいる。

まだ、ここにいるとは限らないが…

ってあの兵士たち…さっき見たヤツ…


「しっかし、町長んとこの息子さんにも困ったもんだよなぁ」

「あー、分かる。今日もあの女を妻にするとか言って張り切って人間を追い出したしな」


盗み聞きする形になったが、情報を得られるなら好都合だ…


「しっかしかわいい女の子だったよなぁ…」

「馬鹿!家の中にいるのに聞かれたらどうする!?」

「聞こえるわけねーよ。どうせ地下に籠ってるんだから。あの女の子と…」


…よし…

分かった…


「麻痺の力…宿れ!パラライズ!」


イメージをすれば左手に流せる事が分かった。

右手はブロンズククリに手をかける。


「よっと、見張りご苦労」

「だっ誰…!か、体が…!」

「おま…!」


不意打ち成功。

ということで、俺は脅しにかかる。


「声出したら…殺す…」


ドスの効いた声で脅しにかかった。

おや?

結構効果があるみたいだ。

一人は麻痺ってるので、言うとおりにするしかないのを分かってる。

もう一人はナイフを首に突きつけられて真っ青になりながらコクコクと頷いてる。


「後、入ってきても殺すからな…ッ!」

「は、はい…!」

「ひぃ…ッ!」


俺は家の中に侵入した。

地下っつってたので、俺は地下の階段を見つけ、潜っていった。


「きゃぁああッ!」


ティナの悲鳴…

何が…


「妻になると…誓えばツノを失わずに済んだのになぁー」

「…あ、貴方の…妻になるくらいなら…ツノくらいッ!」


…しまったな…

もう、取り返しがつかねぇよ。

どう謝るかな…

パラライズを唱えて俺は考えていた。


「仕方ない…じゃあ、次は尻尾だね。考えを直す気は?」

「…あり…ません…!」


…泣き虫のティナがこんなに力強い発言するとはなぁ…


俺は二人がお取り込み中の部屋へと入っていく。

空気も読まず。


「お?お楽しみか?」

「…!?見張りは何をやっているッ!!」

「メイ…さん」


あからさまにイラついてる野郎と驚いたような顔をしているティナ。

ティナは手足を縛られているようで動けないようだ。


「で、沈黙してろ…」

「な…!?体が…」


あ、まずいな…

コイツ…麻痺でも動けてる…

体が痺れるだけだから、こういうヤツも出てくるってか!?


「ふざ…けるなぁッ!」


野郎は銀色の剣を取り出して、俺に振り下ろしてきた。

おっそッ!


「じゃあ、次はこっちだな…」


俺はククリで野郎の腕を斬り込んだ。

…が、カキンッと弾かれた。


「おいおい…防御力突破出来ねぇのかよ…」

「ククク…諦めろ…」

「メイさん!逃げてぇッ!」


助けに来たのに逃げてはないだろ…

まぁ、原因作ったのは俺だし。

罪滅ぼしせなアカンだろ。


「守りを破壊する力…宿れ!ダウンガードッ!」


俺の左手に宿す。

素早く野郎の後ろに回り込み、左手でタッチ。

そして、右腕に斬り込む。


「っく!?」


…おー貫通した。

…のに腕が取れないな…

まぁ?

ティナの残りHPくらいまで減らすけど?


「おらっ!よっ…!ほっ!」

「ちょっ…ちょこまかと!!止まれッ!」

「ノロマなんだよ。お前が。それに、実戦で止まれはないだろう…」


いや、まじで遅い。

剣を振り回す速度。

方向転換。

何をとっても。

ティナよりも遅いだろう。


「装備は良いのにな」


銀の鎧の隙間を斬り込んでいくと、いきなり切り口が出現した。


「ぐぁあああああああッ!!!」

「ひっ…」


ティナが小さな悲鳴を溢したようだが、気にしない。

気にするのはコイツのでけぇ声だ。


「ウザい」


そう言って今度は尻尾を斬りつけると、血を噴き出して尻尾が取れる。


「ぎゃぁあああああッ!!!」

「お前がティナにやろうとしてたことだからな?ついでにツノも…」

「がぁああああああああッ!!!」


うっせぇな…

だが、男は失神したようで口から泡を吐いて白目を向き、倒れた。


「…装備がよくてもてめぇが弱いんだよ…アホ」


そう言って装備を剥いでいく。

使えそうだし。

さて…



「…何しに…来たんですか…?」


ティナに睨み付けられているような気がする。

仕方ない事だとは思うが…やはり心が痛むな。


「…すまなかった…ティナ…」

「…!」


その言葉を選ぶとは思っていなかったのか、大きく目を見開いている。

俺は手足の縄を切り、ティナを自由の身にする。


「もう…どう罪滅ぼししていいか分からねぇな…こりゃあ…」


俺の自己満足で、ティナはこんな目にあった。

魔人の誇りの一つであろう、ツノが切り取られたのだ。


「すまなかった…!本当に…」


ティナに、土下座する。

本当に、本当に申し訳ない事をした。

ティナからもらった恩を全て、仇で返してしまった。

コイツは、俺を信頼してくれていたのに…


「許してくれとは言わない…もう許されない事を散々したんだ、ティナに…」

「違う…違うッ!」


俺の言葉を遮るようにしてティナが叫んだ。


「そんな言葉は、いらないのッ!私は…メイさんが…私の為に…してくれてたのは…分かったから…」

「…ティナ……」

「でもね。こんなことになったのは…メイさんのせいじゃない…だから、謝らないで…むしろ…私のことを心配してほしかった…」


…そうか…

こんなときでも俺は自己中に…

自己満足に浸ってたんだな…

許しを請う。

それが、一番楽になる方法だったから。


「大丈夫かって…その一言が…ほしかった…助けにきた…って…その…言葉…が…ッ!」


ティナの目からぽたぽたと涙が垂れている。

俺も目が潤んでしまう。


「でも…もう…いいんです…言葉にしなくても…何も言わなくても良かったんです。だって、態度にしてくれたじゃないですか…」

「…でもツノが…」

「ツノなんて…メイさんと一緒になったと思えばなんとも思いませんよ…!」


ズキッと胸が痛む。

そんなことないだろうに…

もう少し早く…

初めからあんなことしなければ…

今回の事を…

反省する………

涙が…溢れ出てきてしまった…


「…メイさん…」

「…泣いて…ねぇかんな!おらッ!行くぞッ!」

「…へっ?」

「どうせ来るんだろッ!行くぞッ!」

「…グスッ……ふふ…はい……!」


俺らは地下から脱出し、街を出た。



「…メイさん。本当に、いいんですか…!?」

「嫌なら、残っても良いぞ?」

「いえ!嬉しいですよ!」

「…そうか…なら安心した」


俺はセレスティナ・エルローゼを正式に仲間として迎え入れた。

こんな、人間不振野郎を最後まで信じてくれていた。

ツノを失ってさえも、俺を許し、更には本当に大切な事を教えてくれた。

…理不尽な異世界召喚。

理不尽な状況で唯一、信頼出来る仲間。

コイツとなら…

コイツと一緒なら…

異世界ライフはとても楽しいものになると信じている。

…柄にも無くなっちまったな。

ま、いいんだ。

今は…


「行きましょう!メイさん!」

「ああ、ティナ。頼りにしてる」


真っ暗な中から始まった異世界生活。

ただ、今日だけは月明かりが輝いていた。

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