1人目は涼子さん♪
赤い荒涼とした大地。
見渡す限りごつごつとした何もない荒れた土地。
歩けども歩けども果ては見えず、ただ日がな一日ずっと足をうごかしているだけ。
確かにこれはさすがのあたしもちょっとつらいかも。。。。
ぼんやりとそんことを思いだしたのは歩き始めて7回目の日が昇る頃。
ちょっと便利なのは飲まず食わずでもあまり苦もなく歩けるってとこかな?
お腹は。。。ちょっとすいたかな?
でも、生きてた頃のように食べないで居ると眼が回るような空腹感におそわれることはない。
ので、歩き続けられるっぽい。
よかったw 歩くだけの罰で。飢餓地獄とかだったら食べずには飲まずにはいられないんだろうなぁ。
と、遠くにむらがる元人のような餓鬼の群れをぼんやり眺めていた。
ここは時々人だか餓鬼だかが群がる場所がぼつんぽつんと現れる。、
まさに地獄図 サラいっぱいの食べ物に群がる餓鬼。
奪い合い、人を踏みつけてなお人にふまれてもみくちゃになりながらも手を伸ばす。
おぞましい地獄絵が目の前に広がっている。
みてて気分が悪くなる。
あの一員にならずにすんだことだけでもあたしってらっきー
歩くのはへっちゃら、そうして7回目のまっかでおっきなお日様のお出ましを拝み、前方へ眼をやるとどこかでみたことのある女の人の姿が。。。。
「あの~」
ちょっとためらったけど、声をかけてみた
不思議そうにこちらを振り返った女の人はやはりあたしの前にだんなと隆君に導かれて行ったあの人。
返事もなく歩き出そうとしたので、もう一度声をかけてみた
「あの~ その蝶、だんなさんとお子さんですか? 隆君」
ぴくんと肩が震えて大粒の涙
「あ、あの~ えっと。。。。」
うろたえてしまった、あたしは生まれてこの方大人の女の人がなくという場面に遭遇したことはないので、
あまりにもいきなりなかれてしまったことに驚いておびえてしまった(不覚。。。)
「なかないでください。二人もいてよかったじゃないですか。あたしは誰も名を呼んでくれる人がいなかったので、これからもずっとここをあるきつづけないといけないんです。
あなたは2人もいてうらやましいです。」
「うらやましい?」
不思議そうにみつめられて、なおもうろたえてしまった。
うらやましいわよ、あたしなんてあんな男しかいなくて、誰も悲しんでくれる人もいなくて。。。。
あーやだやだ、こんなとこまできて人をうらやむことしかできないなんて
しんだら人ってもっと平等だと思ってた。あまかったな
こんなとこまで格差があるなんて。
もともと両親も保証人もいないあたしにはどこへ行っても何をやっても生きにくい世の中ではあったけど、
こんなとにきてまで死ににくい世の中。。。。ってなんか変だね^^;
「これは私の罪、罪と一緒に私は行くの」
誰につぶやくともなくつぶやいて、その人は2匹の蝶と一緒に歩いていってしまった。
「罪かぁ、あの人にとってはなにかつらいことだったのかな?」
数歩歩いて、何かにつまづいたようにしゃがみこんでしまったその人にかけよると手を貸す。
「大丈夫ですか?」
「私は大丈夫だけど、蝶が、隆が、隆が。。。。」
地面からすくいとった蝶はこけかけたこの人をかばったのか、無残にもぼろぼろ。
「お母さん、お母さん。」
小さな声が聞こえた。
「隆、隆」
「なんで死んじゃったの?」
「お母さんは自由になりたかったんだよ」
優しげな男の人の声。
「あなた」
「お母さんはきっと幸せにしてるよ。お前は強く生きないといけないよ。お母さんに心配させないようにな。」
「あなた、ごめんなさい、あなた。」
なぜかあやまるその人を抱き締めた。
なんだかそうせずにはいられなかった。
あたしには子供も居ないし、愛する人もいない、母性なんてまったくわかんないけど、方を震わせて泣くこの人をなんだかほおってはおけなkった。
「大丈夫、大丈夫です。ここにきたら罰はあたえられるけど、それはすべて許されるための罰なんだから、もうあなたが誤ることはないんですよ。」
何の根拠もなくそういっていた。
「分かれるつもりだったの、あの子は隆は主人の子じゃないから」
な、なんと、衝撃的告白!だんなどころか恋人にも裏切られちゃうあたしにはまったく縁のない話で。。。
とっても良いお母さんっぽいこの人の告白、、、頭がついていきません。
「段さんを裏切っちゃったってことですか?」
「そう、軽い気持ちだったの、昔の恋人に会って、浮かれちゃったのね。今も愛してるなんて言われて。結婚してから、私は恋人ではなくなって、奥さんであるうちはよかったんだけど、何年も一緒に暮らしてると奥さんでさえなくて、お母さんか空気みたいになって、ときめきも喜びもなくなって。。。。彼といれば私は女でいられたの、おしゃれして、着飾って、腕組んで歩いて、どきどきして、で、うかれ気分のまま」
泣き続ける女の人の肩をぐっと抱き締めた。
「つらいなら話さなくてもいいんですよ。」
あたしは別に状況を聞きたいわけじゃないから
「ううん、聞いてほしいの。これは懺悔なの。」
「あたしに懺悔しても贖罪にはなりませんよ?」
「あきらめて聞いて頂戴。誰かに話したいだけなの。」
そういわれるときかずばなるまいと覚悟をきめた。
今日はお散歩中止だなぁ
すでに高く上ったお日様をみあげて目の前の人に向き直る
「でも、どきどきしてたのしかったんですよね? 後悔してるんですか?」
「してないわ。その人と会って、結局私は主人を愛してることにちゃんと気づいて」
「気づいたのに、子供つくっちゃったんですか?」
「うつむいて小さく肩を震わせるその人の頭をぎゅっと抱き締めた。
「ごめんなさい。」
「あなたがあやまることはないわ。悪いことをしてるって意識はあったんだけど、それ以上に子供がほしかったの。そして主人への背徳感に酔っていたのかもしれない。」
「背徳ねぇ。あたしにはよくわかりませんが、そういうもんなんですか?」
「そういうもんなのよ。」
その人もいまいちわかっててしゃべってるわけじゃないなぁっと思った。
なんだか思いついたことをしゃべってるって感じ
まぁ、いいけど、どうせ歩くしかできないんだから暇つぶしでもなんでもお付き合いしましょ。
「でも、あの人はやさしすぎて。私どうしていいかわからなくなって。」
「まさか、自殺?」
「ううん、私は事故、たまたまだったんだけど、少しはほっとしたかも?」
「ほっとって。。。。でも、残された人たちは?」
「そうね、全部ほうりだして逃げ出してきたって感じね」
少しさみしそうに笑うその人ははかなげだけど、凛と筋の通った強い人にも見えた。
「さっさと成仏して、転生してあの人のとこへかえらないとね。」
「え?転生?」
「そうよ、聞いてない?」
「きいてません!私はこれから先ずっとここをお散歩するようにいわれただけで」
「お散歩?」
「はぃ」あれ?お散歩とちがったっけ?
「そっかぁそれも大変ね」
「ゴールもない終わりもないことをするのは精神的にもダメージ大きそうね」
「冥府へ行って、罪をゆるされると転生できるって聞いたわ、あなたも早く愛する人たちのところへ帰れるといいわね、聞いてくれてありがとう、少し気分も楽になったみたい。次に道案内が必要なときは私、あなたの名をよぶわ、名前教えてくれる?あたしの名前は藤村涼子」:
「あ、はぃ、鹿島美幸といいます」
「美幸ちゃんかぁ 良いお名前ねご両親の愛を感じるわね」
両親の愛かぁ 抱っこしてもらえた記憶もないけど、ちゃんんと自覚したこともなかったけど、もしかしてあたし愛されてうまれてきたのかな?
だとしたらうれしいなぁ
きりっとたちあがるとさっきまで、なきくずれていた弱い姿は微塵もなく、すっくりと立ち上がったその人は太陽を背に眩しいくらいの笑顔で2匹の蝶と歩き出した。
そして、その方向とは反対にあたしもゆっくりと歩き出した。