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次の日、学校から帰ってくると、電話が鳴った。
昨日の人かもしれないと思い、少し気まずい気持ちで受話器を取った。昨日結局陸斗さんは電話を取りにいかず、そのうちきれてしまった。どれだけ深い昼寝だったのだろう。
「はい、もしもし」
「あ! まりちゃんかい? 水島浩太郎だけど」
浩太郎さんか。反射的に背筋が伸びる。彼が怖いというわけではない。しかし生活費を出してもらっている恩人に対して、失礼な態度をとってはいけないという思いからこうなってしまう。
「今度の日曜日だけど、空いてる? いろいろ話したいことがあってね」
話したいこと? 何だろう。疑問に思ったがとりあえず承諾する。
「じゃあ昼の三時ごろそっちに行くから! よろしくね」
相変わらず短い電話で助かる。電話は変に緊張するから嫌だ。
「……と、いうわけです」
夜、電話で決まったことを陸斗さんに伝えた。
興味なさそうに頷くだけかと思っていたのに、なぜか彼は訝しげな顔を向けてきた。
「あの社長やってるオッサン? ……ふーん」
何なんだろう。浩太郎さんに何かあるのだろうか。いや、ただ単に社長が家にくるということが珍しいだけか。
急に鋭さを帯びたように見える陸斗さんの目をしばらく見つめていたが、頭を振ってよそを向い
た。




