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涙の上に  作者: ぬるま湯
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 後少しで浩太郎さんが来る。

 久しぶりに会うから緊張してきた。手をいじりながら玄関で待つ。

  チャイムが鳴る。できるかぎり明るい声で。


「やあ、久しぶり。まりちゃん」


「お久しぶりです。いつもありがとうございます」


  頭を下げるあたしにいいよいいよと言ってくれる。陽気な笑顔と向き合って緊張がほぐれた。


「それにしても、綺麗になったねえ……」


…………。


  一瞬、鳥肌が立ちそうになった。

 今の視線。いや今もその視線で見られてる。とんでもなくいやらしい目つきだ。舐めまわされるような……自意識過剰かもしれないが身の危険を感じ

る。


  はっとして我に返る。いけない!  このままでは。恩人に対しての態度ではない。

 あわてて笑い、そんなことないですよと言う。引きつってないだろうか。

 こんなんじゃだめだ、気を取り直そう。気のせいにちがいない。


  居間に案内し、椅子に腰掛けてもらう。席に着くと浩太郎さんはいきなり話しだした。


「まりちゃんは卒業後、大学に行くのかい? 」


なるほど、そういう話か。


「……はい。費用の面で迷惑をかけますけど……」


  彼の家の財力の凄さがわかっていても、言うのは心苦しいものがあった。何の血のつながりもないのに、あたしは浩太郎からもういくら貰ってるんだろう。


 あたしの心配とは反対に、彼は豪快に笑った。


「いやいや、そのくらい何でもない金額だ! 心配しなくていいよ」


「……ありがとうございます、あの、奨学金申し込みますから。できる限りのことはしたいです」


「そうかそうか、まりちゃんは優秀だからな。ウチの娘に爪の垢を煎じて飲ませてやりたいよ、まったく!!   ……でももし、就職したいというんだったらそれも協力するからね」


  どきりと心臓が跳ねた。就職。早くお金を稼げる。

 急速に気持ちが傾く。協力って?  やっぱりコネ、とか?  そんな手段を使ってはいけない。わかってはいるが、これ以上金を食うならーー。い

や、でもそんなの……


「何ならウチに来ればいい。まりちゃんなら大歓迎だよ!」


 どうしよう。……もう少し話を聞いて見るのも、ありかもしれない。


 そう思ったとき。

 バンッと乱暴な音がして、居間の扉が開け放たれた。びっくりして目を丸くする。扉の方を向くと、そこにはーー


「どういうつもり?」


 酷く怒った表情の、陸斗さんがいた。


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