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涙の上に  作者: ぬるま湯
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 自分の部屋に戻って、机に頬杖をついていた。もう三十分はこの姿勢でいる。開いただけの数学のワークは真っ白だ。


 なんだか前の陸斗さんに戻ったみたいだなあ。


 それはそれで嬉しいはずなのに、なぜかすっきりしない。


 本性を見せた後の彼の方が好きなのか。そう聞かれて迷わずにはいと言える自信はない。でもありのままの、あたしをからかいまくる陸斗さんになってから、彼との距離は縮まったように感じる。

 ああ、やっぱりあたしどっかおかしい。物静かでさりげなく優しい陸斗さんより、にやついた笑みを浮かべてあたしの困り顔を見るのが大好きな陸斗さんのほうが好きなんて。


 新鮮な空気を吸おうと、窓を開けて庭に出た。雑草が脚にまとわりつく。荒れ放題の庭。ぽつんと取り残されたような小さな池が、濁った水に光を反射させていた。




 しばらくして、学校は冬休みに入った。

 サイダー事件のあと、陸斗さんが以前のような穏やかな彼に戻ったように思われたのはほんの一瞬だった。すぐに、もう慣れきった本性のほうの彼に戻ってしまった。ちょっとほっとしたことについては考えないことにする。

 冬休みと言っても、あたしにとっては特に変わらない日常。土日が延長されただけだ。山積みの宿題を片付けていく。少しずつ低くなっていく山を見るのは結構楽しかった。

 そんな慎ましやかなあたしの冬休み。街がカップルで溢れるクリスマスも、何もなく過ぎた。陸斗さんもいつも通りだったのを見ると彼女はいないのだろう。またほっとした自分を無視する。


 一年もあとわずかになり、残された行事は、


「誕生日かぁ……」


 自分の誕生日だけになった。





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