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あれから三週間が経った。
放火犯については何ともない。ボヤ騒ぎで済んだようだし、次の放火もおきていない。怪しい人物なども見ていない。
そんな風にあの日のことを忘れかけてきたころの日曜日、陸斗さんが友人を連れてきた。
「おじゃましまーす!」
大きな声で言ったのは、細い目と大柄な体が特徴的な青年。いかにも陽気でいい人そうだ。
「合気道でいっしょの奴」
「あ、まりさんですか? いやいきなり来てスイマセン」
「はあ」
一人増えるだけでこんなに賑やかになるんだ……。いつもの静かさと比べるとかなりの差だ。……いや違った、正しくは「いつも」の静かさではなくて、「この間まで」の静かさだ。
その人は陸斗さんに借りるものがあっただけらしく、十分くらいで帰った。




