表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
涙の上に  作者: ぬるま湯
11/34

11

「……悪かった。ごめん」


「な、なんで?」


 わけがわからない。だってこの人はさっきまで、誰だか知らないけど明らかに自分との間に何かがあった女の人が泣いているのにただ迷惑そうな態度をとっていたのだ。

 その人が、こんなに慌てる?

 栗色のくせ毛をわしゃわしゃかき回しながら困ったように謝る彼を見つめることしかできない。

 一呼吸おいて、陸斗さんが口を開いた。いつものだるそうな表情だけれど、目に何か真剣なものがあった。


「泣かせないって決めてたから」


 頭の上で飛行機が通る音がする。一つ向こうの道を車が去った。騒がしい音の中、その声だけが染み渡るように聴こえた。


 呆然と立ち尽くすあたしに、低くて優しい声がまた降ってくる。

 今度はもっと信じられなかった。

 見たこともない表情。ニヤッと薄く笑った氷のように冷たい、でもとびきり色気のある顔で言った。


「でも、いいな。泣き顔もかわいい……泣かせてみるのもアリだな」


へ?


ちょっ……、い、いやいやいやうそでしょ!?

何言ってんのー!!??


 膝の力が抜けてぺたんと地面に座ってしまった。


 うそだーーこんなの、夢だよ。こんなことありえないし。何なのこの状況!?

 それに、陸斗さんはこんな人じゃない。何かの冗談だ。

 こんなの陸斗さんじゃない。陸斗さんはもっと物静かで穏やかで、時々優しい素敵な人なのに。


 こっちが、本性、なの…?








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ