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5

 「ここは…」


 瞼がゆっくりと開く。


 「さむっ…」


 冷たい水を全身に感じ、ハッと目を覚ます。


 (…っ!あいつは…!?)


 思い出すと同時にものすごいスピードで周囲を見渡す。


 (いない…)


 さっきまで目の前にいたはずの化け物の姿はどこにもなく、突き破られたお風呂場のドアの破片が水とともに散らばっていた。


 洗面所にも化け物の姿はなく、俺はただ呆然と座り込んでいた。


 どのくらいボーッとしていたかわからない。


 俺は、ふと我にかった。


 俺は恐怖で震える足で全身を支えながら、ゆっくりと立ち上がった。


 その足でお風呂場を出ようとする。


 「あ、水…」


 俺は振り返って、シャワーから出る水を止め、再び振り返って洗面所のドアに向かう。


 ドアノブに手をかける。


 そして回す。


 ドアをほんの少し引き、隙間からリビングを覗き込む。


 そこには何の気配もなく、窓から月光が床を明るく照らしているだけだった。


 そこで俺の頭に違和感が入り込んでくる。


 (ん…?月明かり…?)


 そう俺はさっき起きたばっかりのはず。


 そんなに長い時間気絶していたのかと焦り、ベッドにあるスマホを取りに歩く。


 月明かりに照らされた床から1メートルほど手前、俺の目に窓の外の光景が飛び込んできた。


 同時に俺の頭の中には『死』の一文字が浮かんでいた。


 「う、うそ、だろ…」


 俺の目に映っていた景色には、もともとあったはずの街は跡形もなく消え去り、何もない平坦な地面が地平線まで続いていた。


 そして、地平線まで続く地面には無数の影。


 化け物。


 姿、形が違えども、謎の靄を纏い、目に狂気を宿している姿は、アイツと同じ存在だという事実を俺の頭にねじ込んでくる。


 もうスマホで時間を確認しようとしていたことなど、思い出せるはずもなく、リビングにはただ立ち尽くす俺がいた。


 しかし、今度の俺の呆然とした時間は長くは続かず、驚きと恐怖を打ち砕くように玄関のドアが勢いよく叩かれた。


 —ドン!、ドン!


 一瞬の驚きに身体が包まれた。


 が、俺の足は無意識に玄関に向かっていた。


 何が俺の足を動かしていたのか。好奇心か、なにかへの期待か。


 そしてその足はドアの前で止まった。


 と同時にドアを叩く音も止まった。


 俺はドアのスコープから外を見た。


 そこには案の定化け物。


 スコープから覗き返す化け物の視線が俺の視線とぶつかる。


 「うぁぁ!」


 —ドン!ドンッ!


 俺の叫び声に対抗するようにドアの音がなる。


 俺の足に先ほどまであった無意識な活力は消え去り、俺は地面を這いながら後退した。


 そんな俺の耳に聞き慣れない音が入り込んできた。


 —スパッスパッ


 その瞬間ドアを叩く音が止んだ。


 やっと止んだ、そう思ったのも束の間、またドアを叩く音がなった。


 しかし、今度の音は狂気を帯びた音ではなく、規則的なただのノックだった。

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