きっとまた会える
「いい?今度こそ、魔王城へ攻め入って、魔王を倒すのよ」
エリーレッド公がいなくなり、アデルが私たちの参謀みたいになった。
魔王城へ近づくにつれ、荒涼とした地獄のような大地が続いた。地には草一本生えず、黒染みて炭化したみたいになってひび割れていた。空は灰色で、信じられない速さで雲が動いていた。
大量の魔物がいた危険な岩間の道は、魔物の壁を抜けてしまうと魔物は少なく、それほど危険な魔物にはぶちあたらなかった。
岩と岩の間に隠れて、小さな塊となって、私たちは魔王城へ近づいていった。
「では、突入する。みんな、行くわよ」
「ああ、今度こそ、魔王を倒そう」
ルーは決死の覚悟で、魔王城へ臨む。
アデルとガタックがルーを援護しながら、ルーを魔王城へ入れる。一度侵入を許した魔王城は、無数のアンデッド、ヒドラ、ゴーレムたちがどんどん集まって来た。
アデルが結界魔法で、ガタックが聖獣で、敵を吹き飛ばし、魔王がいる城の中枢への道を切り開いていく。
私は勇者に連れられて、再び魔王城の奥深くへ侵入した。
私は勇者に投げられて、魔王を瀕死状態にする。その手はずだった。
でも、勇者は私を掴んだまま、投げなかった。
ばか、ばか、勇者ルー。
私のことなんて、守って。
「ルー離して、投げて、私を」
「駄目だ」
「ルー、聞いて。私、自爆するから。魔王をちゃんと爆破して、気絶させる。その隙に、封魔魔法で魔王を封じるの。私、ちゃんと自爆するから、ルーも、魔王をちゃんと倒して」
「分かってる。魔王は倒す」
自信のない勇者の顔を見て、最後まで迷いや動揺が心を占めているのだと分かった。
私がルーをちゃんと指導しなきゃって思った。
「ルー、最後に言いたいことがある。私、全部、巾着の魔法を使ったと言ったけど、あれは嘘よ。一列だけ、魔呪文の列を残しておいたの。私、残りの文字全部で、願いをかけてみようと思う。この地上の人々がすべて助かるように」
「そんなことが?」
「試してみる。だから、私を信じて、私を投げて」
「信じていいか、マリース」
「ええ」
私は言い切った。
これが私のはったり人生、嘘の上塗り女の、末路。
本当のことは何ひとつ言えてない。
本当のことは何ひとつ言ってないから、言いたくても言う資格はないわ。
でも、これが腰巾着の、勇者への最後の指示。
この助言だけは、嘘ではない。
「でも、君を投げたら、君が犠牲になる」
「いいのよ。誰もかれもが、犠牲になったの。私だけ助かるなんて思わない。運が良ければ、また会えるかも」
自爆だって、いいことよ。巾着が滅んだら、私の魂は解放されるのだから。もう、ルーとは会えなくても、少なくとも天国へは行ける。
「マリース、今、分かった。君は、こうやって俺らを導き、助けるため、君が遣わされたんだね」
本当はひいばあちゃんの何気なく言ったひとことが原因だけどね。
まあ、それも運命と言えば運命ね。
「君だから、ここまで来れた」
「そう言ってくれると、嬉しいわ」
「マリース、ここが終わったら、また再会しよう」
「ええ、そうね。きっとね」




