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「仕方ない。戻るしかないよ」


 アデルと勇者ルーが話合い、来た道を戻ることにした。


「どこかに倒れているかもしれない。どこから見えなくなった?」


「分からないわ。召喚魔法がうまくいかないって言っていたのは聞いたけど、うまく聖獣を召喚して、アンデットと戦っているのは見たわ」


 召喚士がいなくなったら、戦力が半減する。ガダックがいなくなったと知った時、私達のショックが大きかった。


 鬱蒼とした森が奇岩とともに生える岩場は、いつまだ魔物やアンデットが出て来てもおかしくない不穏な空気に満ちていた。


「ここだよ、アデル」


 聞き慣れた声が聞こえて、アデルと私たちは振り返った。


 ふらふらとしながら歩いて来た若い男は、金色の髪、緑の目をして、器用そうな男性。あのガタックだった。


「ガタック、あんた、大丈夫?」


「ああ、体が痛むけど」


「こちらへ来て、見てあげる」


 でも、ガタックは立ったまま、来ない。


 空を見上げて、がくがくしている。


「ガタック、どうしたの?」


「ふふふははは、この男を戻してもらいたかったら、その巾着をよこせ」 


 ガタックの声だが、中はガタックではない。


 よく見たら、背後にアンデッドがいて、ガタックの首に手を巻き、胴体を羽交い絞めしている。


 アンデッドの中でも知的で、鋼鉄みたいに肌が硬くて、全身真っ黒、赤い目をした、あの魔参謀だ。


「巾着?」


 ルーは私に手を当てて、守ろうとした。


 さすが、頭の良い魔物だ。困難経路を突破したのは、私の力だと見て取っている。


「いいじゃない、その巾着、あげてしまいなさいよ」


 アデルだけは、あいかわらず、シビアでど厚かましい。


「マリースは人間だぞ。引き渡せはしない」


「でも、巾着になったのよ。エリーレッドが贄と言っていたけど、贄て生贄でしょ?この子、魂を吸い取られたのよ。もう、人間ではないわ。魂取られた巾着なの。もう、きっと巾着と同化しているわ。巾着か世界を守る一行かと言ったら、分かるでしょ?世界が滅びるってときに、巾着一つ、心配してどうするの。ガダックを取り戻し、魔王城へ行かねば。そんな巾着、アンデッドにくれてやりなさいよ」


「悪用されたら、困る」


「それなら中身を全部、捨ててから渡せばいい。悪用も、この子なら、プライドあるから、魔王になどさせないでしょ」


「物のように言うな。人だぞ」


「もう人だったのは昔のこと、今はただの巾着なの。あなたと仲間と、この巾着、どちらが大切なの?」

 ルーが嫌がるのをアデルは奪った。


「やめろ、アデル」


 アデルは、私を魔参謀へ投げた。


 魔参謀が私に手を伸ばした瞬間、アデルはガタックを結界で包み込み、同時に、魔参謀に体当たりした。


 魔参謀は見事吹き飛んだけれど、私をしっかりと奪っていた。


「ふふふ、まあ、今日のところは、これで勘弁してやる。だが、次に会った時は、お前たち、必ず始末してくれる」


 そう言って、魔参謀は、私を持って、闇へ消えた。

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