中編
金持ち学園と呼ばれる羽生学園でも最も広く、重要な会議にのみ使用される第五会議室。
そこでは、今この学園で一番注目されている議題について話し合いが行われていた。
出席者は生徒会役員、各委員会の委員長・副委員長、隊長を筆頭にした親衛隊幹部。そして、被害者である蘭花とその友人達。
「話し合う必要もないだろう。蘭花に制裁を加えた親衛隊は解散、隊長達は責任を取って退学……それで決まりだ」
「温くねえ? 何なら、俺が全員ボコってやるけど?」
憎々しげに自分の親衛隊の隊長・桔梗を睨みつける副会長の言葉に、羽生学園きっての不良・著塚が不満そうに鼻を鳴らす。鋭い眼光は真っ直ぐに撫菜達親衛隊を射ぬいていた。
「著塚、その発言には風紀委員長として黙っていられないのだが」
「……チッ」
著塚の不穏な発言に一瞬ざわめいた会議室の中も、風紀委員長である萩尾の言葉で静けさを取り戻す。
「ははっ、著塚も制裁を見過ごしてる風紀委員長には言われたくないと思うよ」
「そうだね。被害者の友人より、加害者を罰して欲しいよ」
浅見が爽やかに毒吐けば、幼馴染という立場から蘭花の隣を陣取った唐沢が同意した。
彼らの親衛隊は非公認のため、この場には呼ばれていない。もし呼ばれていたら、碌に統率されていない両親衛隊の隊員が蘭花を睨みでもして、現状が悪化したことだろう。
「だいたい、親衛隊なんてものがあるから……」
コンッという軽く机を叩く音。決して大きくはないその音が、浅見の言葉を遮った。
会議室に集まった全員が、一斉に音の方に顔を向ける。
「会議中だ。私語は慎め」
(…………迅様)
撫菜はこっそり微笑んだ。
興味なさ気にしていても、話はしっかり聞いているし、いざとなったら止めてくれる人なのだ。
「それとも退室するか? 浅見と唐沢、著塚はこの件に関係ないだろう。出て行ってもらっても一向に構わないが」
生徒会会長・丁嵐迅。
撫菜が隊長を務める会長親衛隊の親衛対象であり、生徒会役員で唯一蘭花に落ちていないと言われている生徒だ。実際、事あるごとに彼に近付く蘭花に対してかなり素っ気ない。……元々、あまり愛想の良い人ではないのだが。
「迅様、発言をお許しくださいますか?」
そう言って手を挙げた撫菜に視線が集まった。
副会長達の視線は難なく受け止められても、尊敬する相手から視線を向けられるとドキリとしてしまう。
(……迅様が、私を見てる)
単純かもしれなくとも、それだけで励まされているような気持ちになった。
「ああ」
短く許可を出した丁嵐に頭を下げ、席から立ち上がった撫菜は顔を上げてしっかりと周りを見渡した。
敵意、心配、興味……立場や関係によって人それぞれの視線を受け止め、言葉を紡ぐ。
「まず初めに申し上げておきますが、親衛隊は今回の件に関与しておりません」
「ハッ、今さら何を言うかと思ったら…………誰も手前らの言い訳なんざ聞かねえよ」
「そうそう。ここまで来て、それはないでしょ」
「黙れ。今、俺が発言を許可しているのは田端だけだ」
著塚と会計を黙らせ、丁嵐は撫菜に目で続きを促した。
“ありがとうございます”と深めに頭を下げてから、一拍おいて話を続ける。
「言葉だけでは信じて頂けないようでしたので、親衛隊が関与していない証拠を提出します。……風紀委員長様、よろしいでしょうか?」
「分かった」
頷きを返した風紀委員長は後ろに控えていた風紀委員に指示を出し、証拠品を机に並べさせた。その後も風紀委員は会議室に備え付けられたスクリーンを準備したり、プロジェクターを用意している。
「これが、風紀委員会が親衛隊から預かってる証拠だ」
まだ動いている風紀委員を尻目に、風紀委員長は証拠を示した。撫菜が掻き集め、数日前に引き渡したものだ。
撫菜はその一つを手に取り、説明を加えていく。
「親衛隊に掛けられている容疑は、羽生さんの教科書を破損させたこと、彼女の机の落書き、下駄箱のゴミと上履きを捨てたこと……でしたね?」
「………………」
反対側の席に並んだ副会長達の顔を順に見つめた。彼らは憮然とした表情をしつつも、とりあえず頷く。
「報告と相違ない。……続けろ」
最後に、丁嵐に視線を向けて確認を取った。
「はい。……これは羽生さんの教科書です。酷く破られていますが、これには羽生さんの指紋しか付いていません」
撫菜が透明の袋に入れられた教科書を掲げると、会議室の隅に控えていた会長親衛隊の隊員が出席者全員に指紋鑑定の結果を配る。
指紋鑑定は書記親衛隊隊長のツテで行ったもので、誰でも知っている研究所の名が明記されているため信憑性は高い。
結果が書かれた紙を見た途端、ガタリと音を立てて蘭花が立ち上がった。
「こんなの…………こんなの嘘よ!」
「嘘、とは?」
ややヒステリック気味に声を上げた蘭花に首を傾げて見せる。
「……っ、手袋 ! そう、手袋でもして破ったんだわ!!」
「そう反論される可能性もあると思い、より決定的な証拠を用意しました」
「…………なっ!?」
明らかに顔を青くした蘭花に、どうしたのかと彼女の取り巻きが心配そうな顔を向けた。
そんな彼女達を一顧だにせず、撫菜は目が合ったを隊員に頷きを返す。それだけで撫菜の指示を察した彼女達は素早い動きでスクリーンにある映像を映した。
「どうぞ、ご覧ください。まずは中庭が見える場所に設置された監視カメラの映像です」
撫菜の言葉と共に、映像を見やすくするため照明が落とされる。
「これは……」
「えっ……蘭花、ちゃん?」
「嘘だろ……」
「まさか蘭花がこんなこと……」
口々に呆然としたような声が上がった。
大型のスクリーンに映し出されているのは、自分で教科書を破りそれを中庭にばらまく蘭花の姿だ。時折フレームから姿が見えなくなるが、それが逆にこの映像が真実であることを裏付けている。
『……きゃああぁぁ!!』
画面の中の蘭花が唐突に上げた悲鳴に聞き覚えがあった数人がピクリと反応した。
彼らの心境など知らぬと言うように、無情にもスクリーンはつい一週間ほど前の一幕を映し出す。
『どうした、蘭花!?』
『麗先輩に雪延くん! その、親衛隊の人達がいきなり……っ』
『何っ!?』
『これは……酷いね。親衛隊の子達はどうしたの?』
『私を見たら、走って逃げちゃて……』
「さて、羽生さんはこう言ったようですが……どこに親衛隊がいたんでしょう?」
映像を一時停止し、真っ青になりながらも撫菜を睨む蘭花に尋ねた。
「そ、それは……っ」
蘭花は焦ったように周りを見回すが、誰も助け舟を出さない。彼女の頼みの綱である副会長達はまだ混乱の渦中にあるようだ。
ざわめく会議室に響く声に耳を傾ければ、全員が映像を正しく理解したことが分かる。……自作自演、その言葉が最も多く囁かれていた。
「ほう」
丁嵐の声に、撫菜は咄嗟に彼の方を見る。目が合うと、愉快げに目を細められた。
(ううっ、迅様には初めから言っとけば良かった。ちょっと大げさだった……かな?)
自分で考えて実行した演出とはいえ、丁嵐に見られていると思うと顔から火が出そうだ。仲間との話し合いで多少派手にした方が良いという結論に達したのだが、影で動いた仲間達と違い、表立って動かなければならない撫菜はかなり恥ずかしい。正直、撫菜だけ理不尽な辱めを受けている気分だ。
「では、次に下駄箱の周囲に設置されていた監視カメラの映像をご覧ください」
照明を落とした薄暗い室内では分からないだろうと思いつつも、隠すように赤みの引かない頬を押さえながらそう言った。……声だけは、平静を保てて良かったと思う。
一時停止された画面がパッと切り替わった。副会長達が食い入るように見ているスクリーンには、今は見慣れたこの学園の下駄箱付近が映し出されている。
(……監視カメラはこれで終わり)
残念ながら、不審者対策として設置されている監視カメラもさすがに教室にはなかった。とりあえず、映像の証拠はこれで打ち止めだ。
とはいえ、他に証拠がない訳ではないので、これでも納得できないようならまだ用意はあるのだが……副会長達の表情を見る限りは必要ないだろう。……いくら恋に、友愛に盲目になっている目でも事実は見えるはずだ。
「もうっ、止めて!!」
「はい」
「止めてって言ってるでしょ!!!」
「はい、分かりました」
もう十分効果はあった。
返事が聞こえていないのか、未だヒステリックに叫ぶ蘭花に辟易しつつ映像を止める。隊員と風紀委員が片付け始める様子を見届けて、会議室の面々に向き直った。
「親衛隊の無実を、信じて頂けましたか?」
「………………」
「………………」
撫菜の問い掛けに、誰も何も答えない。
その沈黙を顔を覆って泣き出していた蘭花が破る。
「そうよ、叔父様がいるわ!」
椅子を蹴倒すようにして立ち上がった蘭花はそう叫んだ。キンキンと甲高い声が会議室に響き渡る。
撫菜が耳を塞ぎたい衝動を抑えて丁嵐の方を見ると、彼はかなり嫌そうに顔を顰めていた。……彼を不快にさせる存在には、早くご退場願いたいところだ。
「私をバカにしてっ! 叔父様に頼んで、アンタなんか退学させてやるんだから!!」
(昨日まで“家の権力を振りかざすなんて最低!”って言ってた癖に……)
あまりの変わり身の早さに溜め息を吐きたくなる。
見れば、理事長の姪だからと偉ぶらない蘭花の姿に惚れてたらしい数人が、信じられないものを見たというような驚いた顔で彼女を見上げていた。
……取り巻きだった生徒達が彼女を見る視線に、蘭花は気付いていないのだろうか。
「それは無理です」
「はあ!? たかだか成金の分際で思い上がらないでっ!!」
困った顔を作って否定すると、蘭花が理解できないというように騒ぐ。
確かに、撫菜の実家は金持ちと呼ばれる部類に入るが、この学園の内部生――根っからの良家子女からは成金と蔑まれることが多い。ただ、最近とはいえ、それなりに権力を持った田端に面と向かって喧嘩を売ってくる生徒は少ないが。
羽生学園で最も家柄の良い生徒と言えば、やはり丁嵐だ。そして、多くの生徒は、次に――丁嵐と比べれば数段落ちるが――副会長の名を挙げる。副会長本人ですらそう信じているだろうが、本当の次点は彼女ではない。ただし、それを知っているのは撫菜と数人の友人だけだ。確認したことはないが、もしかしたら丁嵐も知っているかもしれない。
オロオロしながら成り行きを見守っている彼女に目を向ける。
(……“黙ってて”ってお願いされてるし、言う訳にもいかないか)
世界に名立たる大企業の令嬢なのだからもっと胸を張っても良いのにと思わないでもないが、仲が良いとはいえ付き合いの短い撫菜が口出しすることではないだろう。彼女も関わっているとはいえ、今回の件でかなり力を借りたのでそう強くも出られない。……彼女の方は、想い人との行き違いを解消してくれた撫菜に恩を感じているようではあったが。
「蘭花……まさか聞いていないのか?」
叔父の力に頼ろうとする蘭花に、今まで黙っていた書記の石動楠が驚いたように尋ねた。
書記は理事長の外甥で、実家は羽生家の分家筋にあたる。書記親衛隊の隊長と両片思い中の書記までも蘭花の取り巻きになったことを訝しく思っていたが、何でも理事長の命だったらしい。本家の人間に逆らえないのはどこの家も同じだ。
「は? 何のこと? ……もしかして、楠までこの女の味方するんじゃないでしょうね? 本家の人間に逆らって良いと思ってるの!? 叔父様に言い付けるわよ!!」
この学園で言えば、蘭花が本家と呼ぶ羽生家は上から十番目に入るか入らないか程度。この学園を創設したのが羽生で理事長が羽生家の人間なので、学園内のみでなら家柄以上の力を揮える。
……いや、揮えた。
「貴女の叔父ならもう理事長じゃないわよ」
「実家の羽生本家も大変なことになってるみたいだしね」
格下だと思っている書記に喚き散らしていた蘭花に冷ややかな声が掛かった。
よく知る声に撫菜が目を向ければ、その先には蘭花に氷のような視線を向ける桔梗と冬希。座ったまま相手を睥睨する二人と、立ち上がり前のめりになるように両手を机に付ける蘭花では格が違う。三人の様子は蘭花だけがムキになっているようでもあり、桔梗と冬希が彼女を相手にしていないということがヒシヒシと伝わってきた。
蘭花が来るまで学園の双壁……ではなく、“学園の双美姫”と謳われていた二人が並べば、蘭花など霞んでしまう。そして、地味顔の撫菜がそんな二人と並べば存在感が消えてしまう……というのは余談だ。
「なっ!? …………どういう、こと?」
呟くそうに言った蘭花の声は震えている。かなり動揺しているようだ。
また、なぜか、不安に揺れる蘭花の視線は撫菜に向いていた。
(何で私を見るんだろ?)
普通、ここは決定的なことを言った桔梗と冬希に説明を求めるべきだ。
もしや、全ての黒幕が撫菜だとでも思われているのか。……残念ながら、撫菜は友人達に手を借りて仲間達と裏工作に勤しんだだけだ。
一応全て合法の範囲で行ったつもりだが、グレーゾーンに片足を突っ込んだ行為がなかったとは言わない。家の力を借りないとやっていられないのだ。ただの学生にできることなど、たかが知れている。
「簡単に言えば、貴女の叔父は監督不行き届きで理事長職を解かれました。弟に似ず、羽生家当主は優秀な方のようですね」
「っ、そ、そんな……っ!?」
「羽生家本家の話はこの場でするべきではないのかもしれませんが……羽生家が抱える企業がいくつか買収されかかっています。私や書記様に手を出そうとしても、貴女が頼りそうな親類は皆さん、今それどころではないと思いますよ」
「…………な、んで」
「ああ、言い忘れていましたが、羽生さんの同室者が暴行を加えられたと訴え出ています。名前は伏せますが目撃者の証言もありましたし、同室者の方の怪我の診断書も提出されているので、この会議の後、貴女は風紀に引き渡されます」
「…………っ」
言い逃れはできないと感じたのか、もう口をパクパクと動かすだけの蘭花。そんな彼女に信じがたいという視線を向ける者、ゴミを見るような目で見る者、関わりがあるのか顔を蒼褪めさせる者……と会議室面々はそれぞれの反応を見せる。
(予想してたけど、唐沢くんは知ってたみたい。……っていうか、一緒になって何かしてたのかも)
蘭花が暮らしているのはもちろん女子寮だが、彼女の同室者は学園で暴行されたこともあると言っていた。反応を見る限り、それに唐沢が混じっていた可能性は高い。
後で風紀委員長に報告しようかと思ったが、チラリと視線を向けると彼も勘付いたようだったので、その必要はないだろう。
「親衛隊の無実を証明できたことですし、私の発言はこれで終わります」
「そうか。他に、何かある者はいるか?」
発言の終了を告げた撫菜に丁嵐が頷いた。撫菜に対して反論はないのか、誰も手を挙げようとしない。
蘭花の泣き叫ぶ声だけが響く会議室を見渡して、風紀委員長が溜め息を吐きつつ立ち上がる。
「丁嵐。悪いが、羽生を連行しても良いか? もう会議も終わりだろう?」
「別に構わん。唐沢も連れて行け」
「元々そのつもりだ」
丁嵐の許可を得ると、風紀委員長は手際良く他の風紀委員達に指示を出していく。
諦めたように肩を落とした唐沢は二人の風紀委員に付き添われて、扉の外へと消えた。一方、蘭花は連れ出そうとする風紀委員に抵抗し、大声で副会長達に助けを求めている。
「ちょっと、私に触らないでっ!!……麗先輩、雪延くん! 」
「………………」
「楠っ!! ……亮我くん、爽輔くん!!!」
「………………」
救いの声はない。数時間前までなら差し出されたであろう手は、机の下で堅く握りこまれている。
蘭花の声に一瞬だけピクリと身体を震わせたものの、唇を噛み締めて俯いたままの副会長に桔梗が気遣わしげな視線を向けていた。会計は黙ったまま悲しそうな顔で、暴れる蘭花を見つめている。そんな会計に切なげな顔を向ける冬希が、撫菜の視界の端に映った。
誰も助けてくれないことを悟った蘭花は撫菜の方に向き直り、怒りで赤黒く染まった顔で罵り始める。
「平凡顔の癖にっ!! 薄汚い虫やそこらの雑草みたいな存在が私に刃向かって良いと思ってるの!?」
「なっ、アンタねえ……っ!!」
会長親衛隊の副隊長であり、撫菜の親友である百田紅日がいきり立って蘭花に言い返そうとするのを、撫菜は彼女の袖を引いて止めた。
(私に任せて)
心の中でそう告げると、呆れたような眼で返される。“やり過ぎ禁止”と釘を刺された気がした。紅日の反応は、撫菜が蘭花に対してかなり怒りを覚えていることを知っているからだろう。
「羽生さん」
「……な、何よ」
怯んだように一歩下がった蘭花の瞳を真っ直ぐに見つめる。
「貴女にとってはただの雑草なのかもしれないけど――道端のぺんぺん草にだって、プライドはあるの」
誰かが手を叩くとそれがどんどん広がっていく。大きな拍手となったそれに真っ赤になって怒りながら、蘭花は風紀委員に連れられて行った。
笑顔で撫菜に拍手を送る親衛隊の皆に少しだけ照れる。
(……ちょっと、クサかったかな?)
ぺんぺん草はナズナの異名だ。ナズナを漢字で書けば、撫菜の名前と同じ“撫菜”になる。
落ち込んでいたあのとき、自分の名は雑草の名前だと自嘲した撫菜に“ナズナは荒廃した土壌でも育つ強い植物だ”と言ってくれたのは彼だった。それ以来、撫菜は自分の名前を誇りに思っている。
撫菜にとっては忘れられない想い出だが、きっと彼は覚えていないだろう。
「…………っ」
チラリと視線を向けると、たまたま目が合った彼にフッと柔らかい笑みを向けられる。思わず、撫菜の頬が赤く染まった。
周りに聞こえてしまいそうなほど激しく脈打つ胸を押さえ、そっと心の中で呟く。この学園に入れたときから……いや、もっと前、あの日から続く撫菜にとっての誓いの言葉。
(……貴方に全てを捧げます)
ぺんぺん草の花言葉のように、彼に全てを捧げてしまえたら良いのに。
―――彼、丁嵐迅の親衛隊隊長であること。
迅様のために、努力できた。迅様のために、自分を磨いた。……迅様のおかげで、自分に胸を張れるようになった。
他人からすればちっぽけなことかもしれなくとも、それが撫菜の誇りだ。