敵うわけがない先輩
ちょっと話したいし、週末だし、明日遊びに来る?って西宮を誘えば、約二秒で既読が付いてビビる。
前もこんなことがあったなと思って、ずっとスマホ見てるのか?と思ったりしていたら、スマホが震えて。
『行きます』
そう、シンプルな一言だけが返ってきたから少し物足りない。
けれど直ぐに犬がお腹を見せているスタンプが送られてきて吹き出す。
西宮に似合い過ぎると思ったから。
あとは単純に、そのスタンプが可愛かったから。
『楽しみにしてる』
そう返せば、いつものキラキラ笑顔のスタンプが来て、やり取りは終わる。
けれど、その後も暫くトーク画面を眺めていた。
なんて話そうか、どう話そうか、考えながら眺めていた。
「お前……早過ぎ……」
「あ、すみません!あの、楽しみで……」
インターホンで起こされて、時計を見ればまだ朝七時で。
宅配にしても早過ぎねぇかと思いながら、寝惚けた頭で扉を開くとそこに居たのは西宮だった。
「とりあえず入んな……」
今にも二度寝しそうでフラフラする中言えば、西宮はいつも通りのキラキラした笑顔を見せて。
スタンプ以上に可愛いんだよな、西宮の笑顔。
そう思った記憶を最後に、意識が途切れた。
「ん……」
意識が浮上して、伸びをして。
あ?なんか腹が重い……と触れば、ひんやりとして、さらっとしているけれど、その奥に温かさのある何かが巻き付いていて。
これはそう、まるで人の腕のような……
「うわぁああ!!」
「わあ!?」
目を開けると直ぐ傍に顔があって、近いし暗いし誰だか分からず、絶叫すれば聞こえたのは西宮の驚いた声で。
「ばかっ、お前、ばか!!」
ビビり過ぎてちょっと出た涙を拭いながら西宮をべしべし叩けば、ようやく抱き付かれていた腕が離れていく。
「先輩……玄関で寝ちゃったから、俺も一緒にベッドお邪魔してました……昨日楽しみ過ぎて一睡もできてなくて……えへ……」
まだ眠そうな西宮から解説があって、まあそれなら仕方ないか……?と少し離れると、また抱き寄せられるからベッドへ逆戻りする。
「おまっ」
「無防備な先輩……可愛かったです……でも我慢しました」
「はあ?」
「ね、先輩……したい……」
「……するかばかっ!」
西宮の眠さと欲が混ざった声に背筋がぞくぞくする。
するけれど、まずは風呂だ風呂!!と、西宮をべしべし叩いて、再びの解放を求めた。
エアコンを点けていたというのに、汗をかいていたから。
きっと、というか確実に、誰かさんに抱き付かれていたせいで。
「一緒に入ります……」
「入らねぇよ!」
うがー!と暴れるとようやく解放される体。
遮光カーテンのせいで暗い室内でも、ある程度離れたらまだ西宮が眠そうな顔をしているのは見えて。
「お前はもうちょっと寝てろ。昨日寝られてねぇんだろ」
「う、はい……」
「……準備、も、してくる……から」
「えっ!はいっ!!」
「うるせぇ!」
眠そうなくせに飛び起きてくるからその頬を押さえてベッドに倒す。
「良い子で待ってろ」
びし、と指差して言えば、「かっこいい……」と惚けた声がするので笑った。
俺だって早く会いたかったし触れたかった。
でも流石に綺麗な状態で傍に居たいだろ。
ベッドから降りる間際、西宮のくるぶしを撫でると擽ったそうに笑うから、ああ本当、ずっとこうして居られたらいいのになと思った。
「先輩」
「……なに」
「先輩……ふふ……先輩可愛い……」
「酔ってんのか?」
風呂から出ると西宮は穏やかな顔をして寝ていて、そのまま寝かせてやるか迷ったけれど散々キスを降らせて起こして、それから長く、長く触れ合った。
そのせいかずっと眠そうな西宮は俺を腕の中に抱き込んだまま、長めの瞬きを繰り返しながらずっと何か呟いている。
「先輩……好き……先輩……」
「分かったからもう寝ろ」
「先輩……先輩も……」
「はいはい」
俺も西宮の胴に腕を回して、背中を柔く叩いてやる。
すると直ぐに聞こえる寝息に、赤ちゃんより寝付きがいいなと思いながら、気付けば俺も眠りに落ちていた。
「……んっ……ん……」
気持ちいい、ふわふわする。
それから、少しもどかしい。
何だこれ……と思っていたら、だんだんと意識がハッキリとしてきて。
「んっ、ん……?」
明らかに気持ちいい。
それは湯船に浸かった時の気持ちよさとか、晴れた空の下思いきり伸びをした時の気持ちよさとか、腹が満たされて横になる時の気持ちよさとか、そういうのとは全く違っていて。
これはそう、欲が疼く方の。
「ばっっ」
「あ……おはようございます」
「ばか!!」
目を開ければ、腹の辺りで蠢くものが、俺の声に反応してこちらを見て。
蠢くもの、それは西宮で、俺以上に刺激の強い起こし方をしてきやがるから、両腿で締め上げて撃退した。
「ぐえ……ぐるじい……」
「このっ……変態!」
「変態……!?せ、先輩もえっちな起こし方してくれたじゃないですか!」
「うるせぇ!俺を超えてくるんじゃねぇ!」
ぎゃあぎゃあ言い争って、掴み合って、眠気なんてとっくに飛んで、健全に息が乱れていて。
「……気持ちよさそうにしてたのに」
「っは……」
煽るような西宮の声が俺に響いて、力が抜けた隙に手を押さえ込まれて。
寝ながら西宮に高められていた欲を思い出して、目が合うと西宮も熱を携えていて。
「しないぞ」
「あと一回……」
ね、って耳に直接吹き込まれたら、そんなのもう、敵うわけがなかった。
『犬がお腹を見せているスタンプ』は、『ぼくをみて。』のお話にも出てきます。
やってみたかった!セルフクロスオーバーです!




