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継承惑星  作者: 室木 星嶺
第一部 遺された者

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第二十三話 逃亡者達

夜の港湾部。


冷たい雨が降っていた。


コンテナ群の間を、玲司達は走っていた。


背後では銃声とサイレン。


世界中の勢力が一斉に動き始めている。


凛は通信端末を握りながら叫ぶ。


「急いで!」


玲司は息を切らしながら後を追った。


空では黒い亀裂がまだ脈打っている。


まるで世界がこちらを見下ろしているようだった。


その時。


前方のコンテナ影から黒服の武装部隊が現れる。


凛が即座に玲司を庇う。


「伏せて!」


だが銃声は響かなかった。


隊員達は玲司へ銃口を向けられない。


迷っている。


恐れている。


その一瞬の隙。


別方向から爆発。


炎。


武装車両が横転する。


玲司は目を見開いた。


高台の上。


アリシア・レインが立っていた。


長い金髪が夜風に揺れている。


彼女は微笑んだ。


「道を作ったわ」


凛が険しい顔になる。


「余計な事を……!」


アリシアは肩をすくめる。


「感謝してほしいくらいだけど」


その直後。


遠くから大型エンジン音。


コンテナ群の奥から、黒い大型トレーラーが現れた。


ライトを消したまま滑り込んでくる。


凛が小さく息を吐く。


「……来た」


玲司が見る。


運転席には凛側の協力者。


顔は見えない。


だが迷いなく車両を寄せてくる。


荷台後部が開いた。


暗い密閉空間。


凛は玲司の腕を掴む。


「乗って!」


玲司が荷台へ飛び込む。


凛も続く。


だがその瞬間。


アリシアも当然のように乗り込んできた。


凛が即座に拳銃を向ける。


「何のつもり」


アリシアは平然としている。


「ここから先、あなた一人じゃ玲司を守れない」


「降りなさい」


「なら、ここで全員捕まる?」


その言葉に凛が黙る。


周囲では既に複数勢力の部隊が接近していた。


ヘリ音。


サーチライト。


怒号。


しかも玲司の同期反応が不安定になっている。


空間歪曲まで発生していた。


凛一人では限界だった。


アリシアは玲司を見る。


「私はあなたの敵じゃない」


玲司は疲れ切った顔で二人を見る。


凛。


アリシア。


敵同士。


だが今だけは目的が一致していた。


玲司は低く言った。


「……今は協力してくれ」


凛の表情が揺れる。


玲司が自分の意思で判断した。


その事実が大きかった。


アリシアは満足そうに微笑む。


「賢いわね」


凛は数秒沈黙した後、ゆっくり銃を下ろした。


「……妙な真似したら撃つ」


「怖い怖い」


その瞬間。


外から怒号が響いた。


『対象を確認!』


『包囲しろ!』


『神谷玲司への発砲は禁止!』


『対象を刺激するな!』


玲司の表情が止まる。


その声は、まるで爆弾処理班のようだった。


凛が叫ぶ。


「閉めて!」


荷台扉が閉鎖される。


同時にトレーラーが急発進した。


エンジン振動。


暗闇。


狭い密閉空間。


三人だけの逃避行が始まった。


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