第二十一話 歴代継承者
玲司は雪の中に立っていた。
吹雪。
白い世界。
遠くで鐘の音が聞こえる。
自分がどこにいるのか分からない。
だが感覚だけはあった。
これは夢ではない。
“記憶”だ。
前方に、一人の男が立っている。
和服姿。
三十代ほど。
雪に埋もれた小さな村を背にしていた。
男は静かに玲司を見る。
『……また継承されたか』
玲司は息を呑む。
「誰だ」
男は少し寂しそうに笑った。
『お前と同じだ』
吹雪が強くなる。
男の身体は半透明だった。
『俺は江戸後期の継承者だ』
玲司の脳が追いつかない。
男は空を見上げる。
『愛した女も、子供もいた』
『だが誰にも真実は言えなかった』
雪の向こうで、小さな家族の姿が見える。
笑い声。
暖かな灯り。
だが次の瞬間。
景色が崩れた。
地震。
津波。
燃える村。
男は玲司へ振り返る。
『継承者は、“世界を守る鎖”だ』
『だが同時に、“世界最大の孤独”でもある』
玲司は言葉を失う。
男の姿が薄れていく。
その瞬間。
さらに別の光景が流れ込む。
戦場。
第一次世界大戦。
泥だらけの兵士。
さらに別の時代。
中世の荒野。
飢饉。
疫病。
そして共通している。
どの時代にも、“継承者”がいた。
英雄ではない。
王でもない。
普通の人間。
愛し、苦しみ、逃げながら生きていた。
玲司は膝をつく。
頭が割れそうだった。
その時。
複数の声が重なる。
『終わらせろ』
『継承を』
『始まりの場所へ』
玲司の意識が現実へ引き戻された。




