平穏の終わり
ずずず
汁をすする。葉物の残骸があるだけの汁。
微妙なえぐみを呑み込みながら、俺は外を眺めた。
ホーホケキョ
・・・穏やかだなぁ
ドスドスドス
ダンッ
「盛陵どのはおるかっ!?」
びっくりして車にぶつかりそうになったタヌキみたいになっている俺を無視して、おっさんが部屋に入ってきた。
「おうっ。調子はどうじゃっ。」
「は、はい。絶好調です。」
「そうかっ。」
がはがはと笑うと、おっさんは俺の肩を叩いてきた。
「なによりじゃ。ではゆこうぞっ。」
へ?
ぽかんとしているとおっさんが俺の身体を引っ張り上げた。
危うく落としそうになるお椀をキャッチし、すする。
なんだか知らんが、ともかく食わねば。
粗食とはいえ貴重な食糧なのだ。
引きずられながら一気飲みすると、おっさんがぱちくりと俺を見た。
失礼だったか?
いいや、この飯は俺のだ。
快復して数日が経ち、彼らは患者食をくれていたのではなく、デフォルトで患者食なのだと気づいた。
当然の帰結として、出されたものは全部食い、出されないものもなるたけ食う男になった。
ハングリー精神というやつである。文字通り。
「おおっ、すまんな。」
おっさんは襟元から手を離すと、俺をまじまじと見た。
「飯は満足に食えとるか?」
「・・・成長期ですので。」
「成長期。」
足りねえよ馬鹿野郎、をオブラートに包んでみたが、成長期という単語はまだなかったかもしれない。
「ふむ。まあよい。」
いいらしい。よかった。
「ま、そんな思いも今日までよ。」
ん?
俺が見上げると、おっさんは半分になった右耳を触ってがはがはと笑った。
「働かざるもの食うべからず。ぐははっ。」




