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女王の華咲く日~新しい女王は六人の王配に愛されて華開く~  作者: リラックス夢土


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第161話 他の女王候補者の動向



「荷物の荷解きは終わりましたわ、美雨様」


「ありがとう。野乃」



 美雨は自分に与えられた家の中を一通り確認した後にソファに座っていた。

 本当は野乃が荷解きをする手伝いをしたかったのだが「これは王女様のすることではなく侍女の私の仕事です」と野乃に断られてしまったのだ。


 旅の間であっても野乃の中で美雨は自分の主人であり王女であるという意識が消えることはないらしい。

 美雨自身はひとりの民として扱って欲しいのだがそううまくはいかないようだ。



(野乃は私には私しかできないことがあるって言うけれど、もっと私もひとりでなんでもできるようになりたいわ)



 女王候補者として王配選びの旅をしているのだから王配を選ぶことに専念すればいい。

 確かにその通りなのだが美雨はこの王配選びの旅を通して人間としても成長したいと思っている。


 だがここまでの旅での出来事を思い出すと自分が成長しているのか疑問が浮かぶ。

 その原因を作っているのは美雨が選んだ光の王配と水の王配の二人の存在だ。


 美雨が何かしようとするとすぐに光主や氷室が代わりにやってしまう。

 それどころか気を付けないと光主や氷室は食事さえ美雨自身にやらせず自分たちで美雨を餌付けしようとするから厄介だ。


 そして美雨は本気になって二人を怒れない。

 二人の手から美雨が食べ物を食べると光主も氷室も極上の笑みを浮かべて喜ぶからだ。


 その幸せそうな二人の笑顔をもっと見たいと思ってしまうのは自分が二人に恋をしているからだろう。

 惚れた弱みというのはこういうことを言うに違いない。



(光主様と氷室様と一緒に幸せになるためにも女王にならないといけないわね。女王になれなかったら二人のどちらかを選ばないといけないんだもの)



 王配選びの旅に出る前は各部族の王配候補者と恋仲になれるかが心配だったが今は恋仲になったからこその悩みを抱えてしまっている。

 そこでふと美雨は思った。


 自分以外の女王候補者も同じく王配選びの旅をしているはず。

 現に水族では姉の順菜と遭遇している。だが順菜は水の王配候補者と婚約せずにどこかに行ってしまった。


 その順菜がどこに行ったのかも気になるが他の二名の女王候補者は無事に自分の王配を選ぶことができているのだろうか。



(私が光族に行った時はまだ誰も光族に来ていなかったわよね。水族も私の後から順菜お姉さまがやって来たし。さっき資道様は土の王配候補者は五人いるって言ってたけどこの土族にも他の三人はまだ来ていないってことかしら……)



 どの部族から回るという決まりはないためこれまで順菜としか遭遇しなかったのは偶然かもしれない。

 この土族は美雨からしてみれば三つ目の部族だが華天国には六部族が存在するので他の女王候補者が美雨とは全然違う順番で部族を回っている可能性はある。


 順菜は一度遭遇したので順菜なりに王配を選ぶ旅をしているのは明確だ。

 たとえ水族で王配候補者を選ばずに姿を消したとしても今頃再び水族で王配を選んでいるかもしれない。


 では第一王女の清和せいわとイトコの照奈てりなはどうだろうか。



(照奈は女王になりたがっていたから絶対に自分の王配を選んでいるでしょうけど、清和お姉さまは……)



 清和のことを思い出すと旅に出発する前に見た光景が頭に浮かぶ。

 王宮の一室で隠れるように清和は恋人の男性と密会していた。


 普段はおとなしい清和がその恋人以外の相手は選べないと王配選びの旅に行くのを嫌がって取り乱していたのには美雨も驚いた。

 あの後、清和と庭師だという清和の恋人はどうしたのだろうか。


 美雨は清和が出発するより先に旅に出てしまったので清和が無事に王配選びの旅に出発したかの確認はしていない。

 けれど庭師との結婚を女王の氷雨が簡単に認めるとは思えない。


 ただでさえ女王候補者は貴重な存在だ。

 王族の血筋であることはもちろんのこと結婚適齢期の女性王族は今回の四人の女王候補者以外に存在しない。


 美雨と照奈が次代の女王候補として有力視されていても清和にも順菜にも女王になる資格はある。

 清和が好きな人がいるから王配選びの旅を辞退したくてもきっと認められないだろう。


 この華天国には女王が絶対に必要なのだから。



(清和お姉さまが無事に王配を選んでいたとしてもそれは清和お姉さまが心から好きになった相手ではないわよね。そんな思いをして王配を選んでもし清和お姉さまが女王になってもそれが清和お姉さまの幸せになるのかしら……)



 自分は幸いにも光主と氷室と心が通じ合えた。

 二人とは生涯共にいたいと思える。


 しかし清和が想うのはあの庭師の男性だ。愛のない六人の王配と結婚した時にそこに清和の幸せがあるとは思えない。

 でもだからといって美雨が清和にできることはないのだが。



(そういえば清和お姉さまの恋人の庭師って土族の男性だったわよね。もしあの庭師の男性は清和お姉さまが女王になったらこの土族に帰って来るのかな)



 自分の愛する女性が他の男性たちと結婚生活を送る姿を見るのはきっと苦痛に違いない。

 そうなればあの男性は庭師を辞めて自分の部族に帰ってしまう可能性はある。女王が王配以外の者と関係を持つ訳にはいかないのだから。



(私がもし女王になったら清和お姉さまとあの庭師の男性の結婚を認めてあげることもできるんだけど……)



 この国では女王の言葉は絶対だ。

 庭師と王女の結婚だって女王が認めれば可能だろう。


 けれどそれは美雨が無事に女王になれた時に実現できる方法だ。

 順菜や照奈が女王になったら清和の想いなど考えてはくれないに違いない。



(そうなると清和お姉さまのためにも私は女王になりたいわね。だって清和お姉さまには幸せになってもらいたいもの)



 美雨は新たに女王を目指す理由がひとつ増えた気がした。

 王女だって華天国の民のひとりなのだから女王が庇護する者だ。それでなくとも清和は美雨にとって大切な姉。その姉を幸せにできなくては民を護ることなどできはしない。



(もしどこかの部族で王配選びをしている清和お姉さまにお会いできたらこの考えを伝えてみようっと。そしたら清和お姉さまの心労も減るかもしれないし)



 そう思った時に美雨たちがいる家に族長の使用人がやって来て「夕食は族長様の家でご用意しています」と伝えてきた。

 どうやらこの家は純粋に休息や就寝するための家で食事は族長の家で食べなければならないらしい。


 使用人に「すぐに向かいます」と返事をして美雨が身支度を整えていると野乃が溜め息を吐く。



「食事の度に一度外に出て族長様の家に行かないといけないなんて不便ですね」


「仕方ないわよ。それがここのやり方ならそれに従わないと」


「女性は身支度するのに時間がかかるというのを土の族長様はご存じないのでしょうか」


「別にドレスを着る訳じゃないからそれに比べたら時間はかからないから平気よ。それに土の族長様は男性だからそこまで女性のことに気が回らないのかもしれないし」



 そこで美雨は女装趣味があるという道麻のことを思い出す。



(女装が趣味だから道麻様が女の姿をするのは分かるけど、道麻様の心は男性のままなのかしら……? それとも心も女性だから女の姿をしているのかしら……? う~ん、道麻様が女性を恋愛対象に見れなかったら私と想いを通じ合うことはできないわよね。もしそうならどうしよう!)



 道麻に感じた想いがもし光主や氷室と同じく恋の気持ちであったとしても道麻が美雨を女性だから愛せないというなら美雨の片想いになってしまう。

 それでは道麻を自分の土の王配に選ぶことはできない。自分は王配たちと両想いでいたいのだから。



(でもそれをどうやって確認するの……? 道麻様に貴方は男性が好きですか女性が好きですかって訊いたらまるで私と閨事できますかって訊いてるみたいじゃない! 恥ずかし過ぎるわ!)



 自然と脳裏に道麻との閨事が浮かぶ。

 想像だけで美雨の身体が熱を持ち顔が朱に染まる。



「美雨様。お顔が赤くなっていますが体調が悪いのですか?」


「な、なんでもないわ! 野乃。それより早く王樹様の家に行きましょう!」



 美雨は頭の中に浮かんだ道麻との閨事の光景を強引に打ち消し野乃と共に王樹の家に向かった。



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