38.王太子殿下の回顧録 其の一
女子高生わたし、王族に転生する。
ひゃっほい!
しかも前世で大好きだった乙女ゲーの世界に転生したとか最高すぎでは?
攻略キャラの中で最推しだった王太子に転生とか、マジで神様ありがとう!
うーんこれはきっと前世で猫を助けたご褒美ですね、間違いない。
それか、もしくは毎日近所の神社でナンマンダム唱えてた甲斐があったわね。
宗教が違う? 現代日本の若者に繊細な宗教観が理解できるわけないでしょ。祈ってりゃぜんぶ一緒よ一緒。
こうしてイケメン王太子に転生したわたしだったが、ヒロインとの甘々生活を夢見て乙女ゲーの舞台であった学院生活が始まるのをただ大人しく待つ……訳がないんだなぁ!
なぜならわたしの女性キャラでの最推しは聖女アンズではなく、悪役令嬢レイアだからだ!
通常、乙女ゲーの主人公は貧相な体格で描かれることが多い。
小さく薄い胸・肉付きの悪い臀部・低身長・肩の辺りで短く切り揃えられた髪。
その対比として悪役令嬢はボンキュッボンのスタイル抜群、ロン毛を靡かせて女性の色気ムンムンなパターンが多い。
女性の色香に惑わされることなくヒロインの内面に惹かれた攻略対象と真実の愛を見つける。これこそ乙女ゲーの醍醐味ってもんよ!(個人の感想です)
一方で、このゲームはすべて逆!
ヒロインである聖女はスタイル抜群の色気で、一方の悪役令嬢は佐々木朗希の高速フォークを思い出させる断崖絶壁のちびっこ!
おのれこの野郎どういう了見だと制作会社にお怒りの問い合わせメールを送って戻ってきたお返事がこちら!
『もっと胸を盛るペコ』
うっひょ~~~!
これにはわたしも怒りのあまり、仲間と一緒にSNSで拡散して、大炎上させてしまいましたーーー!!
あと悪役令嬢が不憫すぎる事でも有名になった。
公爵と娼婦の不貞によって産まれて両親から忌み嫌われるも、頑張って努力して王太子の婚約者としての地位を勝ち取る。
しかし結局は地位も名誉も何もかもを聖女に奪われて断罪されてしまう。
まぁ割と悪どい嫌がらせもしてたから、レイア擁護派も声を大にして文句は言えなかったんだけどね。
それでもかなり問題になったこともあってか、後日コミカライズされた漫画の中に収録されていたオマケ話には、辺境に追放されたレイアが幸せな家庭を築いている後日談もあったりした。
しかーし!
わたしが王太子に転生したからには、そうは問屋が下ろさない。
わたしは王太子最推しであると同時にレイアガチ恋勢。目指す未来はただ1つ!
レイアと王太子のイチャイチャハッピーエンドのみ!
その為にまずは、8歳の時に開かれる王太子の婚約者を決める為のお茶会でレイアを選ばなくては。
ゲームでは「国内有数の大貴族である公爵家と懇意にするため、嫌々ながらレイアを選んだ」とある。いわゆる政略婚約だったわけだ。
ゲーム通りなら間違いなくお茶会にレイアは来るだろうし、嫌がってもレイアとわたしの婚約は決まる。
しかしわたしは自分の意思でレイアを選び、相思相愛な婚約生活を送りたい。愛の言葉を囁きながら可愛いレイアを愛でて、いっぱいイチャイチャするのだ!
そうと決まればお茶会だ。これまで以上に身だしなみを整える。
「ご令嬢たちに会うので気合いが入ってますね」?
悪いけど、他のどの貴族令嬢にも興味はない。
わたしが心惹かれるのはレイアただ1人なんだから!
さあ満を持して令嬢たちが集う庭園へ。
この乙女ゲーの世界でも最上位の美貌を誇るイケメン王太子わたしの登場に、令嬢たちから黄色い声と感嘆のタメ息があがる。
フッフッフ、レイアを幸せにするために自分磨きを欠かさなかったわたしに死角などないのだ。
あとはレイアに話しかけてその手を取るだけ!
なんて言おうかなぁ? 「一目惚れです」とか「わたしには貴女しか目に入らない」とか?
わたしだったら王太子になんて言われたいかを想像しながらレイアを探す。
……
…………
………………
あれ? いなくない?
おかしいな。伯爵家以上の令嬢は全員、このお茶会に呼ばれてるはずなんだけど。
「公爵令嬢は参加してないのかな?」
従者くん、何か知ってる?
「公爵令嬢は療養中の為、残念ながら今回のお茶会には参加することが叶わないそうです」
は?
は???




