37.チョコと朝チュン
やっちまった……。
いや、ヤッちまったと言うべきか。
太陽の柔らかな日差しが部屋に差し込み、窓辺では鳥たちがチュンチュンと歌う。そんな心地よい目覚めを感じさせる朝。
俺の腕に抱きついて幸せそうな顔で笑う素っ裸の婚約者さまを見て、俺は今更ながらに1人反省会を開催していた。
分かってる。
自分が割とヘタレであることも、なんやかんや言い訳をして好きな人と腹を割って話し合うことを避けていたことも。
でもさぁ!?
小さい頃に一目惚れして、一緒にいればいるほど楽しくて幸せな気持ちになって、許嫁にまでなってさぁ!?
将来はこの娘と結婚するんだ、この娘にふさわしい男になるんだ、絶対に幸せにしてみせるって頑張ってさぁ!?
いざ学院で数年振りに再会してみたら俺とは違う男とイチャイチャしてるし、しかも王太子殿下だし、見た目でも地位でも金でも頭でも、男として勝ってる部分なんて何1つなくてさぁ!?
俺はバカだから勉強もまともにできないし、女性が何したら喜ぶとか分からないし、そもそも貧乏すぎて今日を生きるのに必死すぎるし。
こんな俺じゃ彼女を幸せになんかできっこないって諦めてさぁ!?
なのに本当は俺のことが好きとか告白されて、そのすぐ後に人外外道野郎から勇者の遺伝子がどうとか言われたら、俺がいるせいでレイアは本当の運命の相手と幸せになれないんだとか思うじゃんよぉ!
それをこの男勝りお嬢様は「本当に大事なのは自分の心さ☆」なんてカッコいいこと言いやがって。
自分の心に正直になった結果がコレだよ。
どうすんだよオイ。婚前交渉なんて公爵激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリームだぞ。なんだよ激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリームって。どういう予測変換機能してんだ。俺、自分が死ぬ未来しか見えないよ。
「ぬへへへー♡」
……幸せそうだなぁ。
俺の腕に頬ずりしながらだらしない顔で笑うレイアの、ピンクの長い髪を手に取る。
丁寧に手入れがされているんだろう、絹のように艶やかで手触りの良い髪からは、桃のような甘い匂いがする。
ここまでしたからには、男らしく責任を取らないとなぁ。
この先どうなるのか分からないけど、レイアだけは絶対幸せにしてみせる。
結婚指輪は給料3ヶ月分でいいかな?
「リュート給料ないじゃん」
お、男の甲斐性がぁぁ……。
「いっぱい子ども作ってくれればいいよ。それが世界を救う為になるんでしょ?」
そんな殊勝なこと言って、ただヤリたいだけじゃないのぉ?(ニチャァ)
………………おい、そこで黙るなよ。恥ずかしいだろ。
まあ、なんだ。
バカだし貧乏だし、優柔不断で情けない奴だけどさ。
「うん」
体力だけは人並みの自信があるし、汗水たらして働いて、絶対に後悔させないようにするからさ。
「そこは『幸せにする』って言ってほしいなー?」
……絶対、幸せにしてみせる。だからさ、
「レイアさん。俺と結婚してくれませんか?」
「はい喜んでー!」
なんで居酒屋の接客みたいな返事!?
「いやちょっと恥ずかしくなってきちゃって」
俺の一世一代の告白、そんな理由で茶化されたの!?
お前ふざけんなよ、これでも俺なりにそれなりの覚悟を決めてだな……
「ゴメンって。お詫びになんでもするから許して?」
ん?
「え?」
今、なんでもするって言ったよね?
「言った、けど?」
よし。それじゃあ俺のプロポーズを台無しにした罰に、お仕置きを受けてもらおう。
「お仕置きって……っ!? ちょっと、朝からどこ触って……♡」
さっきから一糸も纏わない裸で男に抱きついて誘ってきてたんだ。
こうなるの、期待してたんだろ?
「さ、誘ってなんか……ないもん♡」
そんなこと言って、じゃあ身体に聞いてみようか?
もしも嘘をついてたんだったら、その分もたっぷりお仕置きしないとなぁ?
「す、好きにすれば?♡♡♡」
あぁ、そうさせてもらおうか。
すっかりおとなしくなったレイアを組み敷く。未成熟に見えながらも、昨夜はその小さな体躯で俺の欲望を受け止め悦び媚びていたという事実に興奮が止まらない。
借りてきた猫のように縮こまりながら、それでもどこか期待に満ちたような瞳に優しく唇を落としてから、俺は再び、愛する少女の身体を貪り────
「レイア! 助けに来たぞ!」
────突如として蹴り破られた部屋の扉。
それと同時に聞こえてきた、どこか自己陶酔しているような愚か者の声音。
せっかくのお楽しみを邪魔しやがったクソ野郎は誰だとベッドから体を起こして振り返る。そこにいたのは………………
「れ、レイア……?」
俺の婚約者に横恋慕していた王太子殿下だった。
数分遅れたけどギリギリセーフってことでなにとぞ!
薄々思ってたんだけど、俺が書いてるのはNTRではなくBSSなのでは……?
ボブは訝しんだ。




