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34.チョコが湧く

「皆さまお疲れでしょうし、お休みになりますか?」


 ジイさんの提案に全員がうなずく。

 いやホント、よく考えたら今日はまだバレンタインデーなんだよね。

 学院の教室でバイト先のおばちゃんからもらったチョコ食べてからまだ1日も経ってないのよ。

 いろんなことが起こりすぎて、もう疲れたモンニー。


 他の4人も疲れた表情をしてる。

 レオナルドくんは簀巻きにされてたから言わずもがな。

 ユードリックは王都の公爵邸からこんな辺境まで猛スピードで馬車を飛ばしてたんだし当然疲れてるだろう。

 …………いやホント、辺境まで休みなしでぶっ飛ばせる馬ってなによ。あとで人参あげてこようかしら。


 レイアとアンズも疲労の色が拭えな────なんかちょっとツヤツヤしてる気もするな。気のせいか?

 まあとにかく、この宿屋でゆっくり休ませてもらうとしよう。

 あれこれ問題は山積みだけど、疲労で鈍った頭じゃまともな思考も出来ないだろうしな。


「では、温泉へご案内しましょう。すぐそこですので」


 温泉?

 うちの領地に、湯治に利用できるような温泉なんてあったっけ?


「休みの日に趣味に興じていたのですが、その時にたまたま温泉が湧いている場所を見つけましてな」


 領地内外から有識者や移住者を募って温泉街を造り上げている途中、ね。

 いや温泉を見つける趣味ってなによ。


「穴を掘っていらないものを捨てるという趣味をですな」


 いらないものが何かはあえて聞くまい。

 ということでやってきました大浴場。


「まだオープン前ですので、貸し切りですぞ」

「効能も書いてあるわね。『腰痛』『肩こり』『美肌』……本当にこんなに効果あるのかしら」

「リュート! 一緒に入ろう! 混浴!」


 イヤです。

 もう疲れたって言ったでしょ。今日はもうゆっくり休ませてくれ。

 はいはい、ブーブー文句言わないの。

 女子2人はあっちですよー。


 よし、レオナルドくん、ユードリック! 男風呂行こうぜ!

 裸の付き合いで仲を深めようじゃないか!


「え」

「え」


 どうしたレイアさん、アンズさん。そんな驚天動地な顔をして。

 いくら仲が良いからってユードリックを女子風呂に連れ込む気じゃないだろうな!?

 駄目だぞそんなエロ同人みたいな……エロ同人みたいな!


 ユードリックもなんでそんな意外だって顔してるんだ。

 駄目だぞ。レイアもアンズもお前にはやらんからな。

 ほら決闘で俺が勝ったんだから言う事聞きなさい。


「は、はい。よろしくお願いします、ご主人様……♡」


 なにモジモジしとんねん男のくせに可愛いね。ちょっと一緒にマッサージでもどう?

 そんでもってなんでレオナルドくんもモジモジしてんの? 股間を押さえて、トイレ行きたいの?


「ゆ、ユーリと一緒に風呂入るとか正気ですか義兄さん!」


 なんだよ、最近の貴族は裸の付き合いって言葉を知らないのか?

 一緒に飯食って一緒に風呂入ればマブダチってそれ昔から言われてるから。

 あぁもう疲れてるんだから早く行くぞ。温泉で疲れを癒してグッスリ眠るんだから!


 レイアとアンズもそこで呆けてないで、早く女湯に行けよー。


「ほっほっほ。それではごゆっくりお楽しみください」


 脱衣所に入って服を脱ぐ。

 タオルも用意されてるし、風呂上りにはジイさんが冷えた牛乳も準備してくれるらしいし、至せり尽くせりだな。

 2人とも、なんでさっきから顔を赤くしてモジモジしてるんだ。いつまでも恥ずかしがってないでサッサと脱いで! はい、レオナルドくんスッポンポーン!


「ギャァァァァァァァ! 服を脱がすなぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 服を脱がなきゃ風呂に入れないでしょうが!

 ユードリックも早く行くよ。レオナルドくんみたいに脱がせようか?


「い、いえ! その、色々と準備があるので先に行ってください! ……む、ムダ毛の処理しとかないと」


 準備? 石鹸とかかな?

 まあそういうことなら先に行ってるからね。すぐ来るんだよ。


 さあ引き戸を開ければ湯けむりに視界が一瞬真っ白になる。

 目が慣れればなんと立派に開けた露天風呂じゃありませんか!


 すごいなコレは! 王国北方の大山脈近くにいくつか温泉があるのは知ってるけど、南部ではここが初めてじゃないだろうか。

 正式にオープンすれば、王国の南半分の貴族は近場のこっちを利用するだろうし、そうなれば男爵領の財源は観光業で潤うこと間違いなし。


 うーんこれはジイさんに頭が上がりませんなぁ。

 貧乏男爵家の執事長なんかじゃもったいない。この温泉街の統括責任者とかにして、もっと自由な裁量権を与えて色々やってもらった方が良いんじゃないだろうか。


 ……でもそうなると、両親を叱る人が俺以外にいなくなるからな。

 やっぱりジイさんには執事長でいてもらおう、うん。


 考え事をしながらレオナルドくんの頭と背中をゴシゴシ擦る。前は自分でやってね。そのお可愛いポークピッツを愛でる趣味は俺にはありませんことよ。


「………………義兄さんは、怒ってないんですか」


 うん? 何が?


「僕がやったことって、割とひどい事だったと思うんですけど」


 あぁ、公爵家からの援助を止めようとしてたこと?

 まあ被害はほとんどなかったんだし、いいんじゃない?

 俺が道草食って腹壊したのと、両親が邸宅売り払う羽目になったくらいだし。


 そのおかげでアンズと友だちになれたし、両親の浪費癖を矯正するキッカケにもなったし、むしろ感謝したいくらいかな。


「……理解できない。貴族っていうのは面子が大事だ。子どもに舐めた真似されてお咎めなしなんて、家の名前を汚すことになりますよ」


 これ以上汚れる名誉なんてないからなぁ。王国貴族の中で最底辺の貧乏貴族よ?

 だいたい子どものイタズラに一々目くじら立てて怒るほど器が狭いつもりもない。


 そりゃレオナルドくんがやったことはエグいし意地悪いけど、大好きなお姉ちゃん奪われるって恐怖からやっちゃったことだろ?

 公爵家の人たちからレイアの婚約者として信頼を得ることを怠った俺が悪いよ。


 もちろん悪いことしたなら叱ってもう二度とやらないように導いてあげるのが大人の役目だ。

 でも、レオナルドくんはレイアたちに嫌というほど怒られたみたいだし、最後には反省した。

 じゃあ俺がこれ以上とやかく言う必要はないね。


「………………変わってますね」


 よく言われるよ。


「でも、まっすぐで信頼できる人柄だ」


 ただ頭が悪くて面倒くさがりなだけだよ。

 それでも褒めてくれて悪い気はしないけどねぇ。


「お姉さまを、よろしくお願いします。リュート義兄さん」


 うん、任された。


「おや? 逃げるとか言わないんですね?」


 いやもうここまで来たら逃げられないでしょ。薄々諦めかけてるよ。


「まあ、あれだけ何かに執着するお姉さまは初めて見ましたからね……」


 な? 怖いよな。まあでもああなったキッカケも俺に責任があるはずだし、放っておいても寝覚めが悪いしさぁ。

 ……それに、結局レイアのことは好きだしな。それが男女の好きなのか、友情の好きなのかは分からないけど。


「………………やっぱり義兄さんも、もう少し素直になった方が良いかもしれませんね」


 おっ知ったような口をきいたな、まだ10にもならない若造が!

 そんな生意気な義弟くんには、頭からお湯を流す刑だ!


「わぷっ────!」


 よし、石鹸の泡は落とせたな。

 それじゃあ先に温泉入ってて。ちゃんと肩まで浸かって100数えるんだよ。


「もう、子ども扱いしないでください!」


 ………………なんだよ。笑えば年相応に子どもらしいじゃん。

 ジェームズみたいでキライとか思って悪かったな。ちゃんと善悪の区別を教えてあげれば良いだけなんだな。


 さあ義弟と仲直りもできたことだし、俺も身体を洗って温泉を楽しもうかね。


「ご、ご主人様……?」

 ちょっと途中でぶった切ります。なぜなら次回がお色気回だからです。執筆しながら勃ってまう。


 新しく入ったバイトのおじいちゃんが、元請けの若い人(口が悪いことで有名)をぶん殴って1日で辞めていきました。

 上司が頭抱え始めちゃったよぅ……。

 ボクの足はラーメン食べてよく寝たら3日でだいぶ痛みが引いたので大丈夫です。ご心配おかけしました。

 ……温泉、俺も行こうかな。

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