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ルビナ嬢を迎えに


「お迎えにあがりました」


 ジェイがルビナを舞台に誘ったのでローゼン子爵家に迎えに来た。


 すると子爵夫妻がまず挨拶をする為に出てきて、応接室に通された。



「ハドソン卿、本日はありがとうございます。まだ社交を始めたばかりで右も左も分からないような娘です。ご迷惑をおかけする事もあると思いますが、どうかよろしくお願いします。それと娘には酒を飲ませないでください」


 ルビナの父は真顔で頭を下げる。


「はい、お約束しますよ。私も付き合い程度しか酒を飲みませんので、その辺りはお任せください。それに迷惑なんてとんでもありませんよ。私もルビナ嬢と行く事で助かりました。席を空けるところでしたから」



 ジェイはバルコニー席を全公演キープしているので、いつでも行ける。上客や家族に譲ったりもしていた。


 人気の公演はどれだけ金を積んでも行きたいと言う貴族もいる。兄夫婦が行きたいと言ってきたが、次の公演にチケットを渡すからと今回は諦めてもらった。



 ルビナ嬢は舞台を観たことがないと言う。どんな顔をして見るのだろうか? 楽しんでくれるんだろうな。


 侯爵家をバックに持つ私は正直言ってモテる。でもそれは私を見ているわけではなく侯爵家と縁を繋ぎたいからだと丸わかり。


 それもあり、留学をする為に国を離れた。侯爵家は兄が継ぐし気楽な三男だから両親に“留学したい”と伝えるとどうしても行きたいと言う気持ちがあるのなら、反対はしない。と言われた。


 留学に行って、他国の物に触れるうちにこの良さを自国でも知ってもらいたい。と販売することにした。それにより商売をする事になった。


 資金は侯爵家から出た。いずれ家を出るのだからそれくらいさせてくれ。と家族に言われ有り難く受け取った。せっかくだからいい店を……この辺が気軽な三男たる所以。



 留学先ではデザイナーの工房も見学させてもらったし、宝飾品の職人とも知り合いになった。他国の技術だが、自国に合うようなデザインで色々と作ってもらっている。生地や柄も珍しい物を揃えた。


 留学先は文化も違うし、言葉は通じるが意思の疎通などに戸惑いながらも楽しく生活することができた。その中でも学園に通っていた時に知り合った演奏家や劇団員との出会いは楽しかったし色々学ぶ事もあった。



 卒業後は国に帰る約束になっていたので、侯爵家に帰り父を説得して商売を始めることになった。祖父は前陛下の右腕で、色々と手柄を立てている事から爵位を複数保有していて、それは父に受け継がれ家を出るなら好きな爵位を選んでいいと言ったので領地のない伯爵家を選んだ。



 父は領地を信頼している部下に管理させていたので領地付きの爵位を! と言っていたのだが商売を生業にしたいのでと言って断った。


 選んだデュランド伯爵の城は小高い丘に建ち、大きくはないが立派な城で他国の様式を用いた白亜の城と言った感じだ。庭は緑を多く使われていて派手ではないが落ち着く所も気に入っている。



 近いうちに兄が侯爵家を継ぐことになるので、私も父から爵位を正式に継承することになる。そうなると母は結婚しろ。とうるさく言ってくる。


 母が紹介してくる令嬢は皆これ以上ないくらいに完璧に着飾って来た。


 私に会う為に着飾ってきてくれるのは正直嬉しいが疲れる。皆それなりの家の令嬢なんだろうな。


 母に呼び出されると大体令嬢も一緒にいてお茶を飲むハメになる。


『早く孫の顔が見たくて……素敵なお嬢さんよね。お父様は騎士団で活躍されて今は指南役をされているのですって。ご長男は────』


 孫なら兄の子供がいるだろう。下の兄のところにももうすぐ子供が出来るんだし……



 なんとか切り上げて出勤することとなる。母にはしばらく放っておいて欲しい。と手紙を書いた。留学していた息子が帰ってきたんだから世話をしたいんだろうが、もう良い年なのでそっとしておいて欲しい。と父にも密かにお願いをした。



 それからしばらく平穏な日々が続き店が軌道に乗り始めた。カップルなんかも来てくれるようになった。流行りに敏感な若者は輸入品にも興味を示した。



 ある週末に、若い貴族風のカップルが店に来た。接客をして気になるものがあったらお出ししますよ。と言って自由に店を見てもらうことになった。


 すると子息がばったり知り合いらしき令嬢に会ったらしく話し込み、お連れの令嬢を放っていた。



 ……信じられないな。他のお客様に声をかけられ商談スペースで商品を説明した。そのお客様は商品を購入しお見送りをした。店内に戻ると先程の令嬢が一人でいた。連れの子息はどうしたんだ?


 そう思い声をかけようとしたのだが守衛に声を掛け令嬢は店を出て行った。


 先に子息が店を出たのだと思っていたのだが、しばらくして店の外を見ると令嬢は一人でベンチに座っていた。たまに守衛が話しかけている……


 それから用がありしばらく店を離れた。帰ってきたらまだ令嬢はベンチに座っている!


 ……なぜだ?

 


 






 

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