七、
儀式が行われる事は、あまりない。
そもそも、人になりたいと云う死神があまりいないのだ。
それでも、この儀式が行われるのはアリアでちょうど十回目。
人になった死神が、九人いるということだ。
「アリア、あなたはどんな人になりたいのですか」
「そうねぇ、できれば容姿は今のままがいいわ」
顎に指を当てて、わざとらしく答える。
「他には?」
そう聞くと、
「友達はいっぱいがいい、あとここをもう少しだけ………」
と、アリアは自分の小さな膨らみの上に手を置いた。
「はいはい。わかりました」
カオスの了承の途端、
「注文が多いなぁ」
と、エロスの声がした。
「うるさいわよ!」
アリアはエロスを半眼で睨みつけた。
「ごめん、ごめん。冗談だよ!」
「そう」
エロスの言葉を聞いたアリアは、カオスを見た。
「姉さま」
「な、何かしら?」
いきなりの事に、カオスは戸惑う。
「私が‘人’になったら、私の‘死神’だった記憶はどうなるの?」
「普通ならば消去するわ。でも‘死神’の記憶を残したいっていうんだったら話は別」
「え?それって…………」
「そうよ。前世を知ったまま、人として生きることができるわ」
初めて知る事実に、アリアは目を丸くする。
「さあ、アリア・レマード、記憶は残す?残さない?」
「残すわ」
その言葉を聞くと、カオスは息をついた。
「さ、これで儀式が始められるわ」
姉さま以外の神が、私を中心に半径八メートルの輪を作る。
私は、ただ瞳を閉じている。
「 」
姉さまの言葉ではない声が聞こえる。
「 」
「 」
「 」
「 」
「 」
その言葉を、私のまわりの神たちが詠唱する。
ついに私は‘人’になる




