その4「初戦闘、避けただけ。迫りくる帝国の猛威」
ブゴゴ…ブゴゴ…。そう鼻を鳴らし襲い来るはイノシシだ。それも、ただのイノシシとは訳が違う。きっとこの世界に適応するように進化してきたのであろう。まるで鎧の様に発達した硬そうで赤黒く輝く体毛に身を包む、トラックほどの巨体。間違いなく、俺らがいた世界のとは違う。違いすぎる…。
ブガッ!そう音を鳴らした瞬間、その巨体からは考えられないほどの速さでこっちへ向かってきた。が、見きれない程でもない。例えるならば、自転車くらいか。
真後ろには木があり、左右には他の木と間隔が少し広めに開いている。俺は左に避けた。アーサーは右に避けた。
「うわっ…と、とと。」
「ひぃぃ〜…。うぎゃっ!」
次の瞬間、木は激突してきたイノシシによってへし折られ、また、イノシシはへし折った木との下敷きとなった。
「アーサー、大丈夫か?」
「へ?ああ…は、はい」
いつも通り、大丈夫な様だな。俺はイノシシを見た。
ぶ…ブゴゴ…!ブゴゴッ!
なんとこいつ生きている。それも無傷だ。たまたまこの森の木々は普通とは違った、大きく成長しているためか、身動きはとないようだが。まぁ、身動きとれないイノシシにかまっている暇はない。ゴブリン村を探さねば。そう思い剣を見た。剣はまるで寂しそうに徐々にその輝きを無くしていった。それにしても、さっきは何故剣が光ったのか?アーサーにそのことを聞いてみた。
「え?そ、その剣に何か特殊な能力が?
す、すて、あ。剣のステータスを見れば…どうですか?」
なんて言ったんだ? ステータスだって? そんなゲームみたいなものが存在するのか。是非みたい。見てみたい! あるのならね。
「そのステータスってどう見るの?」
「し、知らなかったのですか?す、ステータスはこうやって…」
アーサーは前に人差し指を出した。そして空を斬るように下へスライドした。コツは指に力を込めて、心の中でステータスオープン、とさけぶ様だ。
そして彼のステータスを見て驚いた。
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個体名 アーサー
種族 猫人族
レベル 1/1
スキル 英雄の才能
レベル50以降、
全ステータスの伸びが3倍になる。
HP 500/500
MP 60/60
力 50
守 48
速 49
賢 38
運 99
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なんと彼はレベルが成長しない。
つまり彼は持てるスキルも十分に活かせることができないまま…。レベルの成長限界には個人佐賀あるようだ。彼は世にも珍しい『成長しないタイプ』のようだ。
俺も気になってステータスを見てみた。
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個体名 我龍天睛
種族 人間
レベル 1/1
スキル 剣技の鬼
HPの最大値を
一時的に1にすることで、
剣で与えるダメージ×10倍、
剣の速度×5倍になる。
やまびこの力
魔法を唱えるとき、
このスキルを意識すると、
その魔法はMPの消費なく、
もう一度発動する。
ただし、発動した魔法の
コントロールは不可能。
一度目と同じ軌道で発動する。
HP 500/500
MP 50/50
力 90
守 32
速 38
賢 62
運 13
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な…なんだとーッ!俺も成長限界が1である。信じたくない。しかしそれが現実。受け入れるしかないのである。そしてアイテムのステータスみるには、その物に指を触れ、スライドするそうだ。
「なぜ?ステータスなんて仕組みがあるんだ?」
「さ、さぁ?わかりません。こ、これは神が我らに教えるべき最低限の情報だから…なのでしょうか。」
俺は剣のステータスも見た。
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しばらく時間は経過した。剣のステータスを見て驚きはしたものの、特に山道に変化なく、ずっとアーサーをゴブリン村を探索していた。すると…
「天睛さん!アレを見てください!黒い煙です!
なにか…悪い予感がしますッ!」
アーサーとは同じ成長しないもの同士というのもあってか、山道を進むにつれ、気を許せるようになっていった。今でも敬語で話されるものの、ビビられはしなくなった。
それより…黒い煙?何かあったのだろうか。
俺は、煙の元に駆け寄った。すると…そこにあったのは…
「なんてヒドイことを」
「これが俺達の探していた『ゴブリンの村』なのか…」
見つけたゴブリンの村は多くの村人が拷問され、そこら中に腹の中身をぶち撒けた死体が転がっていた。まさしく地獄絵図。どうやら、襲撃の後らしい。それもまだ新しい。なんとか息をしているゴブリンを発見した。話をかけることに。
「貴様らも…。あの人間の仲間か。許さん!許さん…ぞ!」
話すのが精一杯らしい。そして、アーサーの目の色がいつもと違うことに気付いた。
「許されないぞ!帝国軍め!」
アーサーは人間の軍の正体に気付いたらしい。『ヴァニラ帝国』という人間の国らしい。
不幸中の幸いか、国は同じだが猫人族の村へ向かっている軍とは別の隊らしく、この国を破壊した軍は、ここを去っていた。
−到達予想時間まで、残り4時間−




