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黒幻白夢 ~異形とヤンデレと~  作者: AL Keltom
過去との出会い
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第二十二話『隔絶』

 



「――姉御……なんでこんなことしないといけないんだ……?そりゃあ、言われたからには従うし、何か理由があるんだろうけど……ここまで危険を冒してまで……一体何の目的でやるんだい?」


「いいから黙って手と足を動かせ!運ぶのに力がいるんだから!!」




 ――時刻は丑三つ時、


 蠢くは四人組の一行、暗闇の中、顔までは見えない。

 街道を、車輪と板だけで出来た大きな荷馬車が、音を立てて進んでいる。

 彼らの唯一の灯りは、馬車の先頭に置かれたカンテラのみ。

 同時に周囲が全く見えないため、心のよりどころですらあった。


 馬を二匹使って引かせても、荷物が重すぎるのかほとんど進まなかった。

 仕方が無く、一行の内の大男三名が荷台を後ろから押す羽目になっている。

 残り一名の赤髪で文字通り、紅一点の女性は後ろから、彼らを無言で見守っていた。



 一晩かけて、ようやくとある大洞窟にたどり着く。

 どうやら、一行が運んでいたのは強大な何かのようだ。


 荷物は、ゆっくりとだが動いている。生き物だろうか。

 見た目は刺々しいが、今は眠っているようだった。


 そこまで来てようやく女性が口を開いた。



「お疲れ様、今日はもう帰っていいわ」


 それを聞くと男三人組は薄明かりの中、驚いたような表情を見せる。



「なに言ってんですか!?こんなに危険な奴を、こんなところで野放しにしとくんですか!?」


「そうですよ!しかもここは初心者向け魔物の狩場じゃないですか!」


「おい!もうやめろ!姉さんをこれ以上困らせるんじゃない!俺たちは期待に添えたんだ!これ以上の事は無いだろう!!?」



 どうやら大男三人の性格は思い思いのようだ。

 そして、赤髪の女性が彼らのボスと言える存在にみえる。

 男三人は性格や考え方の違いはあれど、一つ共通の認識があった。


 それは、命令がこんなにもややこしく危険なものは、今まで決して無かったこと。

 面倒くさいから、代わりに依頼をこなしてほしい、などが精々だった。

 だから、よほどの理由があるのではと思っていた。


 女性は言った。


「ここでこいつを引き渡す取引があるの。秘密の依頼だから、他言無用よ。私以外は居たらまずいから、もう荷馬車を持って帰って」



「……あなたがそう言うなら、我々は大人しく帰ります。本当に危険は無いんですよね?」



「くどい男は嫌われるわよ」


「はい……」



 男たちはそれ以上食い下がれず、大人しく荷物だけを下ろして去っていった。


 女性の言葉が嘘だという事は見抜いている。

 取引にしろ、秘密裏にことを成すにするにしろ、こんな依頼は絶対にありえない。


 だが、どうしようもない事情があるのだと無理やり呑み込んで、その場を去った。




 一方、残された女性の方はひどく上機嫌だ。

 声を大にして笑いたかったが、さすがに危険すぎたのか、表情に出すだけにとどまった。



「うふふ……これで、彼は…」



 ――私の事を見直してくれるに違いない……



 カイロスが彼に、実習教育を押し付けていた時点で考えていた。


 私は馬鹿だからこんな遠回りで単純な方法しか思いつかない。

 でも、時に単純というものは、強力なものになりえることを知っている。



 私はかつて失敗した。

 彼の目の前で恥をかいた。


 彼は気にしていないようだったが、私にとっては一生残る苦い思い出だ。

 しかし、今回の件でそれも払拭できるはず。







 ……丸一日たったが、彼はここに現れなかった。

 場所はこの大洞窟のはずだ。

 何か問題があって、町に引返したのかもしれない。


 痺れ薬で眠らせるにしても、図体がでかいせいで、量がかかりすぎる。

 もう一日だけ待って、来なかったら一旦引き上げよう。




 二日目の午前……来た!

 そしてタイミングがいい事にこいつも目覚めた。


 絶好の機会。

 こいつに襲わせれば、彼とてさすがに何もできないだろう。

 私がそこに颯爽と現れて助ければ、私を惚れさせることができるかもしれない。


 費用は高くついたが、彼の事を想えば何でもない。

 傍らに居た少女の事なんか気にもしていなかった。



 ◇◆◇◆







 ふざけんるんじゃない!!何でそんなことがあり得るんだ!!


 思わず、口調を荒げてしまうほど想定外の出来事が起こった。

 一回的で、全く想像もできるはずが無かった。


 視線の先には、緑と黒のまだら模様の竜、

 そして、あの黒髪と赤い瞳を持った少女だった。



 ちょっと目を離したすきに決着はついていた。

 竜は全身を貫かれ、絶命していた。

 地面には血が流れ、土が一滴残らず吸い上げていく。



 彼が少女を守ろうと、身代わりになったところまでは覚えている。

 腕に当たって、後ろに吹き飛ばされて、気絶した。


 さすがにもう危険だと思った。

 本当は目の前で助けたかったが、後で私が助けたことにすればどうにでもなる。

 まさか自分が身代わりになってまで少女を助けるとは思わなかったのだ。


 だから、手に持った道具を一瞬だけ目視で確認して、目の前を見た時には……



 ――もう、終わっていた。



 全てが、何もかもが予想外。

 別の思考は彼女には無かった。



 鋭い剣をも弾く、竜の鱗を貫通させるなど、不可能に近い。

 本来は罠にでも嵌めて、その上で大砲をこれでもかと撃ち込まないと、勝てない相手だ。


 全身を貫かれたと言ったが、よく見れば貫通箇所も驚愕の一言。

 顎から脳天に掛けて、胸から背中の心臓部に掛けて、急所を間違いなく射抜かれている。

 他にも、内臓や脚部、翼腕など、生きるためには致命的な部分を満遍なく破壊していた。



 さすがに女性はそこまでは見えていなかったが、


 分かったのは少女が、化け物と言えるほどの実力を持っていること。

 そして、自身の計画が打ち砕かれたこと。



 ――このままではまずい。


 赤髪の女性が思ったことは一つ。




 あの女を排除しなくては……


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