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グレイ・スカイ ー解放への闘諍ー  作者: 嶺司
終わらせるためには
80/84

第80話 セレクレア侵攻

10月11日午前3時45分。


ピピピ、ピピピ・・・・・・


目覚まし時計のアラームで目が覚める。

ふぅ、何事もなくよく寝れた。


灯りをつけてスヤスヤ寝ているはずの三人を起こそうとすると。


俺の上に乗っていたルリさんは既に自力で起きたのだろうか、自分のベッドで支度を始めていて。チグサは何故か半裸、ブラジャーで支えられた大きな胸と綺麗なお腹が見えている、なんで?。ナナはの方は頭と脚が入れ替わっていて僕の胸に片足が乗っている、どして?


「おきろー、時間だよ!」

「んー?」


チグサは素直に起きて上半身を起こす、目を擦りながら寝ぼけ眼で自分の姿を見て。


「どこ見てんのよ!」

「見てねぇーよ!!」


久しぶりだなこのやり取り、ちょっと嬉しかったけど見てないわけが無い、顔を赤くして両手で胸を隠すチグサ、てか、半裸見るの3回目ですから。


「むーっ!まあ、レイならいいけど別に」


なんだそれ、ちょっとドキットしてしまった。

そして、あんだけ大きい声を出したのにナナはスヤァと一向に起きる気配は無い。

仕方ないので僕に乗っている足を掴んで足裏をくすぐる。


「おきろーい」

「・・・・・・ブッ、ちょっ!ちょっと何してんのぉ!」


ケラケラと笑い転がるナナ、必死にもがいても僕の手からは逃れられない、面白い。


「べふっ!どほっ!」


すると普通に掴んでない方の脚で喉元を蹴られた、あまりの勢いに吹き飛びお尻から床に落ちる。

息も出来ないし、お尻も痛い、何も出来ずに床にうずくまっていると。


「ごーめーんー!ってか、レイが悪いんだからね!」


そうだけどさ、喉元は蹴らないでよ。

無言の涙目で訴えるも、フンッとそっぽを向かれる。


「もう何してるのよ、大丈夫?」


仕方ない感を出しながら飛行服をちゃんと着直して、ジッパーを上まで上げているチグサが起こしてくれる。


「・・・・・・時間だよ」


準備万端のルリさんに急かされバタバタと準備を終わらせ、待機室に急いだ。

いつもギリギリに起きてバタバタ準備してる気がするな、次からルリさんを見習って早めに起きないと。


●


待機室。


ルリさんとナナはいつものように倉庫に朝食を取りに行き、僕とチグサで待機室に入った。

中には案の定、ツルギさん達が先に来ていて待っている。


「おはようございます、早いですね」

「おはよう、なんか目が覚めてなぁ」


僕を見ずに遠くを見るツルギさん。僕らはいつもの席に座る。


「ツルギさんも緊張とかするんですか?」

「まぁ、・・・・・・多少は、ね」


今から始まる作戦はこの国の命運がかかっている作戦だ、緊張しない方がおかしいか。爆睡してたなんて言えないな。


「お前はどうなんだ?」


クルっと振り返り僕の顔を見る。どう、どうなんだろ、あまり考えていなかった。


「やれるだけのことをするまでです」

「肝が座ってるなぁ、前とは大違いだ」


フッと鼻で笑われ、前を向き直す彼。


「なんですかー」

「いや、いいと思うぜ」


椅子の横から顔を出して聞くもただ笑ってるだけだ。


「お待たせー!」

「・・・・・・お待たせ」


缶詰をダルボールに入れて持ってきたナナとルリさんが部屋の中に入り、いつものように配る。

今日はいつもの缶パンにカボチャスープだ。

僕達はそれを珍しく無言のまま食べた。


4時半、予定された時間通りに大佐が待機室にやってきた。


「おはよう諸君、作戦内容の確認だ」


モニターの電源をつけてスライドを出し説明を始める。


現在のセレクレア近郊の天気は曇り、二、三日はその天気が続く。行動作戦計画については、僕達、グレイ隊とブルー隊は5時にここトモパーレを出撃、ブルー隊を先頭にカルシューレ上空でノースシュルツからカルシューレへ移送してきたコンテナ格納型の無人戦闘機40機と合流、解放陸軍第一機甲師団の進軍を上空で援護しつつ、対地攻撃、制空任務を行う。


「対地攻撃については無人機及び、陸軍の攻撃ヘリが主題となるだろうが、初出撃はブルー隊についてはビーストモードにて対地ミサイル八発、通常ミサイル四発。グレイ隊は誘導爆弾二発、通常ミサイル四発、アクティブホーミングミサイル四発を搭載、ブロッサム1については、ガンポッドを搭載だ」


1回目の出撃で敵の出方を見るようだ、とりあえずなんでも出来るように武装は対地攻撃も出来るようにするのか、それに全て誘導弾で大盤振る舞いだ。


「補給しては出撃を繰り返すこととなるだろう、2回目の出撃については、ブルー隊は制空、グレイ隊は空地両用をメイン兵装とする」


僕もそれが無難だと思う、さすがに爆弾も積まずに飛ぶのは陸軍に怒られそうだし、空戦はツルギさん達の方が安心できるし。


「何か質問はあるかね?」


僕は特にないかな、やれることをやるだけだ。

しかし、二回目の出撃なんてあるのだろうか、それだけが不安だった。


「ちなみにバルセルの戦力は?」


ツルギさんが確認する、あー、分かれば一応聞いといた方がいいか。


「分かっている範囲で、だが、陸軍が二個師団規模、攻撃ヘリが40機、対空砲も多数あるだろう。空軍については概ね近傍の基地にトムキャットが30機、ファントムが10機程だ、それにラプターだな」


それ、勝てるの?なんて言ってられない、勝たないといけないんだ。ツルギさんも「了解です」と直ぐに口を瞑る。


「他にはないな?」


大佐が見回してみんなが頷く。


「トモパーレ飛行場基地司令として君たちへの命令はただ一つ。・・・・・・生きて終戦後の空の下でまた会おう。以上、出撃してくれ」


僕達はザッと立ち上がり大佐に敬礼をして、無言のまま待機室から出て格納庫に向かう。


「大佐も粋なこと言いますね」


少し重たい空気をどうにかしたくて、先を歩くツルギさんを追いかけてそう言う。


「ああ、戦闘機の居ない空を眺めたいな」

「でも、ツルギさんは戦闘機乗りが似合ってますよ?」


彼が戦闘機を降りるなんて想像できない、世界平和のために戦うとか言い出しそうだ。


「そうか?考えとくよ」


ニッと笑って僕の頭をくしゃくしゃと撫でられる。


「ほら、俺のことはいいから、チグサ達と打ち合わせしてこい」

「あ、そうですね!」


それもそうだ、僕は後ろを歩くチグサ達を待って何があったらどうするとか作戦を考える。


※


「はぁ、考えてるのか考えてないのか・・・・・・」

「まあ、レイくんらしいけどね」

「緊張感に欠けます」


出撃前だと言うのにあいつはいつもと変わらず、話し始めるとナナリスに弄られワイワイと打ち合わせをしている。気負ってなくていいと思えばいいか。


「ねぇ、二人とも」

「なに?」

「どうしました?」


俺の両隣を近寄り気味に歩く水咲さんと啓に言っておく。


「俺は勿論二人とも守るけど、あいつらも必ず守る。・・・・・・いざという時、まぁいつもだけど少佐の命令には従えよ」


と、今まであまり気にしていなかった、飛行服の左胸に縫い付けてある少佐の階級章を指で持って主張する。空ではコンマ何秒の判断の遅れが命取りだ、俺の命令に今回ばかりは、でも!とか言っている暇はないだろう。それは二人も分かってくれているのか。


「・・・・・・わかった」

「わかりました」


文句も言わずに従ってくれる。


「大丈夫、イエローラインの通り名は伊達じゃない」


その言葉に二人とも笑って返してくれた。


※


4時50分。

予定より少し早いが出撃だ。

格納庫に駐機されているF-15イーグルと、F-35ライトニングⅡのエンジンに火が点る。


《あーあー、グレイから各機、感度チェック及び、準備良かったら教えて》

《ブロッサム1、感度良好、準備よしっ!》

《グラム、感度良好、いける》

《エレイン、りょーこー!準備おーけー!》

《ブルー1、良好だ、準備よし》

《ブルー2、感度良好、準備いいよ》

《ブルー3、感度良好、準備よしです》


みんなの準備が整った、どうせ直ぐに補給で帰ってくる、サヨナラなんて言わない。


《グレイから各機、滑走路まで進出》


エンジン出力を上げて、先にブルー隊のツルギさん達が前に出て僕達グレイ隊はその後ろに続く。


《あっ、ツルギさん、フライトリーダーはどうしますか?少佐のツルギさん?》


大事なことを決めるのを忘れていた!フライトリーダーは空で物事を決める人、重要な役職だ。


《正規軍のレイに任せるよ、いざという時は代わってやる》

《お、お願いします》


なんだかんだ言っても僕を立ててくれるツルギさん、本当に優しい。でも、僕がみんなをまとめれるかな?なんだかんだ失敗しかしてない気もする。だけど今回は気心知れた人達だけだ、何も言わなくてもわかってくれる人たちばかりだしなんとかなる、はず!

そして、各機滑走路に整列。


《ーーブルー隊、グレイ隊、離陸許可。武運を祈るーー》


駐機場からウエリさんや整備員、みんなに見送られながら、僕達は朝焼けで少し明るくなり始めた澄み切った空に舞い上がった。


※


「レーダー探知、090度、7機。IFF確認、グレイ隊とブルー隊です」

「そう」


地下管制室でレーダー当直員の報告を受ける。


レーダーに写る7機の機影は真っ直ぐこちらに向かって飛んできている、彼らの目的地はカルシューレだ。

私はヘッドセットを手に取り通信を始める。


《ーー貴方達、来る場所が違うわよーー》

《ーー最後に、いや、もう一度だけアルサーレの景色を見たくて。大佐への挨拶も済んでませんしーー》


この声はレイ・アスール大尉の声だ。


《ーー何よ、死にに行くんじゃあるまいしーー》

《ーーそうですけど、見たかったんです!じゃぁ、アーノル大佐、ありがとうございました。また会いましょうーー》

《ーーええ、気をつけるのよーー》


そして短いが彼との通信を終え、レーダー画面上も彼らは北に進路を取っていく。


「ちょっと外に出てくるわ」


私はそう言い残して地下から地上に出る。

東の空は朝焼けで明るくなり、頭上の暗闇では彼らがどこにいるのかわからない。


ゴーーーー・・・・・・。


地を揺らすような轟音が空に響く。

もう行ってしまったのか、機体ぐらい見せてくれたら良かったのに。

私は北の空に向かって手を振った。


※


カルシューレ上空。


僕達は地上から射出された無人機40機と合流。あれだけ手こずらせられたのに味方となってしまえば鬼に金棒で見てくれだけは大編隊、とても壮観だ。


《しゅごい!》


テンションの高いナナ。

先頭にツルギさん達ブルー隊、後方に僕達グレイ隊、その間に無人機と布陣を整える。

眼下には解放陸軍の大部隊、その勇姿からなんだか勝てそうな気もしてくる。

そして、作戦開始の時間だ。


《ーー解放陸軍作戦本部より各部隊へ、これより最後の作戦を敢行する。バルセルへの大規模侵攻をもってこの戦争を終わらせる、自由グレイニアの興廃はこの一戦にあり、各員奮励努力せよーー》


陸軍本部長の力の入った通信。

やるしかない、やらないで負けるよりやった方がいい。


強い奴が勝つんじゃない、勝った奴が強いんだ。

操縦桿を握る手に力が入る。


《みんな・・・・・・、絶対勝つよ》

《当たり前よ》

《当然》

《卑怯なバルセルなんかに負けないっ!》


不安でいっぱいな僕に反比例して、みんな頼もしいな。


《ここまで来たら派手に暴れてやる》

《そうだね》

《もちろんです》


ツルギさん達もやる気満々だ。


《ーーこれよりセレクレア侵攻作戦を開始する、自由グレイニア解放陸軍第一機甲師団、進撃開始!空軍も続け!ーー》


《自由グレイニア解放空軍第一、第二任務飛行隊、攻撃開始、各隊交戦許可、グレイ交戦!》

《ブロッサム1、交戦っ!》

《グラム、交戦》

《エレイン、こーせん!》

《ブルー1、交戦する》

《ブルー2、交戦》

《ブルー3、交戦します》


地上の陸軍が進撃を開始、まずは国境付近の地雷原の除去で、早々に地雷原処理車が無数の爆発物を広範囲に散布、ボボボボボボンッ!とすごい範囲が爆発し砂塵と煙が舞い上がる。

それを煙幕の代わりとして戦車部隊が突撃を開始。


《スモーク発射!射線を切れ!》


砂埃があるにしてもこの開けた大地、少しでも的にされないようにしないと一瞬でやられてしまう。


《前方にバルセル戦車部隊を確認、無人機に攻撃させる》


10機が編隊から旋回離脱し地上の敵戦車にミサイルを発射していくが、近SAMによって何機か迎撃させる。


《ほら来たぞ、前方にトムキャット、グレイ!俺たちは対地攻撃を優先する、迎撃しろ!》

《グレイ了解!って結局ツルギさんが指示してるじゃないですか!》

《気づいたやつが指示するんだよ!》


前方のツルギさん達は機体をロールさせ、背を地表に向けて無人機とともに離脱し対地攻撃を始める。

僕達は速度を上げて敵機を迎撃する。

数は、八機かな。


《レイ、どうする?》


どうしよう、ツルギさん達を待つにしても直ぐには対地攻撃は終わらないだろう、僕達でどうにかするしかないか。


《あの特殊ミサイルを撃たれたら厄介だから、ドッグファイト優先、グラムはエレインのカバー、僕とブロッサム1は各個戦闘》


あの凄まじい爆炎で無人機を虫けらのように落とされてはたまったものでは無い、どうにか僕達に引き付けてドッグファイトに持ち込みたいが上手くいくかな。


《ブロッサム1、ウィルコッ。エレイン、出し惜しみは厳禁よ》

《エレイン、りょーかい。わかってるもーん》

《グラム、ウィルコ》


そして僕とチグサは左右に散開、ナナとルリさんは直進して敵機を迎え撃つ。


《エレイン、フォックス3!》


頭と頭を合わせヘッドオン、すれ違いざまにナナの放ったアクティブミサイル四発は見事二機に命中、黒煙を上げて落ちていく。


《すご!あれ当てるの!?》

《へへぇ、女は度胸だよーん》


嬉しそうに尻尾を振ってそうなナナの声、僕だって負けてられない。ナナのおかげで数的同数になった、殺られる前に殺るんだ。

旋回し敵機の後ろに付く。

もうちょっとで捕捉出来る、操縦桿を握る手に力が入ると。


『詰めが甘い、何度言えばわかるんだ!』


ハッとした僕は思いっきり操縦桿を倒し、敵の後ろから離脱すると、僕のいた場所にミサイルが掠めて行き。

その直後、白い奴が僕を追い越して行った。

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