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第16-1話 新しい力をもらおう

 朝日が昇るとともに起床する。昨日のロウさんとの手合わせでかなり動いたので身体が少し重く感じた。それほぐすために家から出て朝の空気を吸いながら入念にストレッチを行った。

 それが終わると家の中に戻って朝食を食べに行く準備をする。まだベッドで寝ているチビっ子の様子も窺っていると、もぞもぞと動き始め二人同時に上体を起こした。二人とも目は開いておらずボーっとしている。


「おはよう」

「おはよー……」「うっす……」


 寝ぼけ気味に俺の挨拶を返してきた。いつもこれぐらいおとなしければ、と思ったがこれはおとなし過ぎか。いつもの元気よさと足して二で割れば丁度いいかもしれない。

 そんなことを考えていたがすぐに二人の元気メーターは振り切れ、朝の準備の間にじゃれ合いながら暴れ回り始めた。早くご飯を食べさせておとなしくさせよう。



 朝食を終えてまた昼まで街中をブラブラとする。ゲーセンでもあればいい時間潰しになるけど、生活費から出すと考えると恐ろしくて一プレイも出来ないだろう。そういえば兵士としての給料はどうなっているのだろうか。その辺りの話をしていない気がする。クルジュに会ったら訊きたいが、剣の経費の事といい、金の話ばかりになってしまうので気が引けるなあ。



 太陽が頂点付近にまで昇ったので軽く昼食を済ませて修練場に向かう。今日はロウさんの方が先に到着していた。


「こんにちは。今日も頑張りましょうね」

「はい、よろしくお願いします」


 早速いつもの木刀を小屋から持ち出して準備をする。


「まずは昨日と同じぐらいの速さで動くわ。遠慮せず打ち込んで来なさい」

「はい!」


 遠慮なんてしていたら一生ロウさんの速さ、ウェアウルフの速さになんて追いつけないだろう。俺は目一杯力を込めて地を蹴ってロウさんに斬りかかった。


「うりゃあああああ!」


 気合の声を上げて一太刀振ろうとしたのだが、


「パンパカパーン!」


 と、しばらく聞いていなかった効果音が響いた。それにより気が抜けて前のめりにコケてしまった。

 離れて遊んでいた三羽の内、ハーディが天使の輪をピカピカと光らせて俺の所までスイーっと飛んでやって来る。


「おめでとう! 『この世界に来てから十日経過』を達成したよ! ボーナスとして魔力が付与されるよ!」


 バンザイのポーズでハーディが達成したボーナスを教えてくれた。

 この世界に来てもう十日か……。長いような短いような……。


「何かおめでたそうだけど、どういうことかしら?」

「あっ、これはですね……」


 ロウさんが不思議そうにしながら俺に手を差し伸べてくれた。俺はそれを握り立ち上がる。

 ボーナスのことを知っているのは俺達以外にはクルジュとハルバさんだけだ。そりゃいきなりこんな騒ぎが起こったら何事かと思ってしまうのも仕方がない。


「ラピス様を呼ぶね」

「あっ、俺もー」


 えっ、あいつを呼ぶの?

 ハルバさんがあいつと会ってしまった時は事前に俺が教えていたからまだ良かったものの、ロウさんはそういう事前知識がまるで無い。ややこしい状況をさらにややこしくしてしまう。

 とりあえずロウさんに説明する時間をもらおうと二羽を止めようとしたが、いつものように空に向かって「ラピス様ー」と呼んでいた。


「はいはーい」


 ラピスがいつもの調子でいつものように何もない場所から急に現れた。


「な、なに?」


 ロウさんが跳び下がり刀の柄に手を当てている。焦るロウさんという珍しいものが見れた。


「えっと、危害は加えてこないと思うので安心してください」


 とりあえず安心してもらおうと声を掛けたが、ロウさんの顔に一筋の汗が流れている。


「こんにちはー。さらに逞しくなられましたねリュートさん。僕も嬉しいです。そちらはロウさんですね。リュートさんのお師匠さんをして頂いているそうで」

「え、ええ……」

「今回は魔力を付与するということなので、リュートさんの目的のために有効に使ってください」


 ラピスはそう言うと、これまたいつものように指を鳴らす。俺の身体が仄かに光りそれが消える。


「ではではー、僕も応援していますので頑張ってください。魔力の説明についてはせっかくなのでロウさんから聞いてください」


 ウサギ達の頭をひと撫でし、ラピスは姿を消した。相変わらず慌しい奴だ。

 それより今回のボーナスで魔力をもらったらしい。これは前にロウさんやウサギ達の話からも出ていた力のことだろう。


「……リュート君、顔をよく見せて」

「えっ」


 ロウさんが俺に顔を近づけてくる。しかし、いつもの本能的に逃げ出したくなる雰囲気は無く、とても真剣な表情だ。それに釣られて俺もロウさんの目を見つめ返す。


「本当に魔力が付与されているわ……。魔力の付与なんて大がかりな魔導機を使っても大変なのに……」


 少し顔色を悪くしたロウさんがそう呟いた。

 体調が悪いのかな、と俺が顔を覗き込むと、今度は少し強い口調で問いかけられる。


「ねえ、あの人は……、いいえ、あいつは何者なの?」

「それは……」


 何者かと問われれば何者かはわからない。そういえばウサギ達にちゃんと聞いたこともない。

 とりあえずここまで関わってくれたロウさんだ、俺の話も信用してくれるだろう。そう判断して俺はこの世界に転移してきたことや達成ボーナスのことなどを説明した。

 話している最中、ロウさんにいつもの余裕ある柔らかい物腰がないように見えて心配になってしまう。

 俺が話し終えるとロウさんは表情を変えずに言う。


「普通なら信じれないような話だけど、今の出来事があったんだもの、信じるわ。でも、さっきの黒い奴とは深く関わらない方が良いと思う。あいつからは得体の知れない膨大な力を感じたわ……」


 俺自身もあまり関わりたくないのでロウさんの意見に賛成なのだが、そう簡単な話ではないようだ。ラピスを見てからロウさんの顔色は悪いままである。


「ごめんなさい、少し落ち着くわ」


 そう言うとロウさんは小屋の近くにある椅子に腰掛けた。

 あのロウさんがここまで取り乱すなんて……。ラピスは薄気味悪い奴だと思っていたがよっぽどのようだ。次に会ったらあいつ自身のことを訊いてみよう。

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