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【連載版】加護なしの第八王女は、前世が社畜だったので王宮生活がイージーモードにしか見えない  作者: 茨木野


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63/68

63.

 ミシェルの的確な指揮と手配のおかげで、援軍出発の準備は驚くほどスムーズに進んでいた。

 城の中庭にはすでに転移魔法陣が起動し、眩い光とオゾンのような匂いを放っている。


「あんたは大蛇の相手。あたしは怪我人の治療よ」

「うむ。頼むぞ」


 ガシャンと重装備を鳴らすギデオンの横に、杖を持ったフローラが並び立つ。

 二人は躊躇することなく、眩い光の渦へと勢いよく飛び込んだ。


 視界が晴れると、そこは湿った土と酷い腐敗臭が漂う南方の森であった。

 ミシェルは遠く離れた帝城にいるというのに、事前の計算で正確な怪我人の位置を割り出している。


「まったく。ミシェルは見ていないのに、すべてが見えているようですごいな」


 ギデオンは感心したように口角を上げ、深く頷いた。

 彼は待機させていた魔導カーにフローラを乗せ、怪我人のいる方角へと向かわせようとする。


 その直後、ビリビリと大気を震わせる異様な咆哮が轟いた。


「ジュララアアアアアッ」


 木々の葉がザワザワと揺れ、鼓膜を突き破りそうな敵の叫びが響く。

 ギデオンは迷うことなく、声のする方へと大きな体を向けて走り出そうとした。


「あんた、怖くないの? 毒で即死するかもしれないのにっ」


 走り出した魔導カーの窓から顔を出したフローラが、青ざめた顔で叫ぶ。

 巨大な皇帝はピタッと足を止め、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


「平気だ。俺には女神ミシェルがついている」


 その言葉に、フローラはのけぞるように驚き、ふっと呆れたように息を吐き出した。


「あの子の信頼を裏切るんじゃあないわよ」

「無論だ」


 ギデオンは力強く頷き、猛毒の立ち込める死地へと颯爽と駆け出していくのだった。


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