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【連載版】加護なしの第八王女は、前世が社畜だったので王宮生活がイージーモードにしか見えない  作者: 茨木野


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62.

【☆★おしらせ★☆】


あとがきに、

とても大切なお知らせが書いてあります。


最後まで読んでくださると嬉しいです。

 執務室の重厚な扉が、バーンと乱暴に開け放たれた。

 息を切らした伝令が、膝から崩れ落ちるようにして床に手をつく。


「南方への遠征軍が、消息を断ちました!」


 血の気の引いた声が、冷たい石壁の部屋にガンガンと反響する。

 遠征軍には、実地訓練としてマルコーたち学園の生徒も参加していたはずだ。

 ギデオンがガタッと勢いよく立ち上がり、椅子が後ろに倒れてガシャーンと大きな音を立てる。


「なんだとっ。一体何が起きている」


 城内が蜂の巣をつついたような騒ぎになる中、ミシェルだけは冷静だった。

 彼女は無言のまま、猛烈な勢いで過去の気象データや魔素濃度の観測記録を引っ張り出す。

 バサバサと羊皮紙をめくる乾燥した音が、室内に響き渡る。


 ミシェルの目がスッと細められ、資料の一部を指差した。


「これは敵国の襲撃ではありません」


「敵国ではないとすると、遠征軍になにがおきたと言うのだ?」


「過去の文献。現在の魔素の推移が完全に一致しています。六百年前に、魔法国が南方遠征を行い、壊滅しかけたときと同じ事象かと」


 その言葉に、大賢者ピクシーがのけぞって丸眼鏡を落としそうになる。


「まさか。『南の大蛇』が目覚めたのかい!?」


「なんだそれは?」


 ギデオンの質問に、ピクシーが答える。


「神話級の魔物さ。かつて魔法国を滅亡の危機に追いやった厄災だよ。周囲一帯を死の猛毒と瘴気で満たし、軍隊など一瞬で壊滅させる化物だ」


 ピクシーの顔は青ざめ、額からタラリと冷や汗が流れていた。

 絶望的な解説を聞いても、ミシェルは一切の手を止めない。

 古い魔法国の文献を積み上げ、目を輝かせて解決策を探る。


「かつて魔法国はどうやってこの厄災を乗り越えたのか……」

「魔法国の資料にあるだろうが、しかし六百年前のことだ。すぐに出てくるとは思えない」


「……」


 すでに、大蛇による被害は起きている。大蛇本体を放置することも、そして瀕死の重体を受けているだろう、軍人たちもまたほっとけなかった。


 大蛇討伐、怪我人救助。同時にやる必要があった。


 ギデオンは迷うことなく大剣を掴み上げ、肩に担いだ。


「俺が行って食い止める」


 その巨大な背中へ向けて、ミシェルがパタパタと小走りで駆け寄り、両手を広げて立ち塞がった。

 ミシェルは抗議する。


「駄目です。相手は神話級の化物ですよ。皇帝自ら赴いて、無駄死にさせられるわけにはいきません」


 ギデオンは怒るでもなく優しく微笑み、彼女の華奢な体を力強い腕でギュッと抱きしめる。

 鉄と革の無骨な匂いが、ミシェルの鼻先をかすめた。


「そこには、マルコーらも参加しているのだろう。お前が育て、芽吹いたものを……俺は絶対に潰させはしない」


 ただの戦闘狂ではなく、ミシェルが愛し育てたものを守るための決意。

 ギデオンはミシェルをそっと離すと、颯爽とマントを翻して死地へと向かっていく。

 重厚な扉が閉まり、執務室には静寂が戻った。


 残されたミシェルは、ギデオンの体温が残る己の肩をギュッと抱きしめ、ガックリと項垂れる。


「全く。なんて阿呆なんでしょうね。全く……」


 呆れたように呟くが、その瞳にはこれまでにないほどの強い光が宿っていた。

 皇帝が前線で命懸けの時間稼ぎをするならば、自分がやるべきことは一つしかない。


「さて。わたしもわたしの戦いを始めましょうか」


 ミシェルはすぐさま通信魔導具を手に取り、自らの戦場へと歩み出した。


【おしらせ】

※4/3


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