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俺とあいつと娘の夏  作者: 水元悠紀


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15/16

15.ケルベロスの悲しい過去

だいぶ間が開いてしまいました。

予めお伝えしておきますが、今回は愛犬家の方には辛い内容になるかもしれません。

お気をつけていただければと思います。


「長く、生きられない・・・・?」

遥が呟いた。

「ケルベロスの頭はそれぞれが『知力』『体力』『魔力』を司っているんだ。それが連携して一頭のケルベロスたらしめているんだよ。でも二つ頭や一つ頭ではその力が弱くなってしまうから、体も弱いし、どうしてもケルベロスの集団の中では統率が取れないという事で排除される傾向にあるんだ。だから・・・・。」

光が翻訳機を通して、遥と俺だけでなく、全員に分かるように説明をしてくれている。

しかし、この続きを言い淀んだ光を見かねた犬飼さんが、「僭越ながら」と翻訳機を使って話し出した。

「二つ頭や一つ頭は元々体が弱い事もありますが、そのままにしておくと、親から育児放棄をされたり、噛み殺されてしまう場合もあります。」

「そんな・・・・。」

遥の口元がへの字になっている。

「そうならないようになるべく早くここから出しますが、二つ頭ならまだしも、一つ頭だと育てる事自体ができないのです。」

先程見た訓練中のケルベロス達は確かに統率が取れていた。

それは三つの頭が揃っているからなのか。

だとしても、隔離して育てたりすれば良さそうなのに。

しかし『育てる事自体ができない』とは?

「あのぉ・・・・」

「質問しても良いですか?」

小声で質問しようとしたら、はっきりとした遥の声が聞こえてきた。

「そういう子は、ケルベロスが好きな人に飼ってもらえないんですか?他の子達と一緒じゃないなら大丈夫なんじゃないですか?」

「それはできないのです。」

「できない?」

「はい。ケルベロスの飼育は個人には許可されていないのです。」

「え・・・・?」

なんだ?

個人で飼えない?

「昔、飼育放棄されたケルベロスが街中で人間を襲った痛ましい事件がありました。被害も相当だったそうです。それ以降、国で個人がケルベロスを飼う事を禁止したのです。我々は白木様が管理される組織の一つとしてケルベロスを飼育しております。ここのケルベロス達は白木様のお屋敷の警備や、他所から警備の御依頼があった時などに出動したりするのです。」

犬飼さんは、側にいるケンシロウの背を撫でた。

ケンシロウが犬飼さんを見上げている。

「この国のケルベロス達は、全て戸籍を持ちます。そして飼育員も、飼育場所も、全て国の管理下に置かれています。ケルベロスの出生も死因も全てが記録されるのです。」

「・・・・それは、その事件の後からですか?」

遥が聞く。

「そうです。飼育員に絶対に飼育放棄をさせないように、そして一つ頭が二度と人を襲わないように、です。」

「!」

遥の顔が強張った。

輝さんが泣きそうな顔をしていて、美奈さんが輝さんの背中を摩っている。

光を見ると下を向いて両手をギュッと握って何かを堪えているようだった。

犬飼さんは先程より更に表情を消して、口を開いた。

「私が子供の頃なので、今から50年前位でしょうか。当時は個人でもケルベロスを飼っている人がいましたが、やはり無責任な人間や、安易に金儲けの道具にしようとする輩のせいで、気の毒なケルベロス達がたくさんいたのです。」

・・・・異世界とか関係無く糞野郎はいるものなんだな。

「通常のケルベロスならば、そういう人間に対抗したり、まともな人間に保護を求めたりできるのですが、二つ頭はまだしも、一つ頭だと能力に偏りが出てしまいまして・・・・。」

犬飼さんは何かを思い出すように上を向いて、ふぅ、と息を吐いてからまた話し始めた。

「その一つ頭は人間から常日頃暴力を受けていて、碌に食べるものも与えられていなかったそうです。」

遥は両手で口元を覆っている。

「魔力が強かったようで、おそらくそのおかげである程度成長できたのでしょう。輩どもにどうにか対抗して外に出たまでは良かったのですが、人間不信な上、魔力の暴走も始まって、大通りで暴れ始めてしまったのです。

その日は大通りでお祭りが開催されていたそうです。」

食べ物の匂い。

大勢の人間。

平々凡々と生きて来た俺でも簡単に想像できる。

「数百人を巻き込んだ事件は、一つ頭の射殺と、虐待していた人間とその一族の処刑と、被害者や遺族への国家の賠償で幕を閉じました。その後、動物愛護団体などの反対もありましたが、最終的に国の管理下となったのです。」

犬飼さんは目を伏せて、そのまま黙ってしまった。

お読みいただきありがとうございました。

今後の展開でどうにかできれば(しますが)と思っております。

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