↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
9/12

それでも偉そうなハルさん

 結局、春日の処分は停職二ヶ月と決まった。

「検査入院が長引いたと思うことにしたよ」

 折角持って来たばかりの荷物をまたまとめて、春日はデスクを離れた。

「その前に一服してこうかな」サンライズをちらっと見るので、仕方なくまた付き合う。

 屋上は相変わらず、人けがなかった。二人の吐き出す煙だけが軽くたなびいていた。

「オマエ……今度のコトはやり過ぎだと思う」

 根が小心者のサンライズは、小さな声でそう言った。

「先にちゃんと、支部長に相談すべきだったと思うよ」

「かわいいなあ、サンちゃんは」親戚のオヤジみたいな口調で笑っている。

「そういう点がオマエのいい所だ、それよかナカガワには用心しろよ、なるべく関わり合いになるな」

「オマエのせいで十分顔を覚えられちまった」

 そうむくれると、親戚のオジサンが飴玉をくれるように、箱に残った煙草をそのまま彼に押し付けた。

「まあしばらく会えないけど、元気でな。禁煙すんなよ。あと部下を死なせるなよ、オレみたいに」

「そんなにいっぺんに約束させるな」

 ボビーやシヴァを危険に巻き込むこともあるのだろうか、これからずっと任務を遂行するにあたっては、リーダーならば常に部下の身の安全に気を配る必要はあるだろう。

「オレ、こわくなったかも……」正直に言うと、春日がじっと彼の顔をみた。

「オレだって、ずっと怖かったさ」

 自分だけならどうにでもなる、しかし他人の命まで預かる立場だからな。

「今でも、時々キャリーの所には行くんだ、様子を見に」

 春日がかかっている病院に神経医療センターが併設されており、彼女はそこに居るのだと。

「女性なのか」男女同権と言いながらも、特務の女性は珍しい。

「ああ……だから助かったのかも知れない、命だけはね」

 夕闇が迫り、屋上の照明が一つ点いた。春日の表情も読み取り難くなってきた。

「あの時に、オレはできることはやった、それでも部下を助けられなかった。悔やんで悔やんで……敵よりもまずテメエを呪ったよ。どうしてオレだけ残ったんだ、って。

 それでもさ、実はこないだの任務が原因でHIVに感染しました、って医者どもからいわれた時にさ、逆に急にふっ切れたのよ。

 それから、彼らが死んだのはもう取り返しがつかない、そう考えることにした。オレが生きてこうして這いずっているのも……シゴトを続けているのも、少しでもヤツらの死を無駄にしたくない、と思ってよ」

 春日は煙草に火をつけようと胸ポケットをさぐってから、箱ごとサンライズに渡したのを急に思い出したようだった。

「それでも、キャリーの様子を見に行くたびに、やっぱりオレは単なるヒトデナシのオヤジだ、って思えてしまう。彼女はいつまでも、あの時から抜け出せないんだ、そうしてそれを見ているオレも……怖くて震えが止まらなくなる」

 それでも、見守らずにはいられないのだ、と彼は寂しく笑った。

「オマエも、いい部下がいるからな……シヴァとか、あのオネエとか」

「正規雇用じゃないけどね、バイトだから気楽なもんだ」

「それでも、オマエを十分信頼してる。出来るヤツらだし……大事にしてやれよ」

「そうだな」

「それにオレもシヴァくんには先日世話になったし」はい? 何ですって?

「非常ベルの操作と解除、リモコン頼んでさ」聞いてません、そんなの聞いてませんてば。

「やっぱりオマエはアクマだ」それでオレまで巻き込みやがって。ケツを蹴りに行ったが、予測されて避けられてしまった。

「バカ、とっとと帰れ。もう来んな」

「はいはい、二ヶ月は来ませんよ~ダンナ」何となくうれしそうに、彼は非常階段を駆け下りていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。