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下剋上のハルさん

 本部には普通に入った。一階のトイレにはバッチリとカメラも付いているので、三階まで非常階段で行った。面白いことに、非常階段のカメラは勤務時間中の録画はしていない、音声のみ。経費節減のおかげだ。トイレで着替えて清掃業者に化けた。

 ナカガワの非常時見周り部署は、七階八階の給湯室、トイレ、非常階段エリア。

 七階のトイレが使用率低い。そこで待ち構えることにした。

 ヤツは几帳面だから、必ず奥の個室までチェックする、予想通り、彼は中まで入ってきた。そこを後ろから一撃。


「殴ったってか?」あきれて声も大きくなる。

「軽くね、カルク」

 完全に油断していたらしい、ナカガワはトイレに大の字に伸びた。

 そこにちょこっと扮装させて、写真に収めてから起こしたのだと。

「それで外した盗聴器をみせてやった。オレの電話にコレつけただろう? 返す、って渡したら吐き出して」

「何で渡したものを吐き出すんだよ」

「ああごめん、口に突っ込んでやったんだった」悪びれる様子もない。

「口きけるようになったら『オマエ、何やってるのか判ってんのか? クビどころじゃあない、警察を呼ぶぞ』と脅された」

 MIROC(マイロック)の本部に警察呼ぶんだって、面白いヤツだよなあ。と、本当に愉しそうな目をして笑っている。

「それさあ……本当に証拠はあったの?」

「オマエの仕業だろう? と一応聞いたよ、そうしたら『だったらどうだ?』と不敵に笑いやがった。白鳥つけたままね」

「後がどうなるやら」

 サンライズの吐き出す煙には、勢いがなかった。


 案の定、サンライズは翌日支部長室に呼びつけられた。

 行ってみると、部屋にはすでに支部長の他に、本部長のカチハラ、本部技術部長のナカガワがいかめしい顔をして座っていた。

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