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婚約破棄されたので、距離を取ったら溺愛されました  作者: はねださら


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第53話 居場所の作られ方

数日が過ぎた。


大きな出来事は何もない。

けれど、庭の風景は少しだけ変わっていた。


エマが、同じ時間に同じベンチに座るようになったのだ。


朝食の後、庭の奥。

木陰の、その場所。


最初は周囲を気にしていたが、

今は視線を落ち着けて本を開いている。


ページをめくる手も、急いでいない。


私は少し離れた場所に座る。


声はかけない。


彼女も、こちらを見ても立ち上がらない。


ただ、軽く会釈をするだけ。


それで十分だった。


午前中、彼女は川辺へ行く。

決まった石に腰を下ろし、水面を眺める。


誰かに教えられたわけではない。


自分で、そこに座ると決めたのだと思う。


食堂では、席の選び方が変わった。


以前は端に座っていたが、

今日は中央寄りの席に腰を下ろしている。


誰も驚かない。

誰も特別視しない。


自然に、その場所が彼女の席になる。


「落ち着いてきましたね」


使用人が小さく言う。


「ええ」


私はそれだけ答える。


午後、エマが私のそばに来た。


「……今日は、川の音がよく聞こえます」


「ええ」


「ここに来てから、初めてそう思いました」


私は視線を上げる。


彼女の顔に、焦りはない。


「最初は、何かをしなければと考えていました」


「そうですね」


「でも、何もしなくても、居てもいいのですね」


私は少し考えてから答える。


「困っていないなら」


彼女は小さく笑う。


「困っていません」


その言葉は、無理をしていなかった。


夕方、屋敷に戻ると、

管理人がエマに何かを尋ねている。


「慣れましたか」


「はい。……まだ全部は分かりませんが」


「それで十分です」


会話は短い。


私は少し離れた廊下で、その様子を見ていた。


教えていない。

導いてもいない。


ただ、急がなかっただけ。


夜、部屋で窓を開ける。


遠くで川の音がする。


居場所は、与えられるものではない。


自分で、少しずつ座る場所を決めるだけ。


私は灯りを落とす。


今日も、何も変えていない。


それでも、誰かの時間が整っていく。


それで、十分だった。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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