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第百十七話 共同体

 ・一九八六年 七月二十九日 午後六時五十分 認識力研究所一階リビングスペース五号室


()()()()()()()?」

 腰掛けたベッドの縁、ぼくの隣に座る被験者No.3、「弥生」が、調子外れの素っ頓狂な声をあげ、パチクリと両目をしばたかせる。きょとんとした表情で子犬みたいに小首を傾げた彼女の顔には、はっきりと「?」の文字が浮かんでいた。

「そう、“幽体離脱”。この言い方が正しいのどうかはよくわからないけど、ぼくの持つ能力は、それとよく似ている」

 上目遣いにこちらの顔を覗き込む弥生の疑問に答えるようにして、ぼくは小さく頷く。

 憎き浅間有一の洗脳を解き、彼によって与えられた「No.3」という規定を壊して本当の自分を取り戻した彼女の口から、その本名――「神崎弥生」――を耳に入れ、半ば動揺していたぼくだったけど、なんとか平静を装い、研究所の脱出に向けた最後の準備に取り掛かっていた。

 ちなみに、ぼくの本名を聞くのは……やめにした。

 記憶を失う前のぼくからその名前を聞いている弥生は、自分の名前を言うついでにぼくの名前も口にしようとしていたけど、ぼくは慌ててそれを制止した。

 怖かった。

 ぼくが、本当の自分を……名前を取り戻せば、今の自分が消えてしまいそうな気がして……。

 予感じゃない、確かな直感。心臓がキュッと絞られるような感覚に恐れをなし、ぼくは尻込みする。

(彼女から名前を聞いた時に感じた悪寒と、不意に意識を襲った謎の光景……)

 けれども、今は深く考えている余裕はない。

(何よりも優先すべきは、研究所からの脱出……)

 そのためにも、ぼく自身に与えられた『能力』の理解が、双方ともに必要不可欠となる。

 改めて、ぼくは目の前の彼女……弥生に尋ねる。

「さっき、ぼくが言ったこと、覚えてるね?」

「え、うん。確か、『他人の心が読める』って……」

「そう、ぼくは、他者の視点に立ち、その人の心のうちを、思考を読み取ることができる。ぼくの主観……簡単に言うなら『意識』が、ぼくの身体から抜け出して、他人のものと同化する。その時、ぼくは、その人自身になることができるんだ」

「その人に、なれる……」

 深く噛み締めるようにして、弥生はぼくの言葉を繰り返す。

「それと、もうひとつ」

 右手の人差し指を立て、付け加える。

「これについては、ぼくもどう言えばいいのか、うまく説明できないけど……」

 顔を背け、彼女に向けた視線を下に逸らす。

 見えるのは足元の白い床。ピカピカに磨かれた硬質なタイルが、天井の明かりを反射してまぶしく光る。

(ぼくの身に、何が起きたのか? そして、ぼくは、実際に何を確かめてきたのか……?)

 これまでに自分が体験した不可解な現象を振り返る。無機質な五号室の光景が、照明の照らす淡い色彩の白から濃厚な黒にフェードアウトするようにして段階的にスライドし、目の前に迫る現実は背後にとどまる過去にその行き先を変える。

 ……あの奇妙な感じを、どう形容すればいいのだろう?

 人が眠りにつく瞬間みたいに、ふと、気が遠くなったかと思えば、全身が水の中に漬かるのにも似た妙な浮遊感と共に意識がぼくの身体を離れ、肉体と精神に分離し、『ぼく』という主体から自由となった『精神』は、まさしく魂の抜け殻となった『ぼく』の姿を見下ろし、そして……。

(物理的な制約を一切受け付けない『精神』は、浅間の言う離魂病(りこんびょう)、あるいは夢遊病者のように、ふらふらと、研究所の中をあてどもなくさまよいながら、誰とも知らぬ他人、果ては世界そのものと同化し、本来なら絶対に知ることのないその人の思考や記憶、さらには彼らが属する社会や世界のことさえも、全て、自分のことのように網羅し、見透かす……)

 そう、それは、まるで……。

「――“神の視点”」

 静かな述懐を終え、緊張の糸が張り詰める現実に戻って来たぼくは、そう、息を吐き出すようにしてつぶやくと、床に向けていた視線を上げて彼女を見た。

 目の前には、ちょこんと小首を傾げた不思議そうな面持ちでぼくを見守る、無垢な少女の姿。不意に中断してしまったぼくの言葉の続きを探ろうと、困ったように眉根を寄せている。

 宝石みたいに澄んだ光を湛えた彼女の目を見つめながら、ぼくは大きく息を吸い込み、慎重に声を絞り出す。

「弥生」

 その名をつぶやくと、弥生はビクンと身体を跳ねらせた。

「な、なに?」

 突然の事態に驚く小動物がそうするように両目を見開き、こちらの様子を窺うようにして上目遣いの視線を送る。

「ぼくが今から言うことを、よく聞いてほしい」

「……!」

 語気を強めて前置きしたことで、ぼくが真剣であることが伝わったのだろう。弥生は黙って小さく頷くと、瑞々しく張りのある口唇を真一文字に結んだ神妙な表情で身を乗り出す。

 期待と不安がない交ぜとなった複雑な眼差しを向ける彼女の姿を確認し、ゆっくりと口を開く。

「ぼくの身体から抜け出した意識は、他人と同化し、その人の心のうちが読み取れるようになる。つまり、ぼくの主観は、他人の主観と一致する。ここまでは、いいね?」

「う、うん」

「でも、本当は、それだけじゃない。ぼくは、ぼくに備わった能力は、その人の視点に立ち、心を読み取るだけじゃない」

「え?」

「他者を取り巻く全体的世界……『客観』。ぼくは、その中に暮らす人々を俯瞰する客観的な世界そのものと同化し、彼ら全員の心を見通す、いわば“神の視点”に立つことさえも、できるんだ」

「世界と……同化?」

「ああ」

「ふーん……?」

 一応の説明を受けた弥生だったが、内容が抽象的なだけにどうもピンと来ていないようだ。ポカンとした表情で小首を傾げ、頭上に大きな疑問符を浮かべる。

「わかりやすく言うなら、小説のような感じかな。それも、劇中の出来事や物事を、第三者側から描写したようなやつ」

「えっと、それって……?」

「たとえば、ぼくたちは日記を書いていたよね? 研究所の人間に、毎日、欠かさずつけろって命令されてさ」

「え、ええ」

「それで、日記というのは、その日に起こった出来事を、本人の視点から記述したものだ。『ぼく』とか『私』のような、いわゆる一人称を使ってね」

「あ、ということは……」

 答えが閃いたのか、弥生の顔がパッと華やぐ。

「うん、きっと、弥生が考えている通りだよ」

 笑って頷き返すと、彼女は誇らしげな表情で口を開いた。

「そっか、そういうことね、あなたのその能力って、観客席から眺める演劇みたいに、舞台の上に立つ役者さんを遠巻きに見るような感じで……」

「うん、弥生の言う通り、ぼくは、ある特定の個人の視点に立つだけじゃなく、彼らの行動を望見(ぼうけん)する、いわば第三者の視点から世界を認識することもできるんだ」

 そして、何よりも重要なのは――。

「弥生は、今、ぼくの能力のことを、『観客席から眺める演劇』とたとえたけど、厳密には、それとは少し違うんだ」

「え?」

「なぜ、ぼくが、自分の能力を、小説にたとえたかと言うとね……」

 拍子抜けしたように目を点にする弥生の反応を確かめながら、ぼくは説明を続ける。

「ぼくにはね、わかるんだよ」

「わかる? わかるって、なにが?」

「誰かの視点に立っていなくても、そこにいる人たちの思考が、彼らがこれまでに過ごしていた記憶が、世界の積み重ねてきた歴史が、全て、わかるんだ」

「……歴史が……?」

「たとえば、弥生が言ったように、単に観客席から演劇を眺めているだけじゃ、舞台の上の役者が何を考えているのか、彼ら自身のことは何もわからない。それは演者にとっても同様で、彼らの視点からは観客の思いや感情の動きというのが正確に伝わることはない。そういう意味で、演者と観客は、完全に切り離されている」

「…………」

「けれど、ぼくは、“神の視点”に立ったぼくは、演者とか、役者とかいう、ある種の対立的な縛りや制限が一切なく、全てを把握することができる。誰かの視点に直接立たなくても、その姿を遠目に眺めていても、世界と一体化したぼくは、彼らを取り巻く外的な状況、個々人を他と明確に区別する内的な情報というのを、それが提示される限りは、全て、知ることができるんだ」

 ちょうど、カメラのレンズを絞ったり、緩めたりするのと、似ている。

 美しい山の景色も、ある特定の場所に焦点を当てなければ、ただの一枚の図に過ぎない。結局のところ、山は、山でしかないわけだ。

 でも、ぼくが可能とする認識能力――“神の視点”は、違う。

 山から森を、森から木を、木から枝を、枝から葉を、というように、大から小、群から個、種から類、そして、量から質を、それぞれ独立したものとして取り出しながら、かといって互いを分離させることなく、適切な距離感を維持しつつ自在に場面を切り出し、フォーカスする。

 そして、それが実際に可能なのも、世界と一体化したぼくが、視界に映る全ての人物や物事について概観しているからであり……。

「『彼』や『彼女』といった三人称で語られる小説は、作者という『神』によって造形された登場人物の繊細な心理描写と、その背景にある舞台の詳細な情景描写、このふたつによって成立している。つまり、登場人物による独白や、彼らが属する世界を介してというより、むしろそれらを包含(ほうがん)する『神』を通じて、読者は物語の全容を掴むことになる。ぼくの持つ能力は、それと同じ。当人たちはもちろん、彼らさえも知らないような情報を、“神の視点”に立つぼくは、知ることができる。主観・客観という対立的な境界を設けず、その限界を乗り越え、純粋かつ公平に、世界の姿を見ることができるんだ」

「……それじゃ、あなたは、本当は、わたしが誰かということも、知っていたというの? ……ううん、わたしだけじゃないわ、この研究所にいる人たち……、浅間先生や、春日井先生、拝戸所長のことだって、あなたは……」

「いや、そういうわけでもない。全てを知ることができると言っても、それは潜在的な意味であって、要するに可能性の話だ」

「ん~……?」

「ほら、推理小説を読んでいる読者だって、犯人が明かされるその瞬間までは、確実な正体がわからないだろう? 正確なことは、ただひとり、作者にしかわからない。ぼくもまた、それと同じで、単に“神の視点”に立てるだけであって、別に『神』というわけじゃない。どっちかと言うと、『神』を触媒として世界を認識する読者の存在に近い。そういう意味で、ぼくの立場は受動的だ。なにせ、ぼくが“神の視点”で物事を知覚・認識している際に提示された情報しか、基本的には知ることができないからね」

 実際、ぼくに記憶はない。『神』がその手でページをめくり、ぼくが『神』と同じ視点に立たなければ、その内容は白紙のままなのだ。

 造物主と被造物の関係性。たとえるなら、そういうことなのだろう。

 人間は神に似せて作られ、そして、神に接近するために、一度きりの生涯を過ごす。

 神を通じてのみ、人間は、世界の真理に到達することができる。

 なぜなら、神とは、世界そのものだから。

 ……昔の人々は、確かにそう信じていた。

 そして、現代に生きる彼らも、また。

「だから、ぼくは、部分的には他人の情報を知ることができる。“神の視点”に立ち、ぼくが、神と……世界と意識を融和させ、認識の対象となるその人に向けて焦点を当てている限りは、ぼくは別の誰かの思考を、その内実(ないじつ)を、それら全てとは言わずとも、知る可能性がある」

「…………」

 眉をひそめ、難しい顔をした弥生は、ぼくの言葉を処理しきれないのか、はたまた、どう飲み込むべきか苦心しているのか、伏し目がちに黙り込む。

「こんな話、自分でも馬鹿げていると思う。あまりにも荒唐無稽(こうとうむけい)で、子供じみて、おまけに、超が付くほど非論理的だ。信じろという方が無理がある」

 実際、精神異常者の戯言と退けられても文句は言えない。ぼくが逆の立場だったら、そんなことを言う人間の正気を疑い、脳がイカれてしまったのかと呆れ果て、冷たく白眼視(はくがんし)しているところだ。

「けど、どうか、信じてほしい」

 すがるような気持ちで懇願する。

「さっき、弥生は、ぼくに『研究所の人間のことを知っているのか』と言ったけど、この質問にぼくは『YES』と答えることができる。ぼくは、この五号室にいながら、“幽体離脱”に似た現象によって“神の視点”を借り、いろいろなものを見てきた。研究所の人間が何を企み、どんな思惑を持ってぼくたちに実験を施しているのか。No.1やNo.2、そして、きみに、どんなひどいことをしたのか。彼らの目的は何なのか。実際に彼らの視点に立ち、時に概観し、様々な情報を手にしたんだ」

「…………」

「だからこそ、ぼくは、ぼくたちは、絶対に、この研究所から脱出しないといけない。連中は、ぼくたちを単なる道具としてしか見ていない。利用するだけ利用して、用済みになったらゴミ箱にポイって寸法だ」

「…………」

「弥生も知っているだろう? あいつらの非情さを、血も涙もない非人道的なやり口を。No.1とNo.2を殺し、ぼくの記憶を奪い、きみを奴隷同然として扱う。許せない、許せるわけがない、許していいはずが、ない」

 自然と気持ちに熱が入り、感情が高ぶる。

「これ以上、やつらの好き勝手にさせちゃいけない。ぼくたちから自由を取り上げ、思考を抑制し、行動を束縛する。そんなことは、もう、たくさんだ。このままやつらの言いなりになる理由なんて、ぼくたちの方にはどこにもない、そうだろう?」

 俯き加減で居尽くす弥生を見据え、一層、声を張り上げる。

「そうだ、ぼくのこの能力があれば、連中の思惑を出し抜くことができる。この悪夢を終わらせることができる」

「…………」

「でも、ぼくひとりだけじゃ、無理だ。ぼくだけの力じゃ、ダメなんだ。それじゃ、全然、足りないんだ」

 握りこぶしを作り、ギュッと唇を噛む。

「じつを言うと、ぼくだって本当は怖い。口では偉そうなこと言ってるけど、それは恐怖の裏返しで、要するに、ただの強がりだ。もし、脱出に失敗したらと考えると、それだけで足がすくんで動けなくなってしまいそうだよ。今だって、ほら、こんなに手が震えている」

「あ……」

 緊張に汗ばんだ手を開いて弥生に見せると、彼女は驚いたようにして小さく声を上げた。

 まるで寒さに凍えているかのようにぶるぶると震えるぼくの右手。理性ではどうにもならない本能的な恐れが、超然としたぼくの態度が皮相な虚勢だと簡単に暴く。

「見ての通り、ぼくは、弱い人間だ。風が吹けば倒れ、ほんの一滴の水で溺れてしまう、虚弱で、惨めな、ひとりじゃ何もできない、ちっぽけな存在だ」

 差し出した手を痛ましげに見つめる弥生。口では何も言わずとも、ぼくを心配しているのが伝わる。

 彼女の視線が、悲しげな表情が、否が応でもぼくを奮い立たせる。

「でも、それでも……」

 ありったけの勇気と共に、ぼくは声を絞り出す。

「ひとりじゃ無理でも、ふたりなら……、きみと一緒なら、不可能だって可能に変わる。この先、どんなことが何が待ち受けていようとも、恐れることは何もない。ぼくは、そう信じてる」

 もう、無我夢中だった。弥生の反応を確かめる余裕さえ、なくなっていた。

 理屈ではない、もっと別の、形容しがたい大きな衝動が、ぼくを突き動かす原動力となり、全身を支配する。

「だから、どうか、ぼくに協力してほしい。弥生の力を、貸してほしいんだ」

「わたしの、力を……?」

 顔を上げた弥生が、怯えたような表情でぼくを見る。その目には、うっすらと光るものが湛えられていた。

 照明の明かりを強く照り返す彼女の輝く目を見ながら、ぼくは小さく頷く。

「ぼくには、ここから出るだけの力さえない。弥生の助力がなければ、この五号室からも出ることができない。研究所を脱出するなんて、夢のまた夢だ」

 そう言って、頭を下げる。

「ぼくには、きみの力が必要なんだ。どうしても……」

 どうしても……。

「弥生……、お願いだ」

 永遠とも思える一瞬の沈黙があった。

 ぼくの右手が、何か、柔らかくて温かいものに包まれた。

 気持ちが落ち着く心地よい感触に誘われるようにして、ぼくは顔を上げる。

 目の前には、弥生の優しい笑顔。

「うん、いいよ……」

 穏やかな声。

 彼女が、震えるぼくの手を握ってくれていた。

「わたし、信じるから」

 確かな芯の強さを感じさせる凛とした口調と、真剣な目つき。

 わずかに揺れる瞳の中に、大きな決意と覚悟が見えた。

「あなたのこと、わたし、信じてる」

「……弥生……」

 どうして? と問う前に、彼女が言う。

「だって、あなたは、わたしを信じてくれたから。傷付くのが嫌で自分の殻に閉じこもった卑怯者のわたしを、怖い大人の言いなりになるしかなかった臆病なわたしを、全部、見つけて、そして、認めてくれたから。……本当に、わたしの心の中を覗いてきたような、そんな気が、するから」

「…………」

「ひとりじゃ何もできないのは、あなただけじゃない、わたしも同じ。だから、わたしも、あなたを信じるの」

 ぼくの手を包む五指に力がこもる。

「わたしも、あなたが……あなたさえいれば、自分に対して正直でいられる、素直になれるの……。現実を受け入れ、弱い自分をさらけ出して、それで、一緒に戦おうって、そう思うことができるのよ……」

「……そっか」

 彼女の柔らかな手を、ぼくも握り返す。

「じゃあ、ぼくたちは、一緒だ」

「……うん、一緒よ」

 視線を重ね、頷き合う。

「一緒に協力して、ここから脱出しよう……絶対に」

「……ええ、絶対に」

 そう言って微笑む彼女の表情は力強く、また、頼もしい。

 非道な大人に対して無力におびえる人形じみた少女の面影は、すでにそこにはない。

 ぼくのそばには、ぼくと思いを同じくする、ただ、ひとりの『人間』の姿があった。

 ぼくと彼女は、同じ世界にいる。

 決して、分離してなどいない。

 しばらく、ぼくと弥生は、お互いの体温を通じて心を通わせ、見つめ合っていた。

 ぼくと彼女が、ともに同じ世界にいることを確認し、これを証明するように。

 脱出の時間が来る、その時まで。

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