第百二十二話 改元
翌日、山南の葬儀がしめやかに行われ、遺体は光縁寺に埋葬された。
山南敬助の死を堺に、新選組は内部から少しずつ瓦解することになる。
2月28日、西本願寺門跡使が新選組の屯所移転願いを了承。
ついで3月10日、西本願寺の北集会所に新選組屯所を移した。
それから・・1年の月日が経った。
慶応2年
春
京のあちこちで、桜の花が咲き始める。
西本願寺の太鼓桜の外から笛の音が聴こえる。
京で耳慣れない曲だ。
「環!」
境内の方から手を振ってやってくるのは薫だ。
髪が春の風になぶられ流されている。
環が笛を吹くのを止めて振り返る。
「もう戻ろうよー」
薫が顔にかかる髪を押えながら声をかける。
「今日、沖田さんが道場で稽古つけてくれるって」
「へぇー・・ホント?」
環がゆるやかに笑う。
あれから1年。
薫と環とシンは、江戸時代の京で暮らし続けている。
ゆるやかで変わらない、同じ日々の繰り返し。
彼らの身の上に思いがけない事件がまた起きるのは、まだ先の話である。
そして・・
この時すでに、薩長同盟が取り交わされていることを幕府側はまだ知らずにいた。
【花さそふⅠ ~京都動乱編~ 完】