四人目
遅くなりました。
次の日。連絡を送った家から、大量の荷物が届いた。ちなみに、届けたのも手紙に同封した式神た。
目の前には、大量の布、布、布。色鮮やかな糸に、針が五、六本。
「さあて。これから大忙しよ!若菜!準備はいい?」
「ん。いつでも大丈夫。」
「よっし!」
文は、若菜から五枚の式神を受け取ると、一枚につき一本の髪を結びつける。それぞれに名前を書きつける。
一枚目には、自分の名を、
二枚目には、青葉
三枚目には、清水
四枚目には、若菜
五枚目には、また清水の名を
「じゃあ、ちょっと離れててね。
ーーーーー急急如律令!!」
瞬間、文の髪が一瞬浮いた。すると、そこには文がもう一人立っていた。
「いつ見ても慣れないね。この自分の式神ってやつは…」
「文。早くしないと間に合わない。」
「へいへーーい」
若菜に急かされ、文は次々と式神を顕現させていく。
どうして彼女がこんなことをしているのかというと、明日にさしせまった宴の準備の為だ。
明らかに間に合う日程ではなかった。だが、それは四人で準備した場合だ。
また、誰かに頼んだとしても自分達と同じ早さで動けはしない。
だがもしも、自分が二人いたら。それが休息を必要としない存在だったら。
作業効率は、二倍以上に跳ね上がる。
「さて!私と清水三人は縫い物するわよ!昨日のはもう仕上がったから、最後の一張羅。何が何でも縫い上げるのよ。」
針仕事が得意な清水は、特別に二人に増やして着ていく着物を縫い上げる。
文も幼い頃、清水に教えられてそれなりの腕にはなった。
基本的に、縫い物はもっぱらこの二人で行っている。
「文様。私は明日に使える歌を書けばいいのですね?」
「今の季節に使いそうなものを、こっちの私と書き上げて。私と同じ知識を持ってるから、けっこう使えるはず。」
青葉は歌が得意だ。文はみっちりと勉強して、技巧的に作りだす歌ならば、青葉は天性の才能で創りだす歌だ。
いくら勉強しようとも、彼女のセンスだけは真似られない。だが知識は文の方がある。
というわけで、宴や継母様に送る手紙には二人で合作した歌が使われている。
もちろん、青葉が恋文を送るとなったら協力は惜しまないつもりだ。
「文。」
「若菜は休んでていいよ。これ作るのにかなり力使ったでしょう?」
「平気。動ける。」
「だめ。顔色悪いもの。午後になったら起こすから、今は寝てて。」
妖さえも裸足で逃げ出しそうな顔色をした若菜を無理やり休ませる。彼女の仕事はしばらくない。今は、休息の時だ。
「いよっし!やるよ!」
文は思いきり自分の頬を叩いて気合いをいれた。
次の日。連絡を送った家から、大量の荷物が届いた。ちなみに、届けたのも手紙に同封した式神た。
目の前には、大量の布、布、布。色鮮やかな糸に、針が五、六本。
「さあて。これから大忙しよ!若菜!準備はいい?」
「ん。いつでも大丈夫。」
「よっし!」
文は、若菜から五枚の式神を受け取ると、一枚につき一本の髪を結びつける。それぞれに名前を書きつける。
一枚目には、自分の名を、
二枚目には、青葉
三枚目には、清水
四枚目には、若菜
五枚目には、また清水の名を
「じゃあ、ちょっと離れててね。
ーーーーー急急如律令!!」
瞬間、文の髪が一瞬浮いた。すると、そこには綾がもう一人立っていた。
「いつ見ても慣れないね。この自分の式神ってやつは…」
「文。早くしないと間に合わない。」
「へいへーーい」
若菜に急かされ、文は次々と式神を顕現させていく。
どうして彼女がこんなことをしているのかというと、明日にさしせまった宴の準備の為だ。
明らかに間に合う日程ではなかった。だが、それは四人で準備した場合だ。
また、誰かに頼んだとしても自分達と同じ早さで動けはしない。
だがもしも、自分が二人いたら。それが休息を必要としない存在だったら。
作業効率は、二倍以上に跳ね上がる。
「さて!私と清水三人は縫い物するわよ!昨日のはもう仕上がったから、最後の一張羅。何が何でも縫い上げるのよ。」
針仕事が得意な清水は、特別に二人に増やして着ていく着物を縫い上げる。
文も幼い頃、清水に教えられてそれなりの腕にはなった。
基本的に、縫い物はもっぱらこの二人で行っている。
「文様。私は明日に使える歌を書けばいいのですね?」
「今の季節に使いそうなものを、こっちの私と書き上げて。私と同じ知識を持ってるから、けっこう使えるはず。」
青葉は歌が得意だ。文はみっちりと勉強して、技巧的に作りだす歌ならば、青葉は天性の才能で創りだす歌だ。
いくら勉強しようとも、彼女のセンスだけは真似られない。だが知識は文の方がある。
というわけで、宴や継母様に送る手紙には二人で合作した歌が使われている。
もちろん、青葉が恋文を送るとなったら協力は惜しまないつもりだ。
「文。」
「若菜は休んでていいよ。これ作るのにかなり力使ったでしょう?」
「平気。動ける。」
「だめ。顔色悪いもの。午後になったら起こすから、今は寝てて。」
妖さえも裸足で逃げ出しそうな顔色をした若菜を無理やり休ませる。彼女の仕事はしばらくない。今は、休息の時だ。
「いよっし!やるよ!」
文は思いきり自分の頬を叩いて気合いをいれた。
~作業開始から半日後~
「清水ー。休憩にしな…」
「姫様?手が動いていませんよ。さっさとそれ縫い上げて、こちらを手伝ってください。」
「そうですよ。いつも式神使って楽しているんですから、これくらいは…ねぇ?」
「休憩なんて早すぎますわ。それに、文様の手が一番遅いのですよ?分かっておられますか。」
「………はぃい(´;ω; `)」
黒い笑いを浮かべる三人の清水に囲まれ、ちょっぴり泣きそうな文。一人でさえ勝てるはずがない清水が三人もいるのだ。結果はおして測るべし。
「あーおーばー。休まない?休憩しない?頭つかれた。」
「まだ十五句しか出来上がってませんよ。あと何句創ると思ってるんですか。休憩なんてなしです。」
「か、かくなる上は!前意ある撤退…ってあれ?」
「逃げられないように、漬物石をちょっと…」
「鬼畜外道ーーー!!!!」
~日暮れ~
「そ、そろそろ式神がきついんだけど…?」
「我慢してくださいませ。」
「そんなことよりも、姫さまの本体と式神を変えてください。作り終わりましたから暗誦しなくては。」
「鬼火、呼び出しておく。これで一晩中作業できるでしょう?」
「(´;ω; `)」
~深夜~
「よっしゃ夜がきたぁぁぁあ!!!」
「姫さま…ついに頭の方が…」
「違う、清水。"しんやてんしょん"っていう病気。文がそう言ってた。」
「姫さま。早く覚えてください。いい加減眠いのです」
「いやっほぉぉぉおおう!!」
「「「聞けよ。」」」
~そして明け方~
徹夜明けの目に、伸びやかな朝の日差しが突き刺さる。レポートがあるたびに徹夜を繰り返していた文は、その懐かしい感触に胸をつまらせる…ことはなく。
屠殺五秒前の豚のような悲鳴をあげて、自分の髪に顔を突っ込んだ。
「煩い。」
心の底から厭そうに顔を歪めた若菜に目を向けず、文(本体)と文(式神)は床をゴロゴロと転げ回る。
「バルス!!」
「目が、目がぁぁあ!」
「「ふははははははゴフッ」」
調子よく転がりまわっていた文は、漬物石に頭を強打して失神した。
その横には、なぜか清水の名前が書かれた式神の紙が落ちている。
「青葉、姫様はお疲れのようだから掛布を持ってきてくれない?」
「は、はい…」
にっこりと笑う清水に戦慄を覚えながら、青葉は文自作の掛布を取りに行った。
掛布は、暑さにも寒さにも弱い文が作ったものだ。本来、この時代にはなかったものだがあまりの寒さに耐えきれなかったのだ。
痛みで失神したわりには気持ち良さそうな寝顔を見せる文に苦笑し、青葉は静かに掛布をかけた。
「おやすみなさいませ」




