二人目
あの後気がついたら赤ん坊になっていたわけだが、そこからの羞恥プレイの連続は割愛しておく。
前世、私は花の女子大生ってやつであった。だがあのクソ神のおかげで現在は嫁きおくれのニートまたは高等遊民etc…
まぁ、端的にいえば無職で親のすねかじってるダメ人間なわけだ。
早く結婚しろ?いやぁ、無理っしょ。だって奴らは私の死んだ母親の血筋が欲しいだけでしょ?
だって皇族だもの。ま、皇族といっても私の二代前、つまりお祖母様が内親王だったんだ。それにもう落ちぶれた家だし。父に引き取ってもらってこの家に後妻達と暮らしてるけどそこまでいい家って訳でもないしね。
つまり。血筋は最高級だけど家柄はまあまあ。三人目くらいの妻にはちょうどいい訳。ふ・ざ・け・ん・な☆
だぁれがお前ら顔面偏差値30以下どころか測定不能のおかめもどき(笑)と結婚式するか!せめて中身イケメソになってから出直せぃ!ってことで結婚はしたくない。
ま、こんなこと口が裂けても継母様には言えないけどね。あの人私のこと嫌って早く結婚しろってうるさいし…。
そんなことを考えながら、ころりと転がる。文にとって継母は嫌いではない。びっくりするくらいおかめだけど、夫が違う女に産ませた女だ。憎んでもいいはずだ。けどあの人は文を見捨てずに育て上げた。
父親は母に生き写しの文を見るのが辛いらしく、家には帰ってもほとんど顔を合わせたことがない。
「ったく、橘の奴め。何が結婚する?だ。自分だって結婚してないくせに…」
先ほどの手紙は、幼馴染の橘からだ。生まれた時から、すでに20年ほどの記憶があった文は、子供らしくない子供であった。
暇があれば本を読み、字の練習をし、ひたすらに勉強ばかりしていた。
文にとっては、日本文学科の学生であった頃の好奇心をみたす行為だった。
ある日、家中の書物を読みつくした文は父に書物をねだった。
生まれて始めてのおねだりに、張り切った父は書物ばかりではなく、学者の部下から好きな本を借りても良いと文に伝えたのだ。その時に、歳が近いからと連れて来られたのが橘だ。
文よりも三歳ほど年上だが、精神年齢ン十歳の文にとっては子供も同然。
だが、さすがは学者の息子。文が知りたい知識はある程度持っている。
また橘は、そのずば抜けた頭脳のために、同じような年齢で勉強で張り合える仲間がいなかった。
結果、彼らは子供ながら純粋にギブアンドテイクの関係で仲良くなったのだ。
「けどこんな辺鄙な所にくる人なんめいないしなぁ。」
橘はその能力を買われて、13歳から父親の手伝いをしている。確か書庫整理や、本の捜索を仕事にしてた筈だ。
文は筆記用具を片付けると、行儀悪くこてりと転がった。
艶やかな髪が少し古ぼけた着物の上に散らばる。化粧も着飾ることも嫌いな文だが、髪だけは大切にしたせいだ。
まぁ現代人の習慣として、綺麗好きな所が大きかったが。
当時の女性は、あまりの髪の長さに洗うと一切動けなくなる。その為に月に一度程度しか風呂には入らなかった。だが、毎日入浴していた者にとってはあまりに少なすぎる。
文の体力と周りの労力的に、入浴は頑張っても週に一度。だが、文はその上毎日濡れた手拭いで髪や体を拭いていた。
彼女の顔立ちは、可もなく不可もなくといったものだった。だがその髪の美しさと手の優雅な事から、それなりに名の知れた姫として有名であった。
本人は預かり知らぬところであったが。
季節は春。まだまだ寒く、雪も外に積もっている。外出は当分できそうに無く、彼女は憂鬱そうにため息をついた。




