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四十八

船を走らせ鹿島神宮へと向かう。

走っている最中何かが飛んで来て、突然船に突っ込んで、船を破壊した。


「なに?」

「........」


船に降り立った何かは、いつかに見た傀儡だった。


「ここから先は、武甕槌様の領土。下賤の者よ。さ...」


圭二は傀儡の喋っている内容を聞かずに、傀儡の頭を拳一発で破壊した。

もう傀儡に苦戦していたあの頃の圭二はいない。


「もうちょっと話聞いてあげても...」

「聞いてもやる事は同じだ。そんな事より、もうすぐだ」

「うん」



船は鹿島神宮の手前で留まった。

圭二は船の縁に立ち、下を見下ろす。

すると、鹿島神宮の前に堂々と立っている武甕槌が圭二たちの船を眺めていた。


「........」

「........」


圭二と武甕槌はお互いを確認して睨み合う。

圭二は、船から飛び降り武甕槌の前に立った。


「随分と、強くなったみたいだな。壱の神使」

「........」

「ん?腰に巻いているのは、あの日の壱の着物か?ふんっ、偽物の神のあやつをなぜそこまで慕えるのか理解に苦しむな」


武甕槌は、圭二の前で自分が殺した壱を嘲笑する。

すると、圭二がそれに反応した。


「だろうな。あんた程度の器で理解出来るほど、壱様は浅くない」

「私程度の器...だと?私の器の大きさなど、貴様に分かると?」

「悪いな、あんたとお喋りしに来たんじゃねぇんだ。さっさとやろうぜ」

「死に急ぐか、それもやむなし...。きさ...ぐぉっ!」


圭二は一瞬で武甕槌の懐に移動して、強烈な回し蹴りを見舞った。

武甕槌は咄嗟のことで避ける事は叶わず、モロに蹴りを喰らい鹿島神宮の社を破壊しながら吹き飛んだ。


「お喋りしに来たんじゃねぇ、そう言った」


吹き飛ばされた武甕槌は、ゆっくりと立ち上がり、瓦礫を撒き散らして出て来た。


「死に急いだ上に、身分も弁えぬ小僧が...格の違いを思い知らせてやろう」


そう言った瞬間、武甕槌が纏う空気が豹変した。

さらに先程まで晴れ渡っていた空が、分厚い雷雲に覆われた。初めて戦った時とはまるで違う空気だった。

だが圭二は焦るそぶりも怯えるそぶりも見せず、表情一つ変えない。


()くぞ」

「さっさと来い」


武甕槌は一瞬で圭二の足元まで移動して、両足で圭二の顎目掛けて蹴りを入れる。

圭二はそれを最小限の動きで避けて、後ろへ跳ぼうとした瞬間、まるで何かに足を掴まれたような感覚に陥り、地面から足が離れなくなっていた。


「っ!?」


すぐに足元を見ると、地面にある大量の砂が集まり、圭二の足に巻き付いていた。


武甕槌は動けない圭二の腹部を、思いきり蹴り飛ばし、圭二は吹き飛ぶ。

地面を駆けずり回りながら吹き飛ばされ、圭二はその中でもなんとか体勢を立て直し立ち上がる。


もう一度自分の足元を見るが、さっきの砂は見当たらない。

そんな圭二を見て、武甕槌は小馬鹿にした様に圭二に話しかけた。


「何が起こったか分かるまい?」

「........」

「私の能力は雷、即ち電気だ。ならば、地上の砂は全て私のものだ」


圭二は薄々勘付いていた事に、武甕槌の言葉をきっかけに完全に合点がいった。


(砂鉄か...)


武甕槌は、電気によって地上にある砂鉄をかき集め、操り、圭二の足を固定させたという訳だ。


(だが、砂は砂)


武甕槌は砂を操り、圭二に向かって動かした。

だが、動きは遅い。その上、地面にある砂が全て砂鉄な訳がないのだから、攻撃を防ぐ盾になるほど厚くもない。


圭二は武甕槌の後ろに回り込んだ。

気付いた武甕槌が、振り向きざまに裏拳を繰り出してきた。圭二はそれを受け止め、隠し持っていたワイヤーで武甕槌の腕を絡め取る。


「む?」


圭二はそのあと武甕槌を蹴り飛ばした。

だが、圭二はここでワイヤーを引っ張り、武甕槌をもう一度自分の元へと手繰り寄せた。

そのまま圭二は助走して、飛び蹴りで武甕槌の脇腹を思いっきり蹴り飛ばす。


「ごふっ...!」

「おらぁっ!」


圭二は蹴り飛ばし、ワイヤーも切っておく。電気を流されると厄介だったからだ。

蹴り飛ばされた武甕槌は、地面に仰向けになって全く動かない。


「........」


パシュンっ、、、。


「がっ...!」


一瞬何が起こったか圭二は理解できなかった。

視界にしっかり入れていたはずの武甕槌が消えて、右脇腹に突然のダメージ。そのまま吹き飛ばされてしまった。


「かはっ...!くっ...あ...」


痛む脇腹を抑えながら自分のいた所を見ると、そこにはこちらを見ずにぼーっと立っている武甕槌がいた。


武甕槌が一瞬で移動して、圭二の右脇腹を蹴り飛ばしたのだ。

一瞬で移動と言っても移動しているのが『見えていた』、見えていたからこそ避けられた。だが、今回は一瞬も見えなかった。気付いたら蹴られていた、そんな感覚。


(一筋縄じゃ、いけないわなぁ...)


圭二は立ち上がり、臨戦体勢をとった。

だが、武甕槌はそれをあざ笑うかの様に圭二の真横に立ち、耳打ちをした。


「小僧、言ったであろう?格の違いを見せてやると...」


圭二は武甕槌を殴ろうとしたが、また消えてその拳は空を切った。


「これから先の戦い、いくらでも観察し、学び、理解しようとしてみろ」

「........?」

「理解など出来ぬ。神の戦いとは、理解の範疇を超える。全てが規格外。まして私は武神・武甕槌。貴様程度の器で、理解など出来ることは、何一つ無い」



武甕槌は、まるでもう勝ったかのように圭二にそう告げた。


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