正木君の妄想が止まらない②
そう…僕は遂に真実にたどり着いた。
白石拓哉は異世界からの転生者なんだと。
こちらの世界から異世界移転すると言う事は…当然、その逆もありうると言う事だ。
つまり、白石拓哉は異世界人なんだ。
しかも、前世の記憶を持ったまま、この世界に転生してきたのだ。
そして彼は、この世界が前世でハマっていたゲームに似た世界だと気付く。
彼はゲーム知識を活用して、重要なアイテムを手に入れたんだ。
そればかりか、この物語のメインヒロインの中森美鈴さんに近付き、闇精霊の力を使って美鈴さんを幻惑したのだ!
何て卑怯な奴だ!
白石拓哉!
真面目な僕を差し置いて、抜け駆けするなんて…チキショ~!
まさか!?
僕が勇者になる為に必要なアイテムまで、横取りしてないだろうな?
もし、そうなら許さない!
…女神様!奴に天罰をお与え下さい!!
ふふふ。
きっと強制力が働くハズだ。
女神様が描いたストーリーと違うからな。
僕は何冊もライトノベルを読んで、知識が豊富だ。
だから知っている。
今に見てろよ、白石拓哉!
お前を“ざまあ”するのが、今から楽しみで仕方ない!
ふふふ。
★★★★★
やっと美鈴さんと白石が帰ってきた。
僕の美鈴さんに、闇魔法とか掛けて無いだろうな?
僕が白石を睨んでいると「ダンジョンスタンピードが起こるから、場所を移動するよ!」と白石が言う。
そこで僕は気付く。
白石の奴は、闇精霊の力を使い、こちら側のダンジョンでも、ダンジョンスタンピードを起こすつもりだな!
ふふふ。
今回は僕が白石を出し抜き、そしてヒーローになってやる!
楽しみになってきた!!
美鈴さん!僕の活躍を見ていて下さいね!
そして目を覚ますのです!!
★★★★★
この広い階層から撤退する事になった。
両側が絶壁で、赤茶けた道の階層まで戻ってきた。
この場所は一本道。
背後から魔物の挟み撃ちになる心配も無い。
白石!僕の為にお膳立てをありがとう!!
僕は初めて心の中で、白石にお礼を言った。
ふふふ。
ここで僕は、白石を出し抜き大活躍するのだ!
魔物達よ!早く来い!!
お前達は僕の経験値になるのだ。
暫くすると、支店長が探索者達を引き連れてやって来る。
白石が支店長に「魔剣を使って魔物を倒すと話していた。だから、他の探索者達が僕の前に出ない様にして欲しい」と。
魔剣だと!!
前世の知識を使って抜け駆けし、そして手に入れたんだな!
僕にはお見通しだ!!
白石!お前は僕を差し置いて、また、自分だけがヒーローになるつもりなんだろう?
そうはさせないぞ!
ヒーローになるのは、この僕だ!
僕は最前線で魔物の討伐をさせて欲しいと支店長に頼む。
しかし支店長は、ダメだと言う。
何でだよ!
ここは僕が活躍する場面なんだよ!
空気読めよ!支店長!
バカじゃないのか?
僕は何度も支店長に抗議した。
しかし支店長の決定は覆らない。
僕が粘っていると梓がやってくる。
「勇気!皆の邪魔になってるじゃないの…空気を読みなさい!早く後ろに下がるの!!」
そして僕は、工藤の兄貴と孝之に羽交い締めにされ、一番後ろに引きずられて行った。
何で分かってくれないんだよ!
白石は闇の精霊使いで、しかも裏技を使い、魔剣まで手に入れたラスボスなんだよ!!
仕方ない…真実を伝えるしかないな…
僕はパーティーメンバーを集める。
そしてメンバー全員に真実を伝える事にする。
真実を知れば、メンバー達の目も覚めるだろう。
「良いか…みんな。良く聞くんだ!実は…白石拓哉は異世界からの転生者なんだ!そして前世の知識を使って……」
「どうだ!あいつが如何に危険な存在か、分かっただろ?」
暫く沈黙が続く。
みんな真実を知って動揺しているようだ。
人は見掛けによらない。
みんな白石の見た目に騙されていたと、やっと気付いたんだ。
暫くして、やっと梓が口を開く。
「何をバカな事言ってんの?頭おかしいんじゃないの?話になんない!」
ちょうど、ダンジョンスタンピードが終わったタイミングだった。
そして梓は「バカバカしくて付き合ってらんないわ!孝之!魔石拾いに行くわよ!!」
そう言って、孝之を連れ魔石を拾いに行ってしまった。
僕は静香さんを見る。
すると静香さんと目が合う。
静香さんが「工藤君!私達も魔石拾いに行くわよ!」と言う。
「でも俺は…甲冑が邪魔で、魔石を拾えない…」
「良いから、来なさい!!」
工藤の兄貴が静香さんに怒られた。
そして工藤の兄貴まで静香さんに連れられて、魔石を拾いに行ってしまった…
そして僕はボッチになった。
くそー!
何で分かってくれないんだよー!
白石拓哉は異世界からの転生者で、ラスボスなんだよー!
ボッチになった僕は、地面に座り込む。
近くに落ちていた小枝を拾う。
そして僕は地面に“バカ白石”と悪戯書きをした。




