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朝の1番歌  作者: 睦月微糖
5/8

金銭感覚狂ってます

榎本の車に乗せられ無理矢理連れてこられたのは、いかにも高そうな衣服が並んでそうな雰囲気がする店舗。後部座席の窓越しに張り付きその店舗を眺めてると、先に車から降りた榎本が後部座席のドアに開けた。




「足元気をつけて」


「あ、ありがとうございます…」


「いえいえ〜…じゃ、行くよっ!」


「ほ?え、ちょっ!!?」




車を降りた瞬間急に体が宙に浮いた、かと思えば榎本が一歌をお姫様抱っこをしだしては店舗へ走り出した。普段だったら通行人の目などでかなり恥ずかしい事だが、榎本の素早さで息継ぎがまともに出来ないし、何より目を開けられない。




下手したら魂ごと飛んでいきそうな強風を浴びながら、一歌は榎本にしがみつき店舗へと入店したのであった。




〜〜〜〜〜〜




「ふむふむ、なーるほどねぇ」


「…うぇぇ」




榎本が女性物の衣服を吟味している中、一歌は靴の試着の為に設置してある椅子に腰掛けて死にかけてた。




満面の笑みをうかべた榎本&その腕の中で意識朦朧となりつつ唸り声上げた一歌が来店した時の店員の表情はこの世のものを見たとは思えないほどの怯えた顔だったが流石接客のプロ、直ぐに表情を戻し榎本の要望通りのエリアに向かわせたのである。(途中で風のように逃げ去ったが)




「おー!一歌一歌、これなんてどう?」


「…んえ?」




気持ち悪さが徐々に治まってきた一歌が顔を上げれば、いかにも水商売のお方が着てそうな露出度が高いゴールドのドレスを手にした榎本が立っていたので一旦顔を伏せる。




「ねぇ一歌、どうよ?こんな服着て乗り込んだら敵さんイチコロよ!」


「…却下です」


「えぇー!エージェントみたいでかっこいいと思うのに…」




ドレスを抱え渋々と別の所へと足を進める榎本を横目で見つつ"せっかくだから自分で選んだ方が良いのかもしれない…"とその場から立ち上がり、フラフラと店内を彷徨っていると"在庫処分セール"と書かれた紙が貼られたワゴンが目に止まった。




「…」




ワゴンに近づき中を覗く。

今の所、気になる物が見つからないのでゴソゴソと中に手を突っ込むとズボンの様な感触がしたので引っ張り出すと出てきたのはカーキカラーの少し大きめサイズのカーゴパンツ。




「これだったら動きやすそうだしお値段は…うわっ、やっす!!」




"在庫処分セールだからと言ってもこれほど値下げしても良いものなのか!?"




更に手を突っ込んで中を探り、引っ張り出すと次に出てきたのは黄色のパステルカラーのシンプルなスタジャン。




1番目と2番目に出てきた、これらのシンプルなデザインが気に入った、という理由で購入を決意した一歌はカーゴパンツとスタジャンを腕に抱えてレジへと向かおうと向きを変えた瞬間




「あれ?一歌、そんなのでいいの?」


「あ、榎本さん」




ワゴンの後ろの商品棚から榎本がヒョコと顔を出す。




「はい、この服とズボンがなんとなく…可愛いなぁと思って」


「そっかそっか、直感ってのも大事だからね」


「あっ!」




いつの間にか一歌の背後に回り込んでいたのか、一歌の腕から服を取り上げると抱えてた大量の煌びやかな服達と一緒にすると颯爽とレジの方へと向かっていく。




「え、榎本さんっ!いいですよ!私の服ぐらい私が買いますから」


「いーって!可愛い妹分の仕事着ぐらい買わせてくれよぉ〜」




服を取り返すために榎本を追いかけるが、どんなに追いかけても榎本には追いつかない所かどんどん遠のいていく。足の裏にロケットでもついてるのか!?と心の中でツッコミながら、追いかけっこで切れた息を整えようとその場で深呼吸をしてると両手に大きめの紙袋を手にした榎本がニヤニヤしながら近づいてきたので、睨みつけてやればキャーコワイーと棒読みで返してくる。




「ほら、一歌の仕事着〜…受け取って」




紙袋を目の前に出される。恐る恐る、それを受け取り中を覗くと奥底に丁寧に畳まれたカーゴパンツと黄色のスタジャン、何故か小さな白い箱が入っていた。




「榎本さん、この紙袋に私の物じゃないのが紛れ込んでますよ」


「あー…それ、俺からの一歌へのプレゼント」


「え?」


「とりあえず開けて開けて!」




はしゃぐ榎本に言われちゃ開けるしかない。

仕方なく箱を手に取り開けようとした時、誰かの携帯が辺りに鳴り響いた。




「あ、俺のだわ。ごめん一歌、少し待ってて」


「は、はい…」




ポケットからスマホを取り出すと店内から出て電話を受ける榎本を眺めつつ、箱を開くと中から出てきたのはシンプルなハートの形をしたシルバーのネックレス。箱から取りだし、店内の照明に向けてネックレスを見つめるとハートがキラキラ輝いた。




「おー、お待たせ…お!ネックレス出してくれたのね、なら俺着けてあげる!」


「わっ!」




通話を終えた榎本が帰ってきたかと思えば、颯爽とネックレスを奪っては一歌の首に着ける。白いシャツの上でキラキラ輝くハートを見つめてはウンウン頷く。




「やっぱり若い子がつけるといいねぇ、うんうん」


「あの…これのお代は」


「俺が勝手にした事だから値段の事は気にするなっ!さ、店出るぞ!」


「えぇー…」






榎本に肩を回され渋々店を出た。

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