第1夢 序曲8
ドレミファソラシド~♪という音階を吹く楽器の音が聞こえた。
この音色は、おそらく、クラリネットだろう。
校舎から第一特別活動館、部室棟、第二特別活動館へと続く屋上の方から聞こえてきたからそちらへ行くと、深緑の髪を二つのおさげにして、女子の中では珍しくメガネをかけている少女がいた。
「あ、先生。起きたんですね。おはようございます」
「ああ」
「それにしても、盗み聞きとはひどいですね」
「いや、意図して聞いてたわけじゃ……」
「まあいいです。そんなことは知っています」
だったらあんなこと言うなよ。
「あ、申し遅れました。私は一年の鈴木 真子と申します。以後お見知り置きください」
「よろしくな」
硬いなー。それともそういう子なのか?
「先生、この下は、部室棟なんですよね?」
「ああ、そのはずだ」
「この学校に吹奏楽部しか部活がない今、どのように使われているのでしょう?」
「さぁ。そのままなんじゃね?」
「じゃあ……」
「じゃあ?」
「今から掃除してきていいですか?」
「いやダメだろ。今、部活の時間なんだろ?お前何部なんだよ」
「掃除部です!」
「嘘つけっ。吹奏楽部なんだろテメェ」
「まあいいです。また時間があるときにでもやります」
「そうしとけ」
冗談とか言う子なのか……。
「そういえば、みんな音楽室の方へ向かっていたけど、お前は行かなくていいのか?」
「……そうだったんですね。では私はこれが終わったら行くので、先生は先に行っててください」
「……?ああ」
俺は彼女の言うとおり、先に行くことにした。