第1夢 序曲6
「あー!やっぱり水樹ちゃん、放送室の方に行ってたんだー。放送聞こえたよー!ホント、なんで放送だと普通にスラスラ言えるのに、人と話すときはそんなになっちゃうのー?」
「〝そんな〟とか……言われた。ひどい……。あと、今は……一応、部活、中……だから……〝先輩〟、つけて……」
「はーい、水樹ちゃん」
「……もうっ」
さっきの子と橙色の髪をショートボブにした少女とのチビ同士の会話だった。
そんな女子同士の会話の中に男性が割って入るということは、俺にとっては自殺行為である。
「あっ!先生ー、おはよー。こんにちはー。……あれ?どっちだろ……」
「どっちも……正解……だと、思、う……」
はっ!バレた!……チッ。しょうがねぇ。
「どーも」
「はっ!そうだ!その挨拶があった!」
「……それは……生徒、が……先生、に……する……挨拶じゃ……ない、と思う」
「そうだった!じゃあもう、先生になんて挨拶すればー……」
「……さっきの、で……いいんじゃ、ない?」
「そっか!そうだ!うん、そーだね!そーしよう!んで、先生、倒れたって聞いたけど、大丈夫だった?」
「ああ。もう大丈夫だ」
「そっかー!良かった!あっ!麦の名前は栗林 麦だよ!一年生!よろしくね!」
「ああ。よろしく」
「それじゃ、水樹ちゃんっ。早く部活に戻ろっ」
「部活?」
「うん!麦ら全員吹奏楽部に入ってるの!よかったら見に来てよ!」
「なんで……麦、と……愉快な、仲間たち、風に……なって、るの……。あと……それ……私も、さっき……先生、に……言った」
「あ、そーなんだ!水樹ちゃんも言ってたんだ!仲間だね。イエーイ」
「いや……そう言う、つもりで、で……言ったんじゃ……ない、んだけどな」
「早く行こ行こー!早く行かないと先輩たちに怒られちゃうよ!」
「わ……私も……一応……麦、の……先輩、なんだ、けど……な。せ、先生。すみま、せん……。失礼、します」
「あ……」
風のように階段の踊り場から走り去っていった二人だった。
俺も、とりあえず上の階へと上ることにした。