倍増
「アレ…。アレをやるのか…」
クリスもチャンの言っている「アレ」について把握し、頷いた。
立ち上がり、懐からあの指輪を取りだす。―増幅器―ブースター…光のオーラの絶対量を五倍に跳ね上げる普通ならば考えられない道具。
しかし、彼等はただ光のオーラの量を増幅させるだけではなかった。
彼等は薬指に指輪をはめ、尚且つ二人は右手と右手を合わせる。
ドオオオオオオオオオオオンッ!
すると増幅器によって増幅された光のオーラが辺り一面に発散される。
インフェルノカイザー、距離を置いたダークウルフ、エルリークも眩い光により思わず目を瞑る。
光のオーラは10秒間程度、クリスとチャンの姿が見えない程発散したのち、蝋燭の火が消えるようにスッ、と収束した。
しかし…収束した先に居る人物―それは一人の男だった。
【…上手く言ったようだな】
そこに居るのはクリスでも無くチャンでも無い。別人の男…に見えた。
が、よく見るとその姿はクリスにも似ているしチャンにも似ている。
インフェルノカイザー一同は何が起こっているのか分からなかった。
「なっ…誰だお前…ッ!?」
【私の名はクリスチャン・ディオール!】
「クリスチャンディオール!?どういう事なんや…」
クックッ…とクリスチャンは不敵にも笑った。そして、口を開いた。
【増幅器―ブースター…そのお陰で光のオーラ量を五倍に跳ね上げる事ができる。そして私達兄弟はオーラ量を格段に上げる事により、一体化が可能となった。私はクリスでもあり、チャンでもある…。そして、この姿となった私を止められる者はいない】
「融合…だとォ?!」
ダークウルフは、あの強大な兄弟が更に合体をした事に、驚きを隠せない。
槍術の天才と、光魔法の天才。その二人が融合…。インフェルノカイザーに勝ち目があるのか。
チャンとでさえ押され気味だった覚醒技…それさえも使いきったインフェルノカイザー。ましてやオーラ量五倍かつ、融合をし更に強さを加速させたクリスチャンに勝つ術は、はっきり言って無いに等しいのはダークウルフから見てもはっきりと分かる。
「こいつはちょっとまずいぞ…。おい、ダークウルフ。俺達も行くぞ!」
「えっ!?でもあんなバケモン、俺等で束にかかっても勝てそうにねえぞ」
「そこをなんとかすんだよ!オラァッ!」
ダークウルフとエルリークもカイザーの元へと合流した。
「インフェルノカイザァ!」
地獄の山菜取りで鍛えたダークウルフとエルリークの脚力はまるで馬。ダークホースである。(闇だけに)
ものの数秒でインフェルノカイザーの元へとたどり着く。二人は急に止まろうとし足を地面につけるが、その速さのあまりズザザッ、と地面を滑るようにして到着した。
「ダークウルフ!ハゲリーク!」
「ハゲリークって何だよ!もう完全にハゲだな。まぁいい。お前だけ強くなったと思ったら大間違いだぜ」
エルリークは斧を構えた。そしてドラゴンのオーラを出す。そのオーラ量は前の時よりも遥かに増していた。
同時に、ダークウルフも闇のオーラを出す。インフェルノカイザーよりは小さな闇のオーラ量だが、それでも前よりかは増大している。
【雑魚が二人増えたところで、貴様等に勝ち目はないわ。消し去ってくれる…】
クリスチャン・ディオールは空間から光の槍を取りだす。が、その光の槍はとんでもないものだった。
ゴゴゴゴゴ…
「な、なんぞあれ…」
エルリークはあまりの驚きに開いた口がふさがらない。何故かと言うと
それは槍というか…柱である。
その光の槍は槍というにはあまりに太すぎた。チャン・ディオールが空間から取りだした時の光の槍よりも体積が5倍程に膨れ上がっている。
「あんなの槍って言わねえぜ…。それも、光のオーラも比例して増してやがる」
その光の槍を軽々と手に持ち、クルリ、と三回転回し、チャンディオールはその槍の矛先をインフェルノカイザー達に向けた。
三人は戦慄する。こんな槍に貫かれたら、大穴が開くと言うより跡形も無く消し去られそうな感じだった。
「ハゲ!ウルフ!…こいつはかなりヤバイ…。マジで行くぞ」
インフェルノカイザーも今までとは違う。冷や汗が流れ、死の危険を感じていた。
覚醒も使えないため、これからは普段の闇のオーラで戦うしかない。三人は構えた。
【穿け…グングニル】
ゴオオオオオン
その柱のような槍を容易く投げつける。
柱は空間を切り裂き、飛行機雲のように光のオーラをふりまきながら、インフェルノカイザー目がけて飛んできた。
「黒転移」
シュンッ!
カイザーの姿がそこから消える。消えた直後にその空間に太い柱が通りすぎる。
「ハッ!!」
「あぶねえっ」
ダークウルフ、エルリークも鍛えた脚で地を蹴り、宙へエスケイプ。そして、柱を避けた。




