謎を解くのが名探偵
「・・・なるほどな。ポラリスは一族に伝わるヤバい予言に対抗する為この世界に変革を促そうとしたっちゅーワケや。だからあの時”星の核”とやらを欲してたんやな」
ガーストはダーク・ウルフから語られた話の内容を整理する。
あの時、ガーストとフープはダークネス・ダーク・タワー下層部でポラリスと鉢合わせた。
その際は敵対し、排除されそうになったがその裏にあるポラリスの心理を初めて理解する。
「まぁ優秀な人材を発掘するために世界を混乱に陥れるという行為は流石に行き過ぎやな。とは言え、それはポラリスなりの正義やったワケや」
世界を混乱させる事で現れる優秀な人材を集め、優秀な人材の主導の元世界を管理する。
そうして無理やりにでも世界を一つにし、予言に対抗する事がポラリスが行おうとしていた事だった。
だがその計画はインフェルノカイザーによって淘汰され成就する事はなかった。
「でも・・・私はやっぱり許せないよ・・・。レウィンさんが逃がしてくれなかった今頃私達は・・・。それにレウィンさんはもう・・・」
「せやなフープ。ワイも許す気はあらへん。とは言え、その相手がもうこの世にいない以上はどうする事もできひんやろ」
フープの考えに同調するガースト。
しかしその恨みをぶつける相手であるポラリスは既に亡き者。
アプローチのやりかたは違えどポラリスもレウィンと同じく世界を想って行動を起こしたのだ。
やるせない気持ちもあるが切り替えて前に進むしかない。ガーストはそう考えていた。
「それよりも今大事なんはタケシっちゅー大ドアホや。確認するがコイツはホンマに実在するんか?」
ガーストは一転してダーク・ウルフにタケシの事を訊く。
「ああ。今は雲隠れしているがな。奴は星の核の力で完全復活することを諦めてないはずだ。その為に別の身体を乗っ取ったワケだからな」
ダーク・ウルフは確信を持ってそう答えるとさらに続ける。
「星の核が奴の手に墜ちれば世界がどうなるか見当も付かない。だが逆に、星の核を手に入れるには調和の要の一族が持つ権能が必要なはずだ」
「せやからそれを先回りして阻止するために調和の要の一族についての情報を求めてワイ等を尋ねて来たってワケやな」
ガーストは今、世界で何が起ころうとしているのかを理解した。
同時に、わざわざ入院中の探偵に情報を求めてきたという事はそれだけ情報に困っており、他にできる手立てがないという事も察する。
これは最早、光や闇だけの問題ではなくこの世界に住む人々が直面している危機。
であれば、名探偵を自称するガーストが取る選択肢は一つだ。
「・・・分かった。ワイ等もアンタ等に協力するわ」
「っ!そうか・・・!ありがてぇ!」
その言葉にダーク・ウルフは感謝の言葉を述べる。
膠着状態をようやく打破できる時が来たとテンションも爆上げだ。
「とは言ってもワイも調和の要に関してはそれほど知っとるワケちゃうねん」
「えぇ・・・」
ガーストの言葉に思わず絶句するダーク・ウルフ。
これにはテンションも爆下がりせざるを得ない。
「なんやそれ・・・。無駄足やんけ。使えない探偵やなぁ・・・」
ここまで空気だったエルリークはそう言うとため息を漏らす。
「また振り出しか・・・」
ダーク・ウルフもそう呟くと肩を落とす。
そう、無理もない。ここまで長々と語ってきた事が徒労に終わったのだ。そう、無理もない・・・。
「待て待て!あくまでワイが知らんって言っとるだけや!」
そんなダーク・ウルフとエルリークに対しガーストは慌てて言う。
「は?何言って・・・」
「ええか?よォー聞け。ワイの事務所にレウィンはんが置いていった荷物がまだある筈や。レウィンはんには悪いがそれを確認すれば何かしらの手がかりが得られる筈や!」
ガーストは食い気味に立ち上がるとそう提案する。
だがそれに対しフープが食い下がる。
「ちょっと!ガーストさん!!勝手にレウィンさんの荷物を漁る気ですか!?」
「そうや。レウィンはんなら許してくれるやろ」
「そういう問題じゃなくてコンプライアンスの問題です!たとえレウィンさんが死んじゃったとしても勝手な事しちゃダメでしょ!?」
昨今、コンプライアンスに対する認識は日々強まり、それによるトラブルは後を絶たない。
法律上では個人情報が保護される範囲は「生存する個人」までとされている。
しかしながらフープの言うように勝手に故人の荷物漁る行為はあまり褒められたことではないだろう。
これは中々にセンシティブな問題だぜ・・・。
「フープ。落ち着いて聞け。依頼者にサインしてもらう依頼契約書の第7条は覚えとるか?」
「・・・依頼者が事務所に荷物を預ける際の最長保管期間は1年とし、超過する場合は再度更新手続きを行う。また、期間中依頼者が死亡及び失踪した場合は受託者の判断で処分を行う・・・」
「よぉ覚えとるやん。流石はワイの助手やな。つまり、レウィンはんの荷物の処理についてはワイに決定権があるワケや」
「それは・・・」
フープに対し冷静に諭すガースト。
契約書に記載された内容を出されてはフープも黙らざるを得ない。
「それだけやない。レウィンはんが最後に残した言葉は覚えとるか?」
「・・・」
「”後はよろしくお願いします”や。フープ、レウィンはんの依頼はまだ終わってへん」
「っ!」
ガーストの言葉にハッとするフープ。
そう。ガーストは決してレウィンを蔑ろにした訳ではない。
ガーストが取れる最善の択を選択し、見えざる危機に対抗しようとしているのだ。
「ガーストさん、ごめんなさい。私・・・冷静じゃなかった・・・」
「分かればええねん。また一つ一人前の探偵に近づけたなァフープ!」
ガーストはそう言うと白い歯を見せ笑う。
それを見て安心したフープも照れ臭そうに笑みを浮かべた。
「・・・話は付いたみたいだな?」
ダーク・ウルフは良きタイミングで言う。
ガーストは頷くと口を開いた。
「見苦しい所見せてもうたなぁ。まぁええわ。ほんなら一旦探偵事務所に戻らなアカンのやが・・・」
そこまで言いかけたガーストは少し考えるとフープに目線を向けた。
「・・・フープ!この二人を事務所まで案内したれ」
「えぇ!?ガーストさんは来ないの!?」
唐突な使命に動揺するフープ。
だがガーストは首をかしげる。
「何言うてんねん。ワイ怪我人で入院中やで。お医者さんの指示に従って安静にせなアカンやろ?」
「こんな時ばっかり都合良すぎるよ!」
それは先ほどまで勝手に病室を抜け出してコーヒー飲んでた人間が言うには説得力のない言葉であった。
フープは思わず声を荒げてガーストにツッコミを入れる。
「おいおい・・・大丈夫なんかこの小娘・・・」
「しっかりしてて頼もしいじゃん?フープ!よろしくなァ!?」
不安を感じるエルリークとは裏腹にダーク・ウルフは軽いノリで歓迎する。
そんなダーク・ウルフに対しフープは観念したようにクソデカいため息を付いた。
「もう呼び捨てしてるし・・・分かりましたよ。私が案内します」
「まぁ今日はもう遅いからな。明日朝出発ってコトで!」
そう言うとダーク・ウルフは席を立ち、お開きを促す。
新たなる仲間と情報を得たダーク・ウルフの表情は希望に満ちていた。




