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闇空  作者: 闇の使徒インフェルノカイザー
第零章 ~明かされる真実~
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もしもあの玄関を越えて、外へ抜け出していなければ

食事を済まし、父に挨拶をしたインフェルノカイザーは玄関から出ると、扉の前で一人立ち止まる。

この時、インフェルノカイザーの胸の内には様々な思いが沸き上がっていた。

だがインフェルノカイザーはそれを無言で押し殺す。目を瞑り、深く息を吐く。

偉大なる父親を持つ者として、甘えた行動は許されない。

インフェルノカイザーにはその自覚があった。


「ふう・・・。行くか」


決意を新たにそう呟くと、インフェルノカイザーは歩き始めるのであった。

目的地はヘル・イン・ザ・ダークネスの商業地域である第四区画にある闇ジムだ。


※闇ジムとは・・・!ここ、ヘル・イン・ザ・ダークネスに8ヵ所点在するジムの事だ!

ジムを管理する”闇リーダー”に挑戦し、力を認められる事でその証である「闇Tシャツ(背中に大きく闇と書かれていてジム毎に色が違う)」をゲットできる!

八着集める事で年に一度行われる闇の祭典、「闇リーグ」に参加する資格を与えられ、戦士達は己の限界に挑戦する為、闘いに臨むのだ・・・!

さらに、ジム内には闇のオーラを使った技の練習場を始めとし、シンプルに体を鍛える設備もばっこり完備!

不定期で行われるプロのオーラ使いや傭兵、軍の人間による戦闘講習も人気コンテンツの一つだ!


さらにさらに、実践的な経験を積める模擬戦はもちろん、戦士の誇り、プライド、信念を賭けたガチで戦うランクマッチも日夜開催され、戦士達の戦闘本能を奮い立たせる。

「身体は闘争を求める」古くから伝わる言葉だがこの言葉通り、戦士達の強さへの欲求は天井知らずであり、留まる所を知らない。

人は人と戦うための形をしている。無限の選択と淘汰を繰り返すための形状。それこそが人間の本質であり、戦いこそが人間の可能性なのかもしれない。

飽くなき強さへの憧れと執着、そして渇望こそがヘル・イン・ザ・ダークネスが屈強な戦士達を排出している理由と言っても過言ではない。


「まさかこの日に限って謁見が入るとはなぁ・・・。だが休みの日を返上してまで優先するという事は大事な事なんだろうナー・・・」


インフェルノカイザーはため息と共に独り言を言う。

そう、無理もない。父であるストリームカイザーが丸一日休暇なのは実に約5ヶ月ぶりであった。

普段から帰ってくるのは夜9時過ぎは当たり前であり、帰ってこない日も少なくない。

未成年という事もあり、働いたことが無いインフェルノカイザーだが闇の宮殿に勤める父が普通の家庭の父親とは比べ物にならないほど忙しい職位という事は理解していた。


同時に、働くという事への不安も少なからず感じざるを得ない。

責任、納期、立場、残業、人間関係、職場環境・・・。

就職という名の未来に対する恐れと疑問は尽きない。王宮の仕事内容はなんだろう?父は具体的にどんな役職なのだろうか。てか大魔王って役職なの?

そんな未来への不安を振り払うようにインフェルノカイザーは一息つき歩を進める。やっぱ、労働ってクソだわ。


「あの、すいませ~ん!」


「あ?」


考え事をしながら歩いていたインフェルノカイザーは突如背後から声を掛けられた。

少し驚きつつも振り返ったインフェルノカイザーは声の主を確認する。


「いや~!すんませんねェ!ちょっと聞きたいことがありましてねェ~~!」


(え、なにコイツ・・・)


変なテンションで話しかけてくる男はそう言うと、胡散臭い笑顔のままインフェルノカイザーの下へ近づいてきた。

男の特徴はと言うと、ボウズ頭で糸目。カーキ色のベストにブラウンのパンツ。全体的にアースカラーの衣服を纏っていた。


「・・・何だ?俺に用か?この辺じゃ見かけない顔だが・・・」


「そうですとも!オレっちはついさっきこのヘル・イン・ザ・ダークネスに来たばかりなんすわ!」


「って事は・・・旅の者って事か。で、何を聞きたいんだ?」


インフェルノカイザーはボウズ頭の男に警戒しつつも受け答える。

とは言え、敵意は感じない。そう判断したインフェルノカイザーはそう返した。


「実は闇の宮殿に用事があってはるばるやってきたんですけど~、この街広すぎて道に迷っちゃったんスよね~」


「宮殿に?あそこは旅人が観光感覚で行く場所じゃないぜ?一体何の要件だ?」


闇の宮殿に行きたいという男に対し、インフェルノカイザーは不信感を覚える。

ヘル・イン・ザ・ダークネスの中央に聳え立つ闇の宮殿だが、以前までは一般人も入れる公共の観光スポットであった。

だが、一人の酔っ払いが王宮内の備品を使って下半身の露出を隠すという迷惑行為をした事件があり、それ以降一般への開放が厳しくなった過去を持つ。ちなみにその者は無事死刑となった。

そんな経歴もあり、今ではこの都市で暮らす一般人ですら何か大事な用事がなければ宮殿へ赴く事は無い。

ましてや旅人という部外者となるとなおさらだ。


「ココだけの話なんスけど・・・今日オレっちはとあるお偉いさんに拝謁する予定がありましてねェ・・・」


「お偉いさん・・・?」


この瞬間、勘の良いガキであるインフェルノカイザーの脳裏にはとある人物が過った。


(まさか今日の父上の謁見相手ってのはコイツの事じゃね・・・!?)


そう、インフェルノカイザーの父、ストリームカイザーは今日、息子との約束を差し置いてまで謁見を選んだ。

すなわちそれは死ぬほど大事な要件であるという事はインフェルノカイザーも察することが出来た。

そしてその謁見相手と思われる人物が目の前にいる。こんな所で油を売っている場合ではないぜ・・・!


「分かった。宮殿まで案内してやる。俺の名はインフェルノカイザー。お前は・・・?」


「あ!申し遅れました!オレっちの名前は”タケシ”と言います。イカよろしく~」


タケシ。男はそう名乗った。

インフェルノカイザーはよろしくと頷くとタケシを宮殿に案内し始めた。それが悲劇の始まりとは知らずに・・・。

案内に従い追従するタケシはインフェルノカイザーの後ろでニヤリと白い歯をギラつかせ、不気味なほど静かに笑った。



「しっかしヘル・イン・ザ・ダークネスには初めて来ましたがデッカい街っスねェ~」


道中、タケシはインフェルノカイザー話題を振った。


「そうだな。闇の領域であるヴァリアヘイム大陸の中じゃ一番デカい都市だからな」


「いや~オレっちもいろんな街行った事ありますけんども、ココは広いだけじゃなくて街の造り自体も特殊で迷子になりますわ」


ヘル・イン・ザ・ダークネスと言われるこの都市は大魔界と呼ばれるほどの広さを誇る。

かつてここ一帯には180以上の魔界郡があったとされ、長い戦いの末一つに統一され、今の姿に至るのだ。


「そうなのか。俺はほとんどヘル・イン・ザ・ダークネスがら出たことが無いからその感覚は分かんねぇけど、やっぱこの都市の造りって珍しいんだな」


「珍しいのもさることながら、よくもまぁここまでデカい都市を築き上げたモンですわ。最初どこから入るか分からなかったですしおすし。それに周囲はクソ熱い砂漠ですやん?ここまで来るのに苦労しましたでホンマに・・・」


「この都市の歴史はあんまり詳しくないが、周囲の環境が厳しいって事はそれだけ外部から敵が攻め辛いようになってるって学校で聞いたな。それに・・・」


スッ・・・


インフェルノカイザーは指を指す。


「この都市を囲むように造られてる外壁。あれのおかげで外部の驚異を断絶し、中は区画毎に区切ることで安全と利便性を保ってるんだとさ」


頑丈な外壁はぐるりと一周都市を囲むように建設され、中央に聳え立つ宮殿を始点に放射状に防壁が伸び、計10個の区画に分けられている。

各区画毎に住宅地、商業地、工業地、軍用地等を分けるように配置。

都市内に複数の設備を配置することでインフラを自己完結する巨大城塞都市。それが、ヘル・イン・ザ・ダークネスなのだ。



「で、この先が宮殿だ」


「はぇ~。すっごいおっきい・・・」


会話しながら十数分ほど歩き、タケシと共に闇の宮殿へとやって来たインフェルノカイザー。

二人の眼前には堂々たる迫力の巨大な建造物が有った。

大理石をふんだんに使った豪華な造りは堅牢さと荘厳さを醸し出していた。


「しかし宮殿はヘル・イン・ザ・ダークネスの真ん中に存在するから簡単に辿り着けると思うんだがな・・・」


「いや~オレっち方向音痴でして・・・。それにあの辺入り組んでますやん?」


「まぁ、あの辺は確かに住宅地だから入り組んでると言えばそうだが・・・」


そんな雑談をしながら二人は巨大な入り口に入る。その先にはバカ広いホールが広がる。

バカデカホール内には数人の見張りの衛兵が目を光らせており、心なしか空気もピリついている様子だ。


「ひぇ~・・・。緊張するンゴねぇ~・・・」


「落ち着け。俺はこう見えてこの宮殿には何度も出入りしてるから俺に着いてくれば大丈夫だ」


そんな会話をする二人の前に一人の衛兵が訪ねてきた。


「インフェルノカイザー様・・・?来訪の予定は入っていないようですがどのようなご用件で宮殿へ?そしてその者は・・・?」


「あぁ。コイツは父上と謁見の予約をしているという旅の者だ。街中で宮殿への道を聞かれたからそのまま案内してきたんだ」


衛兵に対しインフェルノカイザーは取り乱す様子もなく冷静に返答した。


「左様でございましたか。失礼いたしました。どうぞお通りください」


「頼もしいねェ~」


我が物顔で歩を進めるインフェルノカイザーにタケシは付いて行く。

大魔王を務めるストリームカイザーの一人息子であり、次期覇王を期待されている身だ。

インフェルノカイザーの宮殿内での知名度は当然のようにあり、何ならすれ違う使用人は会釈するレベルなのだ。


「ほら、この先が謁見の間だ。ここまでくれば大丈夫だろ?」


暫く廊下を歩き、厳かな扉の前に来た所でインフェルノカイザーは足を止めた。

この扉の先に謁見の間が用意されているが関係のないインフェルノカイザーが一緒に室内に入るのは野暮だろう。


「サンキュー!インフェルノカイザーのアニキ!!この運命の出会いに乾杯!!」


「・・・よく分かんねぇけど謁見の際はくれぐれも失礼のないようにな・・・」


インフェルノカイザーはそう伝えると振り向き、タケシの元を後にする。

本音を言えば父に挨拶ぐらいはしたかったのだがそれは公私混同。出過ぎた事だ。


「タケシ・・・掴み所のないヤツだったな・・・。あんなヤツがいったい何を謁見するんだか・・・」


タケシに対する所感をブツブツと喋りながらインフェルノカイザーは王宮の入り口から外へ出る。

その時、対抗方向から歩いてくる白いローブを纏った者とすれ違った。


「っ!?」


白いローブの人物はすれ違った途端、驚いた様子で振り向き、インフェルノカイザーを見つめる。


「あ、あの・・・!」


そしてインフェルノカイザーに対し呼び止めるように声を掛けた。


「あ?何だアンタは・・・?」


反応したインフェルノカイザーは体半分で振り返り、ローブの人物を見据える。

左腰に小奇麗な直剣を携え、頭から純白のローブを被る様に纏うが残念ながら顔は全て見えない。体格的に男だろうか。

整った口元とローブの奥に光る綺麗な蒼色の瞳辛うじて確認できるがそれ以上は謎に包まれていた。


「いえ・・・すみません。何でもありません・・・」


「なんだ・・・?今日は変な奴に絡まれるな・・・」


ローブの男の言葉に何だコイツと言わんばかりに吐き捨てるとインフェルノカイザーは止めていた足を進め、王宮を後にする。

そんなインフェルノカイザーの後ろ姿を見守る様に見つめるローブの男・・・。


「あの方が・・・インフェルノカイザー・・・。私の・・・義兄・・・!」


この二人の運命が交わるのはもう少し後の話・・・。

ローブの男・・・その正体は後に大きく関わる事になるシャイニングカイザーであった。


「まさかこんな所でお目にかかるとは驚きましたね。しかし今接触するのは時期が悪い・・・。今は連邦軍の動向をお伝えせねば・・・」


シャイニングカイザーは純白のローブを深く被り直し振り返ると、『謁見』のため宮殿の中に入っていくのであった。



「はぁ・・・なんか今日はもう疲れたな・・・。気を取り直して闇ジムへ急ぐぜ」


一方のインフェルノカイザーはため息を漏らす。

だが今日はまだ始まったばかりだ。少しばかり予定は狂ったが当初の目的通りインフェルノカイザーはジムへ向かう。


ゴゴゴォォ!!


「っ!?」


その時、地響きと共に轟音が轟いた。

インフェルノカイザーは思わず音の方角を見る。


「なんだ・・・!?」


視線の先には黒煙が上がっているのが見える。

その方向は住宅地が広がる第三区画だ。ただ事ではないだろう。


「嫌な予感がする・・・!」


インフェルノカイザーは考えるより先に駆け出していた。

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