Δフォース
「シャイン、お前は下がって援護だ。カイザーとポラリスのオッサンを守れ」
ダーク・ウルフはシャイニングカイザーに命令するように指示を出す。
だがシャイニングカイザーはその指示には不満がある様子で食い下がる。
「待ってくださいウルフさん!私も戦います!それに・・・ムグッ」
シャイニングカイザーが言い終わる前にダーク・ウルフはその口を手で覆う。
そしてシャイニングカイザーに耳打ちした。
「まぁ待てシャイン、”完全覚醒-パーフェクトバースト-”はあとどのくらいで発動できそうだ?」
「え・・・?」
ダーク・ウルフの行動に動揺したシャイニングカイザーは思わず言葉を失った。
「無理すんじゃねぇよ。まだ本調子じゃねぇんだろ?タケシは底知れない奴だ。だからこそ、お前の”完全覚醒-パーフェクトバースト-”が頼りだ」
ダーク・ウルフは冷静だった。
故にタケシを確実に倒すためにはシャイニングカイザーの”完全覚醒-パーフェクトバースト-”が必要だと考えていた。
先程のアウスとの戦いの中で覚醒したシャイニングカイザーの新たなる力だがその戦闘能力は勝敗を決める程の力を持つ。
さらにタケシにまだシャイニングカイザーが”完全覚醒-パーフェクトバースト-”に覚醒したと割れていなければその優位性は絶対的なものになるだろう。
だが”完全覚醒-パーフェクトバースト-”は発動後に使用者の戦闘力が大きく弱体化してしまうと言う弱点を持つ。
勘の良いガキのダーク・ウルフは今のシャイニングカイザーがまだ本調子ではないという事を見抜いていた。
「まさかウルフさんは私が回復するまでの時間稼ぎを・・・!?」
「まぁそんな所だ。だが勘違いすんじゃねぇぞ?別に負けるつもりなんてねぇからな」
そう言うとダーク・ウルフニヤっと笑う。
「だがよ・・・もしもの事があったら、カイザーの事は頼んだぜ」
「ウルフさん・・・!」
ダーク・ウルフの目は覚悟をキメた男の目だった。
だがそれは諦めたわけではない。それは次に繋ぐための覚悟であった。
「分かりました。集中して回復に専念すればあと十数分ほどあればなんとか・・・」
「ま、その前に俺等で倒しちまうかもしれんがな・・・」
そう言い残すとダーク・ウルフは前へ歩み出る。
そしてその正面には相変わらず不気味な笑みを浮かべる細目のボウズ頭が待ち受ける。
「あ、話終わったん?今日が命日になるだろうけど別れの挨拶はもう大丈夫そ?」
ダーク・ウルフに対ししょうもない煽りをかますタケシ。
だがダーク・ウルフはそれを軽く笑い飛ばした。
「へっ!祝勝会どこでやるか相談してただけだっての!あ、お前の席はねぇからなァ!!」
ゴァッ!
啖呵を切ると同時にダーク・ウルフは闇のオーラを纏い戦闘態勢を整える。
「ウルフ・・・!」
「・・・」
後方でインフェルノカイザーとポラリスは勝負の行方を見守る。
不安と緊張。そして共に戦えない今の自分に対する歯がゆさを胸に奥歯を噛み締める。
「何話してたか知らんが・・・アイツ下げてええんか?ウルフ・・・」
ダーク・ウルフの右隣に並んだエルリークは背負っていた斧を抜刀すると横目でダーク・ウルフに訊く。
「俺に考えがある。それに・・・いつまでもシャインに見せ場取られんのも癪だしな」
エルリークの問いに軽い口調で答えるダーク・ウルフ。
だがそこに慢心や油断は皆無。その身に宿すのは熱き闘志だ。
「アージョ、アンタにも期待してるぜ?これまでみてぇな茶番は無しだ。力を合わせるぞ・・・!」
ダーク・ウルフの言葉を聞いたアージョも静かに闘志を燃やす。
「奴が言っている事の真意は分からんが・・・。倒すべき敵だと言う事は確か。共に壁越えと行こうか・・・」
いつもと違う雰囲気を醸し出すアージョは静かに言う。
その姿は正にサムライ。腰に携える魚刀に手を掛け、その瞬間を待つ。
「アハハッ!君達おもろっ!ほんじゃ、ちょっと遊ぼっかぁ!!!」
そんな状況に対しタケシは笑う。狂気を感じさせるかのように。
この局面において「遊び」という単語を用いるタケシ。
その実力は未だ底が見えない・・・。
「フン!その余裕がいつまで持つかなァ!?ヤミノミクス!!」
ンビャッ!!
ダーク・ウルフの号令と共に戦いの火蓋が落とされた。
放たれた闇のオーラはタケシの足元に広がるとその周辺が闇に飲まれる。
そして次の瞬間、沼のような闇の領域が顕現した。
「うお!?足元がなんか・・・汚ねぇ沼みてぇじゃん!!」
タケシは思わず驚く。
そして自身の動きが阻害されている事に気が付いた。
「ヤミノミクスは経済政策を行使すると同時に闇の沼を展開するワザ!そして沼内の標的に対し大幅な機動性の低下、魔術発動の阻害、闇属性のスリップダメージ、闇属性に対する-20%の耐性デバフを与える!!」
早口でヤミノミクスの効能を語るダーク・ウルフ。
しかし世の中の物価の上昇は止まらず、格差は広がり続け、国民は少ない収入を切り崩し、スパチャを投げる。
そんな現代にて、不況の波に晒されもがき苦しみながらも懸命に生きる若者のダーク・ウルフは攻撃の手を休めない・・・!
「これで終わりじゃねぇぞ!”デルタアタック”だッ!!!」
ドドンッ!




