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自称コンサルタントのギャルが僕を魔王にしようとしてくる  作者: 結生
第二章 枯れた花は夢を見る

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増税!増税!増税!

 ――白撫の工場内。


 キンッ! キンッ!


 アカリのナイフとワイズの骨がぶつかり合い、甲高い音が響く。



「……この」


「…………」



 2人は高速で移動しながら斬り合っており、その姿をゼラは捉えきれていなかった。



「なんて速度じゃ。スピードだけなら、リリアナを超えておるのう」


「うちの助手と正面から斬り合える人間がいるとはな」



 白撫とヴィザは2人の戦いを目で追えていた。



「圧倒的じゃな」


「し、白撫ちゃん……見えるの?」


「鑑定眼のおかげで他の人よりちょいとだけ眼がいいんじゃ」


「ど、どういう状況……?」


「誰かは知らぬが、あのメカクレ女子が優勢じゃのう。力の差があり過ぎる」



 キンッ! ピシッ……。


 ナイフと骨がぶつかる甲高い音の直後、何かがひび割れる音が響く。



「っ!」



 その音に反応したワイズはヴィザのすぐ傍まで下がる。



「スケルトンの骨にひびが……?」



 左腕の手首の関節部分に少しだけ亀裂が入り、そして割れた。

 スケルトンは全身の骨が剥き出しであり、皮膚や筋肉で守られていない為、通常の生物より強固に出来ている。

 個体差はあるが、一般的にはダイヤモンドより硬いとされている。

 そんなスケルトンの骨がたった一本のナイフによってひびが入り、砕けたのだ。



「先輩、これ、どういうこと?」



 ワイズは手首から先がなくなった左腕をヴィザに見せる。



「へき開だな」


「なに、それ?」


「鉱物などが持つ特定の方向に割れやすい性質のことだ。ダイヤモンドにもこのへき開があり、これを利用して割ったりしている」


「いや、私の骨、鉱物じゃないんだけど」


「スケルトンの骨は特殊だ。今戦っていた時のようにその形を変え、刃物のようにしていただろう? その変化した骨にへき開が出来ていたということだろう」


「それって、見て分かるのもなの?」


「普通の人間には無理だな。出来るとしたら、鑑定眼を持つ彼女くらいだろう」



 そう言って、ヴィザは白撫の方を指す。



「じゃあ、あの子も持ってるって、こと?」


「目が前髪で隠れているから、判断しづらいが、持ってないだろうな」


「根拠は?」


「君の弱点を探るように斬り合っていたように見えたからな。最初からへき開の場所が分かっているのなら、君のその手は最初の一撃でなくなっているはずだ」


「はぁ、化学兵器とかならまだ納得いったんだけど」



 ワイズは左手を修復しながらため息をつく。





「魔法も使わずこの強さって、人間のレベル超えてるよ」





 そう、アカリはこれまで魔法を一切使っておらず、特殊な種族でもない、ただの人間だ。

 骨だけで体重が軽いスケルトンは他の種族と比べてスピードの基礎パラメータが高い。

 にもかかわらず、アカリはただの身体能力だけで渡り合い、いや、さらにその先、追い詰めていた。



「先輩、手伝って。私一人じゃ、あの子には勝てない」


「まったく手のかかる助手だ。本来、私を助けるのが助手の役目だというのに」



 ヴィザはやれやれと肩をすくめながら、眼鏡をくいっと上げる。



「空間魔法、“この世全ては俺のもの(ディストピア)”」



 ヴィザを中心に半球状の薄い膜が周囲に広がっていき、ゼラや白撫、アカリも巻き込んで工場全体を包み込む。



「え、な、なに……?」


「特に違和感はないのう?」


「…………」



 薄い膜に覆われた彼女たちに変化はなかった。

 それは術者であるヴィザも同じ。



「…………」



 アカリはヴィザの発動した魔法に興味を示さず、いつものように高速移動しつつ斬りかかる。

 だが……。



「残念、その速度は課税対象だ」



 距離を詰めようと動いたアカリの速度が急に落ちて、ゼラにでも見えるほどゆっくりな動きに変わっていた。

 いや、スロー再生とでも言うべきか。脳の反応に体がついていかないといった感じの様子だ。



「私の空間内では全ての行動に税が課せられる。速度であれば、その速度を徴収し我が物とすることが出来る」



 ヴィザへと斬りかかるモーションに入ってしまったアカリはそのモーションが終わるまでの間はゆっくりと体が前へと進んでいく。

 動きも反応も遅くなっている彼女にはヴィザの言った言葉に応える余裕もない。



「そして、これが君から徴収した、速度だ」



 ヴィザは一瞬にしてアカリとの距離を詰め、拳を叩き込む。



「“増税パンチ”!!!」



 速度を奪われたアカリは避けることが出来ず、後ろにあったガラクタの山まで吹き飛ばされた。



「見たか。これが頭脳派の戦い方だ」






「あ、レンから連絡来てた……。さ、さっきの子、味方だって……。ど、どうしよう、や、やられちゃったよ……?」


「いや、恐らくまだ平気じゃ」



 ガシャン!!!


 スクラップの山を蹴飛ばし、中からアカリがゆっくりと立ち上がりながら出てくる。

 しかし、ヴィザから殴られたダメージとスクラップの中に突っ込んだ時に体中の皮膚に出来た切り傷により、全身血塗れだった。



「…………?」



 そんなアカリは首を傾げながら口をもぐもぐとさせていた。



「……っぺ」



 そして、口から折れた歯を吐き出した。



「ひっ! あ、あれ、ホントに、へ、平気なの……?」


「……ちと、まずいかもしれんのう」



 状況の悪さに白撫は冷や汗をかく。



「……な、ない?」



 武器のナイフをなくしたことに気づいたアカリは腰に差していた予備のナイフを取り出す。



「ここ」


「!」



 アカリの背後をついてワイズは鋭利に尖らせた右足を蹴り上げる。

 それに反応したアカリは左手のハンドガンで対応しようとするが……。



「おっと、それも課税対象だ」



 ハンドガンに入っていた弾薬を税としてヴィザに徴収され、弾切れとなってしまった。



「…………ぁッ!!!」



 対応手段を奪われたアカリはそのままワイズの右足の斬撃をもろに食らう。



 ザシュッ!



「……う、そ………!?」


「ぅ……!」



 左の脇腹から右肩にかけて、大きな傷跡と共に血しぶきが飛び散る。


 その光景を見て、ゼラは口を抑えながら目を見開き、白撫は眉をひそめた。



「……う……ま、まだ……です」



 アカリはふらつきながらも、まだ倒れずにナイフを構えていた。



「なんなの、この子……!」



 どう見ても劣勢なのはアカリの方なのだが、ワイズの表情は険しかった。



「なるほど、彼女はここで確実に始末しておく必要があるな」



 アカリは手に持っているナイフをヴィザに投げつける。



「魔法を使うまでもない」



 それをヴィザは人差し指と中指の間で取る。



「ぜ、税金は悪……って会長が言ってました……なので、こ、殺します!」



 ギターケースからショットガンを取り出したアカリはヴィザとワイズに向けて乱射する。


 ドスンッ! ドスンッ! ドスンッ!



「っち……増税だ!」



 ヴィザはショットガンを躱しながら、アカリにさらなる税を課す。


 カチッ、カチッ、カチッ。



「た、弾切れ……?」



 アカリがリロードしようとしたら、予備の弾薬がなくなっていた。



「これか?」



 そして、それは既にヴィザの手にあった。



「“骨形拡張オステオディスプラージェ”」



 ワイズの右腕の骨が肥大化し、無数に枝分かれする。

 攻撃範囲が拡張された右腕を振り、アカリに攻撃を仕掛ける。



「っ!」



 スピードを奪われ、回避不可能と判断したアカリは手に持っていたショットガンを盾代わりにして防ぐ。


 ガシャン!


 しかし、ワイズの攻撃に耐えられなかったショットガンは粉々に砕け散る。



「……今のは?」



 今の一連の攻防で白撫が何かに気づいた。



「メカクレ女子! 左肩じゃ!」


「っち、鑑定眼で見抜いたか」



 白撫の叫び声を聞いた、アカリは左袖を破り捨てる。

 すると、その左肩には羊模様の痣があった。



「え、な、なにあれ……?」


「恐らくあれが納税者の証じゃ。一定範囲内の空間にいる者すべてに魔法の効力を強制することなどあり得ぬ。それにわしらや骨娘はこの魔法の影響を受けておらんかった。なら、何か魔法の対象者を決めていると思っての。さっき課税する瞬間、よく見ておったら、メカクレ女子の左肩に魔法の反応があり、もしやと思ったら、案の定じゃった」


「で、でも、い、いつの間に、あ、あんなのを?」


「骨娘じゃろ。最初の斬り合いの時に、マーキングしたんじゃろう」



 白撫の解説を黙って聞いていたヴィザだったが、特に焦った様子は見られなかった。



「大丈夫なんですか、先輩?」


「問題ない。分かったところであのマーキングは外せない。痣ごと皮膚を剥がせば解けるがそんなことをするバカは……」



 と、ヴィザがそこまで言いかけた瞬間、足元にあったガラスの破片を拾い、アカリは左肩の痣を肉ごと抉り取った。



「こ、これで、も、もう税金をは、払わなくていいんです、ね?」




「……は?」


「……え?」



 躊躇いもなく自分の体を傷つけたアカリの行動にこの場の全員があっけにとられていた。



「し、死んでください……」



 その隙をついて、速度制限が解けたアカリはワイズの背後を取り、目に見えぬ連撃で全ての骨の関節を切断しバラバラにする。



「なっ、この女!」



 相方が一瞬でやられたのを見て、ヴィザは咄嗟に距離を取ろうとしたが。



「に、逃がしません」



 アカリの速度からは逃れられない。



「……クソ、が!」



 血が流れるほど強く握りしめられたガラスの破片。

 アカリはそれを容赦なく振り回し、ヴィザの全身を切り裂く。



「……ぐはっ」



 全身から血を吹き出したヴィザはそのまま倒れ伏す。



「…………う、か、会長……」



 その直後、限界が来たアカリもその場に倒れる。


「…………え、えっと……か、勝ったの?」


「そのようじゃな」


「あ、で、でもまだ工場の外にいっぱいいたような……?」


「それなら問題あるまい。ここへ来る前にあのメカクレ女子が全員倒しておるようじゃからな」


「じゃ、じゃあ……!」


「それよりもメカクレ女子じゃ。あの傷じゃほっておいたら死んでしまう。手当をせねば」


「そ、そうだね……で、でも誰が?」


「お主は出来んのか?」


「む、むむむむむむむむむむむむむむムリ!!!」


「それは困ったのう。わしも直せるのは機械だけじゃ。生物は専門外じゃから」




「…………え?」







――工場内の戦闘。


 ――勝者、久我(こが)アカリ。


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