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自称コンサルタントのギャルが僕を魔王にしようとしてくる  作者: 結生


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唯野茉奈花の平凡な日常

 私、唯野茉奈花はごく普通の中学生だ。

 両親は出張が多くほとんど家にいることはない。

 だからここ数年は兄と二人だけで暮らしていた。

 両親が友人から結婚祝いで貰った家はシェアハウスを想定として作られているため、二人で使うには広すぎて、寂しい。

 けれど、ここ最近はとても賑やかだ。

 あのコンサルタントがうちに来てから、大きく変わった。




「うわー、流石ですね。梗夜さん」


「これぐらい朝飯前です!」



 普段なら私が食事の用意をしていたけれど、ここ最近は梗夜さんに頼りっきりだ。

 私なんかよりも料理のスキルが高く、ほかのみんなも梗夜さんの料理を楽しみにしている。

 今日の朝食も見たこともない料理を手際よく作っていく。

 毎日、梗夜さんに教えてもらっているが、この人にはいつになっても追いつけないだろう。





「それは何を書いているんですか?」


「これはパターンですわ。服の設計図みたいなものですわ」


「え、メイさんは一から服を作れるんですか?」


「メイドとしては当然の嗜みですわ」



 メイさんはメイドらしく、掃除洗濯が得意でこの広い家を毎日手入れしてくれている。

 それだけではなく、裁縫も得意でお店で売っているのものと遜色ない。

 そして何より美人さんで、憧れの大人な女性だ。





「白撫さん? ご飯をお持ちしました」


「ちょっと待ってほしいのじゃ」


「ダメです。それで昨日も空腹で倒れたじゃないですか」


「じゃあ、食べさせてほしいのじゃ」


「では、口を開けてください」



 白撫さんは天才発明家でいつも部屋で何かしらの工作にふけっている。

 それでたまに部屋を爆発させてしまうのが玉に瑕。

 いつも変わった格好をしている女の子で、見た目は私よりも年下に見える。

 そのせいか手のかかる妹のように見えてしまうことがある。





「妹ちゃんさ、ちょっといいかい? 二丁目の多恵さんが最近元気ないみたいだけど心当たりある?」


「それでしたら、お孫さんが部活で忙しくて最近会えないと嘆いていましたよ?」


「そっか~。なんとか元気づけてあげたいけど、いい案ない?」


「では、こちらの芋羊羹を」


「お、ありがとー」



 燕時さんは元勇者軍のお偉いさんみたいで、隠居して日本にやって来たという。

 やはり勇者軍の人だけあって、困っている人を放っておけないみたい。

 けど、いつも近所のおば様がたの話題しか上がってこないのは何か理由があるのだろうか?





 そして、つい先日新たにうちにやって来た魔族の少女。

 私はまだ顔を見たことがなく、いつも部屋にこもっている。

 聞くところによると、昔からお兄さまと一緒にゲームをしているゼラさんのようだ。

 お兄さまがお世話になっているみたいだから、一言挨拶をしようと思っていたが、お兄さまに止められてしまった。

 なんでも、初対面の人と会話するのが苦手だという。





「お兄さまも最近変わられたみたいで、茉奈花はうれしいです」


「変わった? そんなことないと思うけど」


「何を言っているんですか。今までだったら外に出ることすらなかったのにここ最近は毎日外に出てるじゃないですか」


「いや、あれはプリムラが……」


「やはり、プリムラさんのおかげなのですね。お友達もこんなにたくさんできて……」


「いや、そんな泣かなくても。てか、友達ではないけれど」


「お兄さまは友達のハードルが高すぎると思います。いいんですよ、友達とはもっと気楽なものなのですから」


「なんで妹に諭されなくちゃいけないんだ?」


「それに、いいですよね。最近の日常は」


「え、どこが?」



 素っ気なさそうに返事をするお兄さまだけど、私は分かっている。

 お兄さまもこの日常がそんなに悪くはないと思っていることを。

 本当に嫌がっていたら、喋りさえしない。



「そろそろ、買い出しに行かないとですね。お兄さまは何が食べたいですか?」


「梗夜君のお任せで」


「そればかりですね。私の手料理は不満ですか?」


「違うって。梗夜君の料理がおいしすぎるのが悪い」


「分かりました。では、梗夜さんと買い物に行ってきますね」


「いってら~」





「なんで俺がこのクソババアと一緒に買い出しに行かなきゃならないんだ」


「なんですの? 嫌ならついてこなくって結構ですわ。わたくしたちだけで問題ありませんもの」


「お二人とも喧嘩しないでください」



 梗夜さんとメイさんを連れて買い物に出た帰り道。二人はいつものように口喧嘩を始めた。



「料理スキルポンコツのてめぇに任せられっかよ」


「心外ですわね。毎回メモ通りのものを買っているではありませんか」


「んな訳ねぇから、俺が来てんだろうが! 大体なんで買ってくるもんが全部業務用なんだよ!」


「お姉さまがいるんですのよ? そのくらい買っておかなければ、お姉さまのお腹は膨れませんわよ」


「いや、食材はいいんだ。問題は調味料だ。あれ、業務用で買ってこられても使い切れんぇんだよ! 17kgのコチュジャンとかどうすんだ!」


「あなたが味噌欲しいって言ったのではなくて?」


「味噌頼んで、コチュジャン買ってくる奴は日本にいねぇよ。ふざけんな」


「毎朝、味噌汁作ってますわよね」


「味噌汁にコチュジャンはマニアックすぎるんだよ。だいたい、味噌汁は具や出汁によって使う味噌の種類分けんだよ。1種類を大量に買い込むな。小分けで多種買え」


「文句が多いですわね。それなら自分で買いに行ってくださいまし」


「だから、来てんだよ!」



 喧嘩するほどなんとやら。

 でも確かに今回ばかりは梗夜さんの方に分がある。

 さっきも25kgの塩を買おうとしていた。

 塩に賞味期限はないし、プリムラさんの食事量を考えればそのくらい買ってもいいかもしれないが、徒歩で持ち換えるにはあまりに重すぎる。

 なので、5kgのもので妥協してもらった。



「ところで、今晩は何を作るんですか?」


「ああ、それは……」


「あ、ごめんなさい。ちょっと待ってください」



 梗夜さんの言葉を遮り、前に立つ少女の元へと駆け寄った。



「ぐすっ……」



 私よりも一回り小さい女の子が一人泣いて立ちすくんでいた。

 心配になった私はその少女に声をかける。



「大丈夫? 迷子になっちゃった?」


「……うん」



 少女は小さく首を縦に振る。



「そっか、じゃあ……え?」


「ん」



 少女が黙ってクマの人形を押し付けてきた。

 思わずそれを受け取る。



「ありがとう。この子はお友達? ……あれ?」



 人形から少女の方へ視線を上げようとしたが、さっきまでいた少女の姿が消えていた。

 それと同時に。



「危ない!」



 後ろから梗夜さんの声が響く。

 その瞬間、人形から閃光、その直後に爆音が耳をつんざく。

 何が起きたか分からなかった。

 私はそれが何だったのか知ることが出来ないまま、意識を手放した。


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