自称妹のメイドのメイさん
「昨夜ぶりですわね。唯野憐太郎?」
「な! なんであなたがここに!?」
「探し人がいるとお話ししましたわよね?」
「いや、だって、それは……」
そんなはずはないと、僕は彼女の向かいに座って白米を口にかき込んでいる女に視線を向ける。
「んぐ、もう会ってたんだね。じゃあ、話は速いっしょ」
「ウソだぁああ!! プリムラ!? 探し人が? 昨日言っていた特徴と全く違うじゃん!」
「全然……? 何を言っていますの? どこからどう見ても完全一致じゃないですの」
「見た目はね! 中身は完全不一致だよ! 優しくて人を思いやれる人ではない!」
「これだから人間は。お姉さまの良さが分からないのですわ」
「お姉さま……?」
「ええ、そうよ。わたくしはプリムラお姉さまの妹のメイですわ!」
姉の妹のメイって頭がこんがらがりそう。
「って、妹! どう見ても年上にしか見えないんですけど。身長だったり、大人な雰囲気というか色気みたいなのが、完全に大人な女性って感じなんだけど。年下だったの!?」
「うんん、メイちゃんの方が年上であってるよ」
「ふえ? 年上の妹……? どういうこと? 複雑なご家庭?」
「わたくしの通っている魔女の学校、【黒薔薇の園】では年齢にかかわらず、実力が上のものを姉と呼ぶ習慣があるのですわ」
お嬢様学校でそう言うのがあるって言うのは聞いたことあるな。漫画で。
その実力主義版って感じか。
じゃあ、やっぱプリムラはすごい魔女なんだろうな。
「って、やっぱりプリムラは学生だったのかよ。コンサルタントってのは噓じゃん」
「それはちがくてぇ、あーしは魔女の学校には通ってないよ?」
「?」
じゃあますますお姉さま呼びは意味わかんないじゃん。
「…………」
それはそれとして、さっきから気になってたんだけど、
なんで梗夜君が倒れているの?
気を失ってるわけじゃないよね。大丈夫だよね。
あの人、初対面でも容赦なく喧嘩売ってくところあるから、嫌な予感しかしないんだけど。
「気になりますの? そこに転がっている無礼者のことが」
「いや……その……」
メイさんに梗夜君の方をチラチラ見ていたのがバレていた。
聞いていいのかな。大丈夫かな。こっちに飛び火してこないよね。
「お聞きして問題ないのであれば……」
「別にいいですわよ。あなたが帰ってくる数分前の出来事ですわ」
「プリムラの妹? じゃあ、俺より年下か?」
「いいえ、あなたより年上ですわ。なので、敬いなさい」
「は? てめぇ、いくつだよ」
「29歳16か月ですわ」
「ババァじゃん! 素直に30って言えや!」
「と言うことですわ」
ごめん、なにが?
と言うわけですわ、で片付けられたんだけど。梗夜君が倒れるまでは語ってくれてないんだけど、なにしたの?
年齢についてツッコまれてキレたんだろうなってのは分かるんだけどさ。
僕も下手なこと言わないようにしなきゃ。
年齢誤魔化そうとしてたのツッコみそうになったけど。
この件に関してはこれ以上深入りしないでおこう。
「それで、メイさんはどうしてここに?」
「決まってますわ。お姉さまを連れ戻しに来たのですわ。あなたごときの教育係にお姉さまだなんて不釣り合いですもの」
「そうなんですか! それじゃあ、今すぐ荷造りの手伝いしてきます!」
「はい、ストップ」
「ぐえ!」
プリムラに後ろから思いっきりシャツの襟を引っ張られた。
「レンタロー、メイがあーしを連れ戻すと聞いて、喜んだっしょ。もう魔王になる為の勉強をする必要がないってさ」
「いや、全然」
「じゃあ、その目のキラキラなーに?」
「これはあれだって! あの、ほら、その、目にゴミが入っちゃって涙が……」
「そっか、じゃそのゴミを取ってあげるね。お目目ごと」
「ウソですごめんなさい。これからも教育係よろしくお願いします」
プリムラこわいプリムラこわいプリムラこわい。
「わたくしはあなたを魔王候補とは認めませんわ。ですが、お姉さまがあなたを魔王にしようとしていることも確かですわ。ですから、わたくし直々にあなたを査定してあげますわ」
またも面倒なのが増えてしまった。
しかし、これは僕にとって好機かもしれない。
メイさんに僕が無能であることを知らしめれば、プリムラを連れ帰ってくれるってことだ。
よし、頑張って無能なふりをするぞ!




