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第46話 スカウト⑤ 七瀬の能力

澪は顔を赤くし、両掌りょうてのひらを自分の頬に当て、


「……はい、お受け致します。

…人生で一度は好きな人に言われてみたい言葉ね…。」


と言いながらポーッとしているが、今度は床面から、恐らく七瀬のものと思われる右手首が出て来て、俺に手を振っている。


俺の正面には澪が居て、俺の右斜め前の床面には七瀬の顔半分と右手首が生えている。

とてもシュールな光景だ。


俺は一応右手を挙げて七瀬に応える。


『……まさか……見えてる?』


俺は頷く。


『エッ、ウソ、聴こえてるの?』


俺は再度頷く。


「凪君、急にどうしたの?

頷いたり手を挙げたり…

何か見えちゃいけないモノでも見えているの?」


「あぁ、澪には見えないモノが見えているよ。」


現実に戻って来た澪の質問に俺が答えると、澪は驚いた顔をして周囲を見回している。


俺と澪の遣り取りが七瀬にも聞こえたのか、今度は両手が床面から出て来て七瀬の頭を抱え、恥ずかしいのか身悶えしながら、全身が俺に見える様にズボッ!と屋上に姿を現した。


『ああーッ!!マジか、凪きゅんには見えてるし、聴こえてるんだ…!!』


と頭を抱えながら左右に振っている。


……成る程、これが七瀬の能力か。

本人に能力を聞かなくても、これで理解出来た。


七瀬の能力は、アストラル・コントロール(幽体離脱)だ。


俺はクレアボヤンス(霊視)やクレアオーディエンス(霊聴)が使えるから、霊の姿形が見え、声も聴く事が出来るが、澪には七瀬が見聴き出来ない。


七瀬は俺達が幽体を見る事が出来るとは思っていなかったから、幽体離脱してコッソリ俺達の様子を見に来たのだろう。


「七瀬、今の話をどこまで聴いていたかは判らないが、七瀬にも話があるので、屋上に実体で来てくれないか。」


俺がそう言うと、七瀬の幽体は頷いて、


『…ちょっと待っててね、そんなに掛からないから…。』


と、床下に消え去った。


澪は驚いた顔のまま、


「……と言う事は、見えちゃいけないモノ…幽霊の正体は、七瀬さん!?」


「そうだ、七瀬が来たら改めて話をするよ。」


「え…っと…超能力が使えるのって、凪君と私だけじゃ無かったって事でいいのかしら…

ひょっとして七瀬さん以外にも、もっとスカウトされてたりするの?」


「イヤ、俺と澪と七瀬だけらしい。」


「そ…そう……

そうなのね…七瀬さんもなのね……。」


何故か急に澪の元気が無くなった様に見えるのは俺の気のせいだろう。





アストラル・コントロール(幽体離脱)

幽体離脱をし、また幽体を自在に操る能力。他人を幽体離脱させられる場合もある。



クレアボヤンス

霊的な存在を見たり、人や物の情報を直感的なビジョンとして読みとったり、別次元から与えられる情報を得たりする能力の総称。霊視や透視などもこれに含まれる。



クレアオーディエンス(霊聴)

通常の聴覚では聞くことのできない、霊的な世界の音を聞く能力。


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