第40話 遠出⑦
あれから俺達は皇居周辺から少し離れようということになり、歩いて迎賓館を見に行った後で食事をしたり、有名なたい焼き屋に並んで天然のたい焼きを食べたり、新宿まで足を延ばして澪のウィンドウショッピングに付き合ったりと、まるで変質者が居なかったの如くデートを満喫して過ごした。
前にも言ったが、もし変質者が単独では無く仲間が居て、その中にチート級の能力者が居るとしたら逃げても無駄だしな、成る様に成れだと思う事にした。
しかしそれにしても、やはり繁華街はスゴいな、人ごみが……。
人に酔いそうだ、俺にはキツイ。
特に新宿の駅の中なんて、人が多過ぎて本当に恐ろしい…。
そしてこの状況で何も不幸が起きないのが不思議で仕方がない、何か起きるのが俺の中では普通だったのだから。
なので本当の本当に澪様々だ、今後はグダグダ考えずに澪の好意に甘えさせてもらって一緒に外出してもらおう。
俺達は朝と同じ様に電車で無事に最寄駅に着き、澪を家まで送った。
「今日はありがとう、変質者の件は残念だったけど、それ以外は本当に楽しかったわ。
今後も又何処かデートに誘ってくれるのよね?」
澪は俺と腕を組んでいたが、俺の前に回り込み、上目遣いで俺の目を見つめて来た。
「あぁ、澪さえ良ければ又一緒にデートして欲しい。」
俺が目を見つめ返しながらそう言うと、澪は照れた様子で俯いた。
「次に行きたいところとか考えておいてね、2人で決めましょう。
あぁ、後そのカチューシャは貴方が持っていて。
…いい?私と2人で居る時だけそのカチューシャは着けるのよ、学校とか、他の女の子とかが居る所では絶対に着けては駄目よ。」
と澪が念を押して来たので、
「あっ…あぁ…
よく解らないが、解った。」
と、2度もよく解らない約束をさせられながら、澪と別れた。
土日は学校が休みのため、食事は自分で用意する、と澪と約束してある。
食事を作ってもらうためだけに毎回来てもらうのも悪いし、澪に教わった料理を土日に自分で作って試したりしたいしな。
だが今日はもう色々と疲れたので、コンビニに寄って夕飯を買って自宅に帰った。
玄関の扉を開けると、目の前でネッコが薄目を開け、シラーッという冷ややかな目線で俺を見ていた。
『…アニチ…いいご身分ですニャ…
もう夜なのに、アチシのご飯が無いのはどういう事ですかニャ…?』
「あー、スマンスマン、腹減ったか?
俺もこれからなんだ、一緒に食べよう。」
『…今度から帰りが遅い時があるなら、自動ナンチャラを買ってカリカリを出す様にしてニャ。』
「あー、自動給餌器な、今度買っておくよ。
でもオマエ、カリカリ好きじゃ無いだろ?」
『空腹よりはマシニャ!猫缶用意出来ないなら、カリカリを出すニャ!』
「悪かった、今日は猫缶の後にオマエの好きなちゅるちゅるも出すから許してくれ。」
俺がネッコのアゴの下をコリコリと指で撫でると、ネッコは俺の方へアゴを突き出し喉からゴロゴロ音を出した。
『…フン、そんな事でダマされないのニャ!』
「オマエ…ゴロゴロ言っとるがな…
本当は嬉しいんだろ?ん?」
アゴの下以外に頭も撫でると、
『ヤッ…止めるニャ…うーん、ゴロゴロ…』
「心の中までゴロゴロ言うとるやん」
と俺は苦笑しながらネッコにツッコミをかますのであった。
あれから1週間、何事も無く次の土曜日が来た。
澪の手前、変質者変質者言っていたが、あの能力者、もしくはあの能力者達は俺の事を見つけられないのだろうか、それとも様子を伺っているのか…
成る様に成れなんて言っていても、やはり気になるものは気になる。
だが俺のチカラには何か仕掛けて来る気配が感じられない。
リモートビューイングにも不審者は映らないし、クレアセンティエンスの反応も無い、だからと言って予知までは使いたく無い。
なので何とも判断出来ないが、このままこの件については放置してもいいのではないかと考えている。
世の中には俺の他にチカラを使える人間が居るのだと確認が出来ただけでも良しとしよう、今後は遠くへの外出時には、よくよく注意しないといけないと思い知った。
リモートビューイング(遠隔透視)
透視の亜種というか上位互換。その場にいなくても、遠くの物や景色を見る事ができる。千里眼とも呼ばれる。
クレアセンティエンス(霊的知覚)
突然、前触れなく全身に何かを感じ取る能力。危険が迫る時などに、その警告として表れることが多い。胸騒ぎもこの一種だとされている。
プレコグニション(予知)
未来を見る事が出来る能力。




